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本場ミシュランガイドの星つきシェフが、福岡の海沿いに拠点を構えた理由

Sola Factory でサービスをしています、いなだ です。前回は、Sola Factory について、そして私たちがnoteをはじめた理由についてお話ししました。

さて。レストランを営む中でお客様からよくいただく「どうして福岡のこの場所にお店を作ったの?」という質問。世界で脚光を浴びてきたシェフ・吉武が、福岡の中心部から少し離れた港にレストランをオープンした理由についてよく聞かれます。

今回は吉武が福岡にたどりつくまでの背景、そして、ここ福岡の地で力を注ぎたいと胸に秘める思いについてお話しします。

料理人:吉武広樹のこれまで

まずは吉武のプロフィールからご紹介させてください。

吉武は佐賀県出身です。福岡の調理学校を卒業後、東京とパリで修行を積み、その後調理器具を携えて、アジア、中東、ヨーロッパ、アフリカ等、世界40ヵ国以上を渡り歩いた末、シンガポールで開業します。

シンガポールでは賞を受賞するなど、結果を積み上げていた吉武。しかし開業から1年後、修行時代を過ごしたフランスに戻ることになります。

料理人として自分が戦うべき場所がparisだと思った

本場ミシュランの1つ星を持っていれば、料理の世界で発言権を持つことができる、人に話を聞いてもらえる。フランスに再び戻ったのは、1人の料理人としてパリで勝負をしてみたいという思いからでした。

そして2010年にレストラン「Sola Paris」を開業。その1年3ヶ月後、「Sola Paris」はミシュランの1つ星を獲得します。

パリで過ごした10年間、星を追い求めた先に気づいた「料理人としての自分の本質」


「ミシュランの星をとる」という目標を掲げ、実際に目標を実現させた吉武。1つ星を獲得した先の展開として、次は2つ星、3つ星、世界ランキングを目指すと、そうイメージされる方も少なくないのではないでしょうか。
かくいう私も、この業界に入る前はそれがセオリーだと考える1人でした。

しかし吉武にとって、料理人としての客観的な評価、地位や名誉を近くに感じたとき、星を目指すことが自分たちの可能性のすべてではないように感じ、さらにその向こうにある本当の意味での「自分自身が料理人としてやるべきこと」を見つめ直す契機になったと言います。

「やるべきことがある場所は、フランスではない」

この想いが、吉武の日本帰国の原点になりました。

尊敬するシェフ、アンドレ・チャン氏

日本帰国に至るまでの話を吉武から初めて聞いたとき、「考え方にとても共感している、影響を受けた」と言及していたシェフがいます。それが、台湾人シェフのアンドレ・チャン氏(以下「アンドレ氏」)です。

アンドレ氏は「世界のトップ・シェフ100人」に選ばれている台湾人シェフで、吉武とは同年代。アジア人であり、フランスで活躍した経験があり、そこからシンガポールにわたり開業されています。

ミシュランで2つ星、アジアのベストレストラン50で2位の「レストラン・アンドレ」を閉店することにした世界的シェフのドキュメンタリー

アンドレ氏とえば、2018年にシンガポールで営んでいたレストラン「Andre」を人気絶頂の中閉店し、星を返上したことでも有名です。Netflix では、アンドレ氏がその決意を従業員の方に伝えるday1から、その後お店を閉じるまでの1年間にわたるドキュメンタリーが放映されています。

人気レストランを閉店してまで、アンドレ氏ががしたかったこと。インタビュー記事では、次のように答えています。

自らのルーツであるアジアの料理を世界に広めるという、新たなミッションを見つけた

きっと、吉武を動かした気持ちも、自身の役割を問い続けた先に「新たなミッションを見つけた」という思いだったのではないかと思います。

世界でさまざまな経験をしてきたからこそ、他にはできず、自分たちに求められるもの、求められる場所があり、自分たちの表現で一番喜んでくれることをもっと自由にやろうと決めた。

吉武にとってルーツがある場所。それは、フランスでも東京でもなく、生まれ育った場所であり、1番はじめに料理を学んだ場所である、九州でした。

チームで帰国後、Sola Factory は福岡に拠点を構えます。

博多の海を通じて世界の空へ、食の楽しさを届けたい

ここ福岡の地で、Sola Factory が表現したいこと。
ただ自分たちのやりたい料理をやるのではなく、この業界を長く継続させる、次の世代に繋いでいくための提案をしていきたいと考えています。

例えば、その1つには「水産資源の問題」への解決策を探ることがあります。なぜ世の中が天然や国産食材を求める風潮がある中で、Sola Factory では養殖や外国産、冷凍技術も使うのか。話が長くなってしまうのでその理由はまた別の機会にお話しできればと思いますが、海に囲まれたこの環境で、真剣に向き合っていきたいトピックスです。

また、同じ海を囲んで生活している中国、韓国、台湾、シンガポール、アジア近隣諸国で一体になって、同じテーマに向き合えるイベントなども今後チャレンジしていきたいと考えています。世界中の人が「食」を囲んで人種を超えて楽しめる空間を作りたい、それが思いの1つです。

福岡県、博多港。隣に国際ターミナルがあり、クルーズ船があり、世界の海へとつながるこの地から。「Restaurant Sola」として、取り組んでいきます。

最後に、従業員みんなで着ているTシャツに刻んだ言葉を結びに添えたいと思います。

Sky, Ocean, Land-across the world. Fly with your own wings. Our possibilities are unlimited.
【自分達に出来る事を自分達の表現で この海を通して世界の空へ】






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