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「乾けない世代」と「好き嫌い経営」 ー働く「個人的大義」を大切にせよ

※本記事は、2017年10月に書かれた↓の記事のリライトになります


こんにちは、ランサーズ の曽根(@hsonetty)です。キャリア・働き方編もいよいよ今回で最終回。前回の自己成長・自己変革に続いて、今週は、働く大義について書きたいと思います。

誰もが避けては通れない、「人はなぜ、何のために働くのか」、というテーマです。キャリア・働き方編の最終回として、うまくしめくくることができれば、と思います。


1. 「乾けない世代」が追い求めるもの


尾原和啓さんが少し前に出版された『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』に、面白いことが書いてありました。

曰く、最近の世代は、一世代前の「乾いている世代」に比べて「乾けない世代」である、と。

一般的な用語でいうと、アメリカでいわれているミレニアル世代、日本でいわれているところのゆとり世代・さとり世代、といったところでしょうか。

自己成長と社会貢献がつながっていたひと昔前の「乾いている世代」は、国や社会を動かし、支えていくという大きな枠組みで作り上げられてきた。

一方で、「乾けない世代」のモチベーションは、家庭、友人、自分という小さくて身近な枠組みで作り上げられている。

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「ないものがない」時代を生きている「乾けない世代」は、上の世代に比べて、達成や快楽よりも、意味合いや良好な人間関係、没頭することに幸福を感じる。

わかりやすくいうと、「自分ががんばる意味が持てるものに、自分が好きな人たちと、とことんハマる」ことを重要視する。

別の言葉でいいかえると、みんな「生きがい」や「ライフワーク」を探している、ということです。ちなみに、以下の小沼大地さんの『働く意義の見つけ方』では、仕事ではない「志事」なんていう表現も使われています。


そういう意味でいうと、少し前にSNSで流行った、”Ikigai”のフレームワークも参考になるかと思います。

▼Mission(使命):「好き」×「必要」であるもの
Passion(情熱):「好き」×「得意」であるもの
Vocation(天職):「必要」×「稼げる」であるもの
Profession(職能):「できる」×「稼げる」であるもの

これらすべての交差点に位置するもの、それが「生きがい」である、と。

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正確な出所は不明らしいですが、今の時代を言い表して妙な概念だな、と思います。

「ワーク・ライフバランス」という言葉が使われだしてから久しいですが、最近では「ライフ・ワークバランス」「ワーク・アズ・ライフ」というような言葉もよく見かけるようになってきました。

ライスワーク(好きではないが稼げる)よりライクワーク(稼げないが好き)、ライクワーク(稼げないが好き)よりライフワーク(稼げるし好き)、という序列がよりはっきりしてきたということかもしれません。


2. 一人ひとりが「個人的大義」へ消化できるか


こうした価値観がどんどん大きくなっていく潮流の中で、ぼくが最近とても重要視しているのは、「個人的大義」です。

一言でいうと、「その仕事をなぜ自分はやるの?」という問いに答えられるものです。

対立的な概念となっているのは「社会的大義」です。

たとえばランサーズでいうと、「個のエンパワーメント」というミッション、「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」というビジョンを掲げています。

これ、手前味噌ながら、とても、というか圧倒的なまでの社会的大義があると思うんです。多分ぼくが声高に叫ばなくても「まぁそうだよね」と99%の人は賛同してくれると思う。

ありがたいことに賛同していただけている一方で、採用面接をしているときに毎回、ぼくがじっくり見させていただくのは、その社会的大義が、その人の個人的大義につながるか、という観点です。

「良いビジョンですね」「ビジョン共感しました」と言ってくださる方に、「なぜそう思うのか?」「何を見て・聞いてそう思ったのか?」ということを色々な角度から聞く。

すると、うーん、と考えながら言葉に詰まる人もいれば、うれしそうに、あふれ出るように自分の体験談を語る人もいる。

平たくいうと、「うちのビジョン、あなた自身の言葉で語れますか?」ということです。

社会的大義というのは、企業が、社会に向けてビジョンを「昇華」させるものですが、個人的大義というのは、一人ひとりが、自分の心の内に向けてビジョンを「消化」するものだと思います。


ランサーズに一人、この社会的大義と個人的大義が強烈につながっている役員がいます。2013年からランサーズで活躍している根岸という人間です。

彼が自分の原体験から語ってくれるのは、「努力する権利を守りたい」ということ。結果の格差はあってもよいが、機会の格差はなくしたい。努力をさぼったわけではないのに頑張る権利を奪われてしまった人たちがいる状況に対して、テクノロジーを使って、その課題を解決しようじゃないか、と。


ぼくは彼を見て、この個人的大義というものを強烈に意識するようになりました。

起業家とかトップは大体、自分の原体験がそのままビジネスやビジョンにつながっていることが常だから、ある意味そこがつながるのは当たり前なんですよね。

トップが掲げるそうした社会的大義を、まわりの一人ひとりが自分の原体験やストーリーに意味づけていって、個人的大義に消化していく。そうすると、圧倒的な一体感が組織に生まれていくのだと思います。


3. 「良し悪し」ではなく「好き嫌い」


ビジョンの話ばかりしていますが、ビジョンと並んで大事なのがカルチャーですよね。

冒頭、「自分ががんばる意味が持てるものに、自分が好きな人たちと、とことんハマること」が乾けない世代の幸せの源泉と書きました。

それで言うと、「自分が頑張る意味が持てるもの」=ビジョン、「自分が好きな人たちと、とことんハマる」=カルチャー、なんだと思います。

先ほど、起業家やトップは、社会的大義が個人的大義と当たり前のようにつながる、と言いました。ビジョンづくりは、確かにそう。でもさらに難しいのは、そのビジョンを実現するためのカルチャーづくり。

ビジョンが社会的大義と個人的大義の結節点につくられるのだとすると、じゃあ、カルチャーはどうやってつくられるのか。


結論、好き嫌いだと思っています。「良し悪し」ではなく、「好き嫌い」。

ここでも一冊、本を紹介したいと思います。経営学者として著名な楠木健さんの『好き嫌いと経営』という本です。


そのまんまのタイトルですね(笑)。そのまんますぎて、出版された当時は手にとるのをやめようかと思ったのですが、読んでみたら思いのほか面白くて、引き込まれてしまいました。

日本電産の永守さんやユニクロの柳井さんなど著名な経営者14名の好き嫌いだけを聞いていく、という至極シンプルな本なのですが、楠木さん流に、なぜ「好き嫌い」が重要なのか、なぜ「好き嫌い」の復権が必要なのか、が語られています。

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『ビジョナリー・カンパニー2:飛躍の法則』でも、”Good”ではなく”Great”な会社の特徴として、「誰をバスにのせるか」を重視すること、特定の人にとってのみ素晴らしい会社である(=それ以外の人にとっては居心地が悪い)ことが挙げられています。これはつまるところ、強烈なカルチャーをもっている、ということですね。

楽天にいた時も、強烈なまでにこのカルチャーを実感させられました。ランサーズでも、この熱狂できるような独自のカルチャーをとても重要視しています。(ランサーズの社内では、このカルチャーづくりをよく「祭り」や「儀式」にたとえて話したりします)

高尚なことを書いているようですが、シンプルに言うと、好きな人たちと気持ちよく働ける場をつくろうよ、ということなんだと思います。

で、トップはその「好き」、あるいはその逆の「嫌い」をカルチャーとして育てていって、それを強みに変えていきましょうよ、と。

「乾けない世代」の20-30代の人たちは特に、大義に変えられるビジョンとあわせて、そういう夢中になれるカルチャーを求めている。

もちろん好き嫌いの世界なので、合う・合わないはあると思います。でも、ひとたびこの好き嫌いが合えば、きっとビジョン以上に大きなドライブ=動因が組織にかかる。

ぜひ、自分の好き嫌いを意識することで、一人ひとりが、働く意義をさらに大きくしていっていただければと思います。


今回のポイント


というわけで今回のまとめです。

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最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。これでいったん、5回にわたったキャリア・働き方編も終了です。

次回からはビジネス・ノウハウ編ということで、最初に「問題解決」について書きたいと思います。

エモい話が続いたキャリア・働き方編と変わって、すぐにでも日々の仕事に使えるようなノウハウをまとめていきますので、ぜひ引き続きお付き合いください。

また、ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!


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