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シュガーレス/文学フリマのお品書き

持田「猫はね、頭の良い生き物だからほんとは簡単に死んだりしない」

持田「何が猫を殺すと思う?寺本さん。」

   持田が寺本のほうをじっと見る

持田「好奇心なんだって。知りたい、この先に行きたい。危ないかもしれない。そう思っても、好奇心には勝てない。だから死んぢゃうんだ」
   
   2人の間に沈黙
   持田、気まずそうに手組んだり離したりする

持田「でも俺はさ、猫には長生きしてほしいんだ。」

M寺本「持田君の手が微かに震えているのに気づいた。私はそのときに気づく。にわとり小屋のうさぎが死んだとき、持田君は泣かなかった。そんな持田君をクラスメート達は冷たい人間だと言った。だけど、泣かないからと言って、冷たいとは限らないこと。泣かないからと言って、悲しくないとは限らないこと。そんなことにやっと気づいた」

寺本「持田君は
動物あんまり好きじゃないのかと思ってた」

持田「(笑いながら)なんで?」

   持田、眩しそうに目を細める

寺本「うさぎ好き?」

   持田、一瞬考えて

持田「猫と同じくらいは好き」

M寺本「そんな持田君は、突然居なくなった。
本当にまるで猫みたいに。」

私の空想が映画になったら/シュガーレス


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『私の空想が映画になったら』

今回出展させていただく文学フリマで、
販売するものの1つです。

学生時代、高校3年の夏にはじめて自主制作の短編映画を作りました。30分にも満たなくて、編集も撮影も高校生だけで作る拙い映画。でしたが、私にとっては宝物でした。自分の書いた脚本が、人の声にのって、カメラに映されて、1本の映画になった。

実際、映画を撮るのは時間も労力もお金も飛んでいく大変なもので、映画を撮り続けることは難しくなってしまったけど。私は今でも時々、自分で撮る予定の無い映画の脚本を書いたりします。
そのストックが少しずつ溜まってきたので、今回を機に埃を被っている脚本が少しでも日の目をみたらいいなと思い、脚本も販売させてもらうことにしました。

脚本は、小説とは違い、
柱・ト書き・セリフの3つで構成されているシンプルなものです。その余白をキャストさんが演じてくれてはじめて1つの作品が出来上がります。

なので私は脚本はまだ未完成な、ヒヨコになる前の卵?みたいな状態だと思っています。

読んだ人の殆どが、物足りなさを感じるかもしれないけれど、その余白を楽しんでいただける方にこの脚本が届けばいいなと勝手ながら思っています💫

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余り自分のことを話さない人が、実はすごくお喋りだったり、ミステリアスだと思っていた人が特に何も考えていないぼーっとした人だったり。「シュガーレス」は主人公の寺本さんが綺麗な人だなと思って眺めていたクラスメートの持田くんと、お喋りするようになって、仲良くなりそうだったり、ならなそうだったりする話です。

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