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【本紹介/易しい政治モノの代表作】『カエルの楽園』


百田尚樹さんの『カエルの楽園』(新潮社)

本日はこちらについて徒然なるままに。


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◾️手に取った経緯


いつも口数が少ない父に、いつものように「本屋さんに行ってくる」と言ったときのこと。

「いってらっしゃい。カエルの楽園ての、よかったよ」

突然この本のタイトルを出してきました。

普段は人にものをすすめたりしない父が、自発的にすすめてきた本ということで気になり、立ち読みすることに。

百田さんの苗字を「ももた」と読んでおり探してしまった私は中々見つけられず、平置きされた『“2020版”カエルの楽園』なる方を先に発見。

著者プロフィールを確認し、自分の読み間違いにやっと気づき、本書にたどり着きました。恥ずかしい。。


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◾️こんな方におすすめ


⇒そもそも今の政治に関心があまり無い、政治の話は難しくて読めやしないという方へ

⇒最低限の教養として歴史を学ぶ必要性は感じているが、どうも腰が重い方へ


【日米同盟、中国領土拡大、憲法改正...】

私が学生時代、テスト前に死物狂いになって詰め込んだはずの歴史教科で出てきた記憶の一片です。

それなのに今では「日本史の教科書にこんなの載ってたなぁ」という程度。

悲しいかな、大まかな輪郭しか海馬にない状態です。

私は大学受験で日本史選択だったにも関わらず、ぼんやりとしか思い出せず、おまけに現代政治にも疎いという有様です。


「自分はきちんと覚えてるぞ、今の日本政治にも明るいぞ」

という方、どうかそのままでいてください。


「正直共感できるところもあるかも」

という方、かなり楽しく読めます。おすすめします。


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◾️おすすめポイント《政治モノなのに読みやすい》


本書は、日本史におけるターニングポイントを、カエルの世界に投影し、平易かつ多角的に紐解いた寓話です。

教科書に事実ばかりを詰め込み羅列されても、なんだか仰々しいし、重々しくって読みきれないものですよね。

史実を身近で少し滑稽な生き物の世界に置き換えるだけで、こうも読みやすくなるのかと驚きました。


著者百田さんならではのブラックユーモアは顕在ですが、彼の作品の中で断トツで読みやすいです。

読みやすい中にも、

平和に慣れきり、自国についての思考を諦めた国の行く末とも取れる、強いメッセージが見て取れます。

読後には、

政治に毛頭興味がなかった自分でさえも、各政党の主張が一丁前に気にはなるようになりました。


史実1つ1つを詳細に解説してくれる本が良ければ

『読むだけですっきりわかる日本史』著:後藤武士

の方が向いているかなとは思います。


ただ、

・日本の政治にまずは興味を持ちたい

・日本がどんな経緯で今の政治に行き着いたか気になる

こんな方に必ず一度は読んでほしい一冊です。


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◾️より楽しく読むためのポイント


「何が何の比喩として書かれているか」想像する

ex)これは〇〇国のことかな、この名前は△△をもじっているのかな

節々に百田さんの遊び心が表れていることに、一度では気づききれず、私は2回読んでしまいました。

この探りながら読む感じが、本書の醍醐味の1つなのではと思います。


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本書をこれから読む予定のある方は、ご注意くださいませ。これ以降ネタバレ含みます。

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◾️概要


日米同盟・中国領土拡大・憲法改正等、日本史におけるターニングポイントを、カエルの世界に投影し、ユーモア溢れる比喩を散りばめ、易しく著した寓話。


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◾️比喩対象考察


・ナパージュ=日本(Japanの逆さ、napaJの読み)

・アマガエル=難民的な存在

・スチームボード=アメリカ

・ウシガエル=中国

・ヌマガエル=北朝鮮

・ハンニバル三兄弟=自衛隊

・デイブレイク=朝日新聞(デイブレイク→夜明け→朝日)

・三戒=日本国憲法9条の二項(戦争放棄と、戦力不保持・交戦権否認)

・謝りの歌=戦後GHQが植え付けた日本人の自虐思想

・ガルディアン=9条を擁護する政治家。(「9本の皺」という描写が示唆)


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◾️感想


読んでいる最中は、

「明らかに気持ち悪い主張がまかり通っているし、馬鹿馬鹿しい世界だな」

と引きで斜に構える余裕があります。


ただ読み進めるうちに、

比喩モトである日本政治に対しては、そこまでの違和感を持てていない自分に気づき、

この本の主役の名前が腑に落ちます。



「ソクラテス」


「無知の知」の重要性を説いた哲学者です。


ソクラテスが主人公である意味に気づいた時、

「お前(私をはじめとした読者)は、日本政治について無知であることを、知らないだろう、知るべきだ」

とでも真っ向から言われた気分でした。


※「井の中の蛙大海を知らず」と言う諺もあるように、自分の知る世界が全てだと思っている存在の象徴=「カエル」の世界を舞台にしているのかな?と思ったり。


この本の意図するところはきっと、

「誰の言い分が正しいか、どう振る舞うのが正解か」の布教ではないと思います。

あくまで「読者の蒙を啓くこと」だと思います。


《蒙を啓く=無知を知る》

その上で自分の頭で考え、意見し、発起する力を、

身につける重要性を投げかけているのだと感じました。


「哲学ってそりゃ面白いけど、現実で生きる場面なんて病んだ時だけで、実際は非実用的なんじゃないかな」

そう思っていた自分に、ブーメランが刺さりました。


無知って怖い。

だけどそれと同時に、

「知ることの価値」を感じた一冊でした。

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◾️あとがき


忘れっぽい性分なので、鉄は熱いうちに打ちたくて、こんな時間まで湯船で書いてしまいました。


読んでいただいた方、ありがとうございます。

本書を立ち読みし、勢いで『カエルの楽園 2020』を買ってしまったので、そちらについても書きたいと思います。

良ければまた。

それではこのへんでおいとまします。

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