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日本デザイン学会へラオス・ミャンマーのクリエイティブ教育に関する報告論文を寄稿

2023年3月発行の「デザイン学会」特別号にて、ラオスとミャンマーのクリエイティブ教育に関する報告論文を書かせていただきました。

日本デザイン学会http://jssd.jp/)は1953年に設立し、デザインに関わる学術的研究を行う学会です。

現在20の部会があり、ファッションやプロダクトデザインといった古典分野から、子どものためのデザイン、農業、環境デザインといった多岐にわたる分野の部会があります。つまりデザインに関することを幅広く扱う学会なのです。

ソーシャルコンパスは「アジアデザイン研究部会」に所属し、おもに東南アジアのデザインやクリエイティブ教育に関する実践&研究を行っています。

今回の報告論文では2022年に実施したラオスでの映像ワークショップ(国際交流基金ビエンチャン事務所主催)とミャンマー で実施したオンラインアートワークショップについて書かせてもらいました。
以下、ラオスの記事についてご紹介させていただきます。

<ラオスにおけるクリエイティブ教育>

ラオスはインドシナ半島のほぼ中央に位置し、タイ、カンボジア、ミャンマー 、ベトナムと国境を接しています。とくに、タイの文化やメディアの流入は著しく、多くの若者がタイの情報や書籍の影響を受けています。
(ラオス語とタイ語は似ているので、理解できるとのこと。)

ラオスで映像を学べる大学は①ラオス国立美術学校(National Institute of Fine Arts)と②ラオス国立大学(National University of Laos)の2つです。
ラオスではアートやデザインといったクリエイティブに関する仕事はまだ少なく、卒業生の多くは観光用のアート作品制作や国営放送などで働くことが多いのが現状。

しかし、グロバール化やSNS、Web3、仮想通貨といった様々な可能性が広がるなか、ラオスでも世界的に仕事をしたいと望む若者は増えつつあります。

これまでのラオスの映像作品の傾向として、アートや映像作品など、公開されるすべての制作物に検閲が入るので、どうしても交通安全や啓発動画といったあたりさわりのない映像になってしまう点があります。
そこでSocial Compassでは、より自由な発想で自分のアイデアを形にするための映像制作ワークショップを2022年の9〜10月に実施しました。

ワークショップではまず、自分の問題意識や関心を掘り下げることから始めました。
図1のアイデアボードのように、①自身が抱える悩みや課題、②家族が抱える悩み、③ラオスが抱える課題、④世界の課題、の4段階で課題を考え、身近なことから世界へと視野を広げていくようにしました。

そうすることで、自分の問題意識は何なのか、なぜ自分はこの問題に関心があるのか、といった議論や思考が始まり、これまで見えてこなかった課題が意外にも浮き彫りになってきました。

図1 アイデアボード

自分の問題意識や関心が明確になったら、次に大切なのは「ラオスらしさ」や「オリジナリティ」です。
学生たちはラオスにしかない文化や信仰、考え方などを加えていき、作品にオリジナリティを加えていきます。こうして決まったコンセプトを元に、約1ヶ月の制作期間を経て学生たちにショートアニメーション作品を制作してもらいました。

短い時間のなか、参加者全員が素晴らしい作品を制作し、本当に感動しました。
ある学生は家庭内での夫婦喧嘩をテーマとし、「夫婦喧嘩をすると台風が起きる」という言い伝えをアニメーションで表し、オリジナリティのある作品を制作。ラオスの文化と自分の問題意識を交えた独自の世界観を生み出していました。

このワークショップは、教育的なコンテンツや啓発動画が多いラオスにおいて、自由なテーマと発想でクリエイティブな視点を提供することを目的として行いました。結果、学生の多くがオリジナリティのある作品の制作を行い、これまでになかった作風のアニメーションを制作してくれました。

ラオスでは、アフリカやASEAN諸国に見られるようなリープロッグ現象も進みつつあり、スマホやWeb3、NFTといったテクノロジーに関心を持つ若者も増えています。今後、ラオスの若手クリエイターがどのように活躍していくのか楽しみです!

文/ 貝塚 乃梨子

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