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私たちのアイデンティティと投資戦略

1.設立3年の振り返りと感謝

早いもので、ジェネシア・ベンチャーズを立ち上げて2019年8月31日でちょうど3年が経ちました。

ここまでの3年間は、何の実績もない、ゼロイチのスタートアップとして、ただただ全力で走ってきました。2019年8月末現在で、支援先は日本・アメリカ・シンガポール・インドネシア・ベトナム・イスラエルの6カ国で合計63社となり、年内には運用合計金額100億円、ジェネシアの仲間も10人を超える予定です。また、現在は日本(東京)・インドネシア(ジャカルタ)の2拠点体制ですが、年内にはベトナム(ホーチミン)にも拠点を拡大すべく準備を進めています。1年以内に投資実行した支援先を除くと、約8割が次ラウンドでのファイナンスを完了しており、先日シリーズBを完了した助太刀、タクシーCMでおなじみのHRBrain、累計クライアント数が1,000社を超えたGeoLogic、学生起業家で事業を急成長させているタイミーや、東南アジアで約10万人の医師ネットワークを抱え、伊藤忠商事との資本業務提携を発表したDocquity、米系著名VCからの資金調達を発表した、東南アジアにてIoTカプセルホテルを営むBoboboxやマイクロインシュアランスを提供するQoalaなど、日本・東南アジアの支援先ともにとても順調に事業を拡大させています。

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私たちをスタートアップに例えると、シードラウンドを終え、ようやくシリーズAに差し掛かったくらいの状況ですが、ベンチャーキャピタルとしてこのような形でスタート地点に立つことができたのも、常日頃から私たちを支えていただいているファンド出資者や支援先のみなさん、そして色々な刺激やアドバイスをいただいている諸先輩方はもちろんのこと、まだ具体的なトラックレコードも輝かしいブランドもない、そんなジェネシアに思いきって飛び込んでくれた、かけがえのない優秀な仲間のお陰です。みんなには本当に感謝の言葉しかありません。

2.創業時の想いとCIのリデザイン

約3年前、ジェネシアの創業時に抱いていたのは、ベンチャーキャピタルという職業を通じて、日本の産業力向上に貢献したいという強い想いでした。アナログな業種を中心にさまざまなお仕事をさせていただいた約8年間の銀行員時代を経て、サイバーエージェントに移り、約12年間にわたって日本や東南アジアの最先端のネットビジネスにどっぷり浸かった私の目に映っていた景色は、遅々としてデジタル化が一向に進まず、Leapfrogで目覚ましい進化を遂げているアジアの国々に大きく取り残されていく日本の姿でした。

最近になってようやく本質的なオープンイノベーションに取り組む企業が増えてきたものの、日本においてデジタル化がなかなか前に進まない背景には、アナログに最適化された産業構造が既に出来上がっており、デジタルシフトの際に発生するサンクコストが極めて高いこと、キーマン(決裁者)のデジタル化に対する感度やITリテラシーがあまり高くないこと、および(オーナー経営者でない場合は特に)自分の任期の中で既存ビジネスへ大きなダメージを与えかねないデジタルシフトに思いきって踏み切れないこと、など色々な理由が挙げられると思います。このような状況を少しでも打破すべくたどり着いた自分なりのアプローチが、「ベンチャーキャピタルとして、日本や東南アジアでデジタルベースでの産業創造にチャレンジしている起業家に伴走し、大きく、持続可能な産業を起業家とともに創っていくこと。そして、スタートアップと大企業それぞれの強みを活かし合える共創プラットフォーム的な役割を担い、強いスタートアップエコシステムの形成に貢献することを通じて、日本の産業力向上に貢献していこう」というものでした。

もうひとつ抱いていたのは、豊かな人生を送る人を増やすことに貢献したいという想いでした。自分自身が裕福でない家庭で育ったことや、ムハマド・ユヌス氏が1983年にバングラデシュで設立したグラミン銀行についての本を読み、大きな感銘を受けた影響もありますが、世界中の人々が、生まれた国や環境に左右されることなく、インターネットを通じて世界中の情報にアクセスし、さまざまなことを学び、積極的にチャレンジができる、そんな情報格差のない環境を創ることに貢献したい、ベンチャーキャピタリストとして、限りない可能性を持つインターネットやテクノロジーを活用したサービスを世界中の人々に届けることで情報格差をなくし、豊かな人生を送る人が増えれば、どんなに素敵な世の中になるだろうか。そんな想いを抱いて、ジェネシアを創業しました。

そして、創業から3年が経ち、メンバーが10名を超えてくるこのタイミングで、ジェネシアを創業する際に大切にしていた上記の想いはそのままに、ジェネシアのメンバーひとりひとりが創っていきたい人生のものがたりを乗せた形で、CIコーポレートサイトをリデザインしました。

「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」という私たちのビジョンは、格差を広げるテクノロジーではなく、すべての人がその恩恵を享受できるテクノロジー、そしてそれらを生み出すスタートアップを応援し、より豊かな社会の実現を目指すということの宣言であり、このビジョンを実現する手段として、私たちは「アジアで持続可能な産業がうまれるプラットフォームをつくる」というミッションを掲げています。このミッションは、私たちが、産業創造を担うすべてのステークホルダーを巻き込み、人・情報・テクノロジーを活用できる共創プラットフォームとしての役割を担うことで、次世代の大きく、持続可能な産業を生み出す場を実現したいという私たちの想いを表したものです。

もしよかったら、リデザインについての私たちの想いをつづったこちらの対談も見てみてください。

3.ジェネシアの投資戦略

あるべき社会の実現に向けて、私たちが中長期で大きく成長すると考えている事業領域が(大きく分けると)2つあります。
(ⅰ)産業のデジタルトランスフォーメーション事業領域
(ⅱ)人間の個性や価値観の多様化や、個人のエンパワーメント、及び時間・モノ・空間などの利用効率の最大化を支えるソリューションやサービス

(ⅰ)産業のデジタルトランスフォーメーション事業領域
現在、あらゆる産業のデジタルトランスフォームを推進するスタートアップが、日本においては既存産業のあり方を再定義する形で、東南アジアにおいてはデジタルベースで産業インフラを新たに構築する形で続々と立ち上がり、その存在感を急激に増してきています。私たちは、この不可逆なトレンドである産業のデジタルトランスフォームが意味するものは、単なる効率化には留まらず、持続可能な産業構造の実現に向かうことだと考えており、そのためには、少なくとも以下2つの要素を満たすことが必要だと考えています。

・各産業におけるステークホルダー毎の提供価値と、受け取る利益のバランスが適正となるビジネス構造を実現すること(サプライチェーンにおいて介在価値を提供していない中間プレイヤーの見直しや、一部のステークホルダーが過度に儲けていたり、搾取されていたりする状態を最適化するビジネス構造にトランスフォームすること)

・プロダクト・サービス・システムを、単なる機能提供に留まらせるのではなく、体験や経験といったコトとの共存を視野に入れた形で、包括的にデザインすること。そして、あらゆる商流におけるデータをリアルタイムに取得し、その蓄積したデジタルデータによって、ビジネスプロセスを最適化する方向にPDCAを廻せる体制を持っておくこと

上記の考え方に基づき、私たちは、(大きく分けると)以下2つのビジネスモデルでチャレンジする日本と東南アジアのスタートアップへ積極的に投資しています。

■Saas(Horizontal(機能特化型)/Vertical(業界特化型))
ソフトウェアやセンサーの提供により、企業活動や産業におけるビジネスプロセスの最適化を実現するとともに、それらの提供を通じて蓄積したデジタルデータの活用によって、粘着性や提供価値を更に高めるスタートアップや、ネットワーク外部性を生み出すスタートアップへの投資
日本:HRBrainBaseconnectBizteXフォトラクションなど
東南アジア:SofiMobilkamuLogislyなど
 
■直接取引プラットフォーム
企業間取引によく見られる、下請け・孫請けなど取引構造が多層化している状態の解消を目指す、取引当事者同士がプラットフォーム(もちろん明確な介在価値を提供していることが大前提)を通じて直接繋がることが可能なプラットフォームを提供するスタートアップへの投資
日本:助太刀ShelfyNonBrokersみーつけあなど
東南アジア:DocquityKamereoなど

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(ⅱ)人間の個性や価値観の多様化や、個人のエンパワーメント、及び時間・モノ・空間などの利用効率の最大化を支えるソリューションやサービス
私たちが注力しているもうひとつのテーマがこれらの事業領域です。人間の個性や価値観の多様化が進み、そういったものをよりオープンにできる社会の受容性が増すことによって、生き方や働き方の多様化など、個人のエンパワーメントがこれからますます強まると思います。また、SDGsやCSV(Creating Shared Value)への地球単位での意識の高まりによる消費型経済から循環型経済への、時代の要請としてのシフトによって、時間・モノ・空間などの利用効率の最大化や、あらゆる経済活動における、生産→消費→廃棄というそれぞれのステップにおいて、資源を循環させる方向性でのアップデートがより強く求められてくると考えています。このような不可逆かつ普遍的な時代の変化を踏まえて、以下のような事業領域でチャレンジしているスタートアップに積極的に投資をしています。

■人間の個性や価値観の多様化や、個人のエンパワーメントを支えるメディア/プラットフォーム、エンターテインメント
パーソナライズドされた商品や、より深いユーザーニーズに応える商品など、データドリブンでユーザーに新たな付加価値の提供を可能とするD2C、人間の個性や価値観の多様化を支えるメディアや(決済や与信などの)金融機能やコマース機能を包含したプラットフォーム、(XRやE‐Sportsなど)広義でのエンターテイメントを提供するスタートアップへの投資

■シェアリング(ギグ)エコノミー
さまざまな経済活動や日々の生活において、時間・モノ・空間の利用効率の最大化や、Reduce・Reuse・Recycleを実現するシェアリング(ギグ)エコノミーを提供するスタートアップへの投資

■デジタルマーケティング

(スマホ動画の視聴時間の拡大などの)マスメディアのパラダイムシフトや、OMO(Online Merges with Offline) が広く浸透していく世の中を捉えた、広義でのデジタルマーケティングを提供するスタートアップへの投資

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4.ジェネシアから起業家へ向けたメッセージ

私たちは、日本と東南アジアにおいて上記領域でチャレンジする60社を超える支援先の企業価値向上に向けたさまざまな取組みを通じて、また日本と東南アジアに拠点を構えていることによって得られるナレッジやネットワークを活かして、支援先の事業の成功確率を最大化させる「成功の型」を日々アップデートするとともに、今後大きく伸びそうな事業アイデアをチーム内でストックしていっています。

毎日たくさんの起業家とディスカッションさせていただいていますが、私たちは、シードからプレシリーズAにフォーカスしているので、ご相談いただくタイミングでは、まだ狙う事業領域が明確に定まっていないか、狙う事業領域は決まっているが、具体的な山の登り方が定まっていない場合がほとんどです。

(ⅰ)産業のデジタルトランスフォーメーション事業領域
(ⅱ)人間の個性や価値観の多様化や、個人のエンパワーメント、及び時間・モノ・空間などの利用効率の最大化を支えるソリューションやサービス

上記領域での起業を検討されている方、既に起業しているシード・アーリーステージの起業家の方、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、遠慮なくご連絡ください。

(ⅰ)については、はもちろん、産業のデジタルトランスフォーメーションにチャレンジする数多くの支援先に伴走している大手商社出身の水谷、トレジャーデータ出身の相良が主に担当しています。
(ⅱ)については、25歳以下の起業家を対象として事業の壁打ちを行うFounders Gateのリーダーであり、B2Cを中心とした数多くの支援先に伴走している一戸が主に担当しています。

ぜひ一緒に大きく、持続的な産業を創りましょう!





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