ワールドカップがあぶり出す日本人の国民性
ワールドカップでの日本に関する話題の一つに、日本人サポーターが試合終了後、率先してゴミ拾いをしているということで、誇らしげに伝えているネット記事もあり、あまり良い書き方をしていない記事もある。
ワールドカップ会場ではマスク姿の観客が皆無であり、世界の、特に欧米の主要都市の繁華街を歩く人々もそうであり、翻って日本国内では人と接触しない屋外を歩く人も一人残らずマスクをしていることとの対比も、よく語られる。
感染防止の意味合いよりは、他の人がマスクをしているから、という同調圧力が働いているようで、感染初期のコロナが本当に怖い感染症だった頃はマスク不足もあってマスクをしていない人や、していても鼻を出している人が目立ったが、感染力は強まったものの感染してもほとんど軽症か無症状で済んでいる現在の方が人々はきちんとマスクをしている。マスクをする法的義務はないのだが。
この二つの話題に触れて思い出すのは、長い旅行をしていた頃、日本へ帰って来た直後に乗った電車の車内で、降りた駅で、歩いた街角で感じた違和感で、街並みや道路や建物が必要以上にきれいでゴミ一つなく、人々は決してぶつかり合うことなく整然と歩き、電車内で座り、または立っている。それぞれが孤立している感じ。
旅行してきたアジア諸国では電車内や駅や街角で人と人とがぶつかるのは当たり前で、押しのける人もいる。
道路を歩いていたら他人に手で押されるのはムッとするが、それにも慣れた頃に日本へ帰ると、人々があまりにも接触を避けていることに驚いた。
人を押しのけることはもちろん、ちょっと触れただけでも大顰蹙を買いそうな空気があり、実際、日本国内でアジア諸国でのように電車内で人にぶつかり、歩きにくいと人を手で押したりしたら大変なことになり、警察に通報される可能性もある。
アジア諸国では道路や電車内で近くにいる人と話をしたりするのは当たり前だが、日本では元々の知り合い以外は、まず他人と話すことはない。
電車内や街角で知らない人に話し掛けると変に思われるし、下手をするとこれも警察に通報されることだろう。
街や建物が異常にきれいだったり、人々が整然としていたり、今回のマスクでもみられる皆が同じように振る舞う国民性は、日本人の美徳でもある反面、怖さでもある、と感じる。
アジア諸国なら許される人にぶつかったり人を押しのけたりする行動や、街や建物がゴミだらけであることが決して許されない。
欧米はどうか、と言うと、さすがに人に平気でぶつかったりはないが、電車やバスで乗り合わせた人と話したり、などはあったように思う。
あと世界各地を旅行して気付くのは、アジアでも欧米でも街を歩くと物乞いがいて、何か自分の窮状を訴え掛けてくる。自分ほこういう理由で今はお金に困っている。だから少し恵んで欲しい、と。
アジアの物乞いはより直接的に、ただお金をくれ、と迫ってきたり手を出してくる人が多かったように思う。
欧米の方がよりロジカルに、何で今自分はお金に困っているのか説明しながら話し掛けてきたように思う。
特にアメリカでは自作の段ボール製のプラカードを掲げ、こういう理由でお金が必要だから助けてほしい、と言ってくる人が長距離バスで街に着くと必ずいた。
ここまで書いて、イスラム圏には物乞いはあまりいなかった気がすることを思い出す。イスラム教の教えが関係しているのだろうか。
イスラム圏では反対に、おごってくれたり、家に招こうとしてきたり、の出来事がとても多かった。
コーランの教えに、旅人には親切にすべし、施すべし、とあるそうで、彼らは見返りを要求せず、ただ親切にしてくれる。
これが他の地域だと見返りを期待しての行動だったりするのだが。
こうしたアジア、欧米、イスラム圏の違いはあれど共通しているのは、人々がコミュニケーションしてこようとするところで、日本のホームレスと比較すると、言うまでもなく、日本のホームレスは人に話し掛けたりしない。
それでも物を拾ったりしてやっていけるかららしく、昔の日本は物乞いもいたらしいが。ただ、日本人特有の、物乞いするなんて恥ずかしい、という感情が少なからず働いているようには思う。
あと、普通の日本人は知らない人を自宅に泊めたりはしないだろう。
長い旅行をしていた頃はそんな日本特有の潔癖性と言うか同調的な風潮が嫌で、帰国直後の違和感を強烈に引き摺り、次に日本を脱出するための原動力にしていたが、これは日本と日本人の長所の裏返しでもあり、自分もそうした日本人の特徴は強く持っている。
同調性というのは全人類が持っているので、日本人はそれが強いに過ぎないのではあるが、今回のワールドカップでのゴミ拾いや、マスクをいつまでも外さない現象に日本人の国民性がよく表れていて、色々と気付かされたり、帰国直後に感じたことを思い出させられたりした。
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