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#74 韓非子【第二冊】

"韓非子【第二冊】"
最初から意外な発見あり。
最古の老子の解説本という説明文があり、本書は老子の各章に対する韓非子の解釈/解説を載せている内容。
それぞれ性善説/性悪説でスタンスは異なるが、老子は孔子と異なり、先王ではなく天/道理に準じているスタンスのため、「人」を基準にしていない両者は意外と共通項が多いんだな〜と認識した。

また、本書の後半では、君主として気をつけなければならないポイントを事例を交えながらズバッと書いているため、純粋に学びになる。
今までの経営シーンを起こしながら思考を反芻していた。色々反省点あり。
今回も学びは数多くあった中で、特に印象に残ったのは下記の3点。

  • 物惜しみとは、その精神を大切に惜しみ、その知識を惜しんで使うことである。そこで老子は「人を治めて天に仕えてゆくのには、もの惜しみをするのが第一だ」と言うのである。

  • こだわりをなくしてこそ行うべきことと止めるべきこととの規準がはっきりし、平静であってこそ禍福の道筋がよくわかるのに、今や愛好するものに心を奪われ、外界の事物に誘惑される。誘惑されて引っ張られるから、老子は「引き抜かれる」と表現した。聖人ともなると、ひき抜かれることはない。

  • 君主が行うべき七術、六微について

良書!
以下、学びメモ。
ーーーーーー
・人は禍いにあうと心は恐れ、心が恐れると行動は正しくなる。行動が正しくなると思慮も深くなり、思慮が深くなると物事の道理が得られ、物事の道理が得られ、物事の道理が得られると必ず事業も成功する。行動が正しくなると災難にあわなくなり、災難にあわなくなると天寿を全うできる。天寿を全うすると健全で長生きでき、必ず事業が成功すると財産もできて身分も高くなる。健康で長生き、富んで尊くなるのは福である。そこで老子は「禍いがあれば、そこに福が寄り添っている」と言う。
→人は福を受けると富んで尊くなり、富んで尊くなると衣食が贅沢になり、衣食が贅沢になると高慢な心が起こり、高慢な心が起こると行いは邪悪になり、動作は道理を外れることになる。行いが邪悪であるとその身は健康を損ねて若死にすることになり、動作が道理に外れると事業の成功は得られない。そもそも内には若死にの災難があり、外では成功の名声も上がらないというのは、大きな禍いである。そこで老子は「福があれば、そこに禍いが隠れている」と言う。
・老子の書で「人を治める」と言われているのは、人としての行動の節度を適切に守り、思慮の消耗を省いて少なくすることである。「天に仕える」と言われているのは、聴力や視力の働きを極めつくさず、知識の働きを使いつくさないことである。
→もしもそれらを極めつくすと精神を消耗させることが多く、精神を無闇に消耗させると道理にもとった物狂いといった禍いがやってくる。それゆえ、物惜しみをするのである。
→★物惜しみとは、その精神を大切に惜しみ、その知識を惜しんで使うことである。そこで老子は「人を治めて天に仕えてゆくのには、もの惜しみをするのが第一だ」と言うのである。★
・★大国を治めて度々法を改めたのでは民衆が苦しむことになる。それゆえ、道をわきまえた君主は静かにすることを尊んで、法を改めることは重んじない。そこで老子は「大国を治めるのは小魚を煮るようにせよ」と言うのである。★
・人は利益を求める欲心から離れることができない。利益を求める欲心を除けないのは、その身の悩み事である。そこで、聖人は着るものは寒さを凌げるだけにし、食べるものは空腹を満たすだけにして、それで悩みをなくした。
→しかし世間の人々はそうではない。大は諸侯にもなろうとし、それほどでなくとも千金の財を残そうとして、物を欲しがる悩みは消えることがない。徒刑者でも解放されることがあり、死刑囚でも助かる時もあるが、今や満足することを知らない者の悩みは生涯解けることがない。
→★そこで老子は「最大の災いは満足を知らないことだ」と言うのである。★
・我が身を完全にした上で、何事も万物の理に従っていくことのできる者には、天の生命が与えられる。天の生命とは万物生成の生意である。そこで、天下の道理はその生命を完全に生き抜くことである。もし慈しみによってそれを守っていくなら、事は必ず万全で、行動も全て適切であって、それこそ宝物である。
→★だから、老子は「わたしには慈と検と世界の先頭には立とうとしないという三つの宝があって、それを守り続けて宝としている」と言うのである。★
・人は賢愚に関わらず、何を行うべきか何を止めるべきかは誰でも分かっている。こだわりなく平静であれば、誰にでも禍福の起こる原因はわかるものだ。ところだ、自分の好き嫌いに囚われ、心を乱すものに誘われて、そこで初めて乱れてしまう。そうなるわけは外界の事物に惹かれ、自分の愛好するものに心を乱されるからである。
→★こだわりをなくしてこそ行うべきことと止めるべきこととの規準がはっきりし、平静であってこそ禍福の道筋がよくわかるのに、今や愛好するものに心を奪われ、外界の事物に誘惑される。誘惑されて引っ張られるから、老子は「引き抜かれる」と表現した。聖人ともなると、ひき抜かれることはない。★
・全て形のあるものでは、大きいものは必ず小さいものから始まる。長い年月を経るものでは、多いものは必ず少ないものから始まる。そこで、老子は「天下の難事も必ず易しいことから始まり、天下の大事も必ず小さい事から始まる」と言うのである。
→★それゆえ、物事を制圧しようと思う者は、そのことの小さいうちにすべきである。そこで老子は「難しいことは、それがやさしいうちによく考え、大きなことは、それが小さいうちにうまく処理する」と言うのである。★
・★老子は「外に出ることが遠ければ遠いほど、知ることはますます少なくなっていく」と言う。これは知恵を遠くに行き渡らせると、身近なところは忘れてしまうことを言ったものである。★
→それゆえ聖人は普通の決まった行動をしない。それでいてあまねく知ることができる。また、あまねく見ることもできる。時の動きに従って事を起こし、物の素質に基づいて功績を上げ、万物の力を利用して、その利益を上に吸い上げる。そこで老子は「何もしないでいて全てを成し遂げる」と言うのである。
・★国を安泰にする7つの方策★:
①賞罰は必ず事の是非に従って行うこと
②禍福は必ず事の善悪に従って下すこと
③殺すも生かすも法の決まり通りに行うこと
④優秀か否かの判別はするが、愛憎による差別はしないこと
⑤愚か者と知恵者との判別はするが、謗ったり誉めたりはしないこと
⑥客観的な規準で事を考え、勝手な推量はしないこと
⑦信義が行われて、騙し合いのないこと
・★国を危険にする6つのやり方★:
①規則があるのにその中で勝手な裁量をすること
②法規をはみ出してその外で勝手な裁断を下すこと
③人が受けた損害を自分の利益とすること
④人が受けた禍いを自分の楽しみとすること
⑤人が安楽にしているのを脅かして危うくすること
⑥愛すべき者に親しまず、憎むべき者を遠ざけないこと
・★国家の安泰と危険とは、是非の規準が守られているかどうかによるのであって、兵力の強弱によって決まるものではない。国家の存立と滅亡とは、国の内実が充実しているか空虚であるかによるのであって、人口の多寡によって決まるのではない。★
・賢明な君主が功業を立てて名声を上げる四つの手段:
①天の時
②人の心
③技能
④勢位
・★君主が行うべきことは七術ある★:
①多くの人々の言葉や行動についてそれを突き合わせて調べること
②罪のある者は必ず罰して威厳を立てること
③功績のある者は必ず賞を与えて臣下の才能を十分に発揮させること
④全て個別的に聴き取って臣下の実績を追求すること
⑤紛らわしいことを告げ、偽りの仕事をさせて、試すこと
⑥自分で知っているのに知らぬふりで質問すること
⑦あべこべのことを言い、反対のことを行なってみせること
・★君主がよく観察して見抜くべき六つのこと(=六微)★:
①君主の権勢が譲られて臣下に握られること
②君臣の利害が異なるため、臣下が外国の力を借りて対抗すること
③類似の紛らわしいことにかこつけて、欺こうとすること
④利と害とが裏表になる(儲ける者があり、その裏で損をする者がある)
⑤上下の秩序を曖昧にして、朝廷の中で争いを起こすこと
⑥敵国が人事に干渉して、こっそり大臣の任命をすること

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