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風景のレシピ #65 “砂漠の彼方の町”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #65 “砂漠の彼方の町”

調理時間:12時間

材料:
陽炎の名残り:ひとつ
夕焼け空:ひとつ
涼しげな風:一陣
レンガと石の、歴史を感じさせる町:ひとつ
オリーブ木:たくさん


1. 砂漠に陽炎をたて、町の輪郭の蜃気楼を映し出す。


2.その輪郭を徐々にはっきりさせてゆく。
  レンガ積みの円筒形の建物にドームをかぶせ、それらを回廊で繋げる。


3.200年前の昔日にさかのぼり、路地という路地じゅうにオリーブの木を植える。
  今では木はすでに古木となっており、降り積もった銀の葉は土となっている。


4.優しいオパール色の夕空で天を覆う。
  古びたレンガを補修し、ドームの頂点のアンテナを磨いたりする。
  誰もいない町に月が昇る予感がしたら、出来上がり。


調理のコツ
*ドームの上からの見晴らしを想像しながら


レンガと石造りの呼吸する建築物
育ち過ぎたオリーブの木に覆われた屋上
誰も予想がつかない異国の空の色
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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