見出し画像

風景のレシピ #63 “海岸の並木道”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #63 “海岸の並木道”

調理時間:10時間

材料:
道:一本
堤防(低め):一基
街路樹:たくさん
かもめ:たくさん
荒れた海:一面
遠くの海上の台風:ひとつ
波状雲:適宜
窓のある建物:ひとつ
切り立った崖:適宜


1.靄のかかった憂鬱な休日をよく練り、四方に伸ばす。
  硫黄色の空には波状雲をたなびかせる。


2.どこかへと続く道を通し、低めの堤防を添える。


3.背後に高く切り立った崖をダイナミックに並べる。


4.道に沿えるように街路樹を植えていく。
  できあがった並木に呼応するかのように、堤防にかもめを並べていく。


5.並木の背後に家を一軒建てる。
  あなたの友人の家である。
  波の音がそこかしこに鳴り響き、海風が薫れば、できあがり。


調理のコツ
*忘れがたい一日を過ごしているかのように。


その窓からは水平線が見える
石灰質の切り立った崖
何か言いたげな、かもめの列
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

★「風景のレシピ」マガジンページはこちら