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ユーザーに学び、社会に訴えかけ、組織を動かすミッション・ビジョン

※本記事は、2018年2月に書かれた↓の記事のリライトになります


こんにちは!ランサーズの曽根(@hsonetty)です。今回からいよいよ最終パートである「経営・組織」編の開始になります。

「経営・組織」編の初回のテーマは、ミッション・ビジョン。ノウハウ編の問題解決、事業編の戦略に続き、新しいパートはビッグテーマから始めていきたいと思います。経営者に近しい目線でのテーマが続いていくことになりますが、引き続きご笑覧くださいませ!


1. ミッション=WHY、ビジョン=WHAT


あらゆる組織において、ミッションやビジョンは必要なものです。

ミッション(Mission)やビジョン(Vision)の明確な定義は難しいですが、一般的には、以下のように定義されることが多いかと思います。

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ひらたくいうと、ミッションは果たすべき目的や使命(WHY)。ビジョンは実現したい目標や志(WHAT)。

ポイントは、ミッションは不変のものであり、ビジョンは可変のものということ。たとえば、ぼくが在籍した楽天もランサーズも、この2-3年の間にビジョンを変更しています。

楽天であれば「グローバルNo.1インターネットサービスカンパニーになる」から「グローバルイノベーションカンパニーであり続ける」へ、ランサーズであれば「時間と場所にとらわれない働き方をつくる」から「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」へ。

いちど設定したビジョン=目標も、それがある一定期間(例:5-10年)で成し遂げられたりすればそれを上書きする一方で、なぜその企業や組織が存在するかというミッション=目的は不変のものです。


でもあらためて、なぜあらゆる組織においてミッションとビジョンが必要なのでしょう。

これを説明するうえで、あまりにも有名なのが、「3人のレンガ積み」で知られるイソップ寓話かと思います。

世界中をまわる旅人が、とある国の街はずれで出会った3人のレンガ職人に「いったいここで何をしているのですか?」とたずねる。

1人目の答えは、「見ればわかるだろう。レンガ積みをしているんだ」
2人目の答えは、「この仕事のおかげで俺は家族を養っているんだ」
3人目の答えは、「歴史に残る偉大な大聖堂をつくっているんだ」

このイソップ寓話を少しアレンジした「4人のレンガ職人」という話があります。ここでも、4人目に対して、同じ「いったいここで何をしているのですか?」という問いが投げかけられます。

4人目の答えは、「みんなが集まって幸せな気持ちになることができる場所をつくっているんだ」

3人目の答えがビジョン(=具体的な目標・志)にもとづいたものであるのに対して、4人目の答えはミッション(=抽象的な目的・使命)にもとづいたものになります。

どちらが良い・悪いというものではないですが、「歴史に残る立派な大聖堂をつくる」といったビジョンは、一定期間を経て達成・実現されれば、変わってしかるべきものです。

一方で、「皆が幸せな気持ちになれる場所をつくる」といったミッションは、なぜその組織が存在しているかに対する根本的な目的意識をあらわしたものであり、基本的に変わることのないものです。


2. 良いミッション・ビジョンとは?


と、ここまで書いて、第5回の『「乾けない世代」と「好き嫌い経営」―働く「個人的大義」を大切にせよ』の内容を少し思い出しました。

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乾けない世代の幸福要素は、「自分ががんばる意味が持てるものに(意味合い)、自分が好きな人たちと(人間関係)、とことんハマる(没頭)」というもの。

つまるところ、ビジョン×カルチャーのかけあわせが重要である、と。

これは採用においてもろにあてはまります。ランサーズの採用においては、ビジョン共感、カルチャーフィット、スキルマッチの3軸でまさにこの順番に評価を行うのですが、中でもこのビジョン共感については、面接において深く掘り下げることになります。

候補者が、このビジョンを、どこまで自分ごと化できているのか、と。 ぼくは候補者の答え方を聞いて、頭の中で以下のようなレベルに分けています。

▼レベル1は、ビジョンを知っている・覚えている
▼レベル2は、ビジョンを誰かの事例や事象に関連づけて説明できる
▼レベル3は、ビジョンを自分の出来事に関連づけてストーリーにおきかえられる
▼レベル4は、ビジョンを自分の原体験に重ねて自分自身の強い言葉で表現できる

レベル4にいくとほぼ即採用することにしています。


では、人をひきつけるよいミッションやビジョンとは、いったいどういうものでしょうか?

ぼく自身、これまでのキャリアの意思決定においては、ミッション・ビジョンを最も重要な選択基準においてきたのですが、その中でも、最初に衝撃を覚えたのは楽天のミッションにある「エンパワーメント」というコンセプトでした(※楽天のミッションは「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」)

「エンパワーメント」という用語はもともと教育の領域で使われていた言葉で、才能開花や権限移譲とも訳されるらしいですが、ぼくなりの定義は、「個人や集団の可能性や潜在的な能力を引き出す」ということ。

今ぼくがランサーズにいる理由も、このエンパワーメントというコンセプトが好きだから、ということにつきます。ランサーズでは「個のエンパワーメント」がミッションになっていますが、これはまさにぼく自身が描いていた「1億総デザイン社会」というコンセプトとまさしく合致していました。すごく自分ごと化できたんですよね。

一方でありがちなのが、「世界平和」的なミッション・ビジョンです。「すべての人を幸せにする」といった表現は、とても素晴らしく誰からも否定されないものですが、逆に誰しもが当たり前と思ってしまうものであり、そうそう自分ごと化することができません。

重要なのは、「ユニークであり、浸透しやすく、やらないことが決まる」ようなミッション・ビジョンだと思っています。

▼その組織の冠を外したらどこのミッション・ビジョンだかわからない(=ユニークさがない)。
▼何のエビデンスもないので、何のことを言っているのかわからない(浸透しやすさがない)。
▼どんな事業もサービスもあてはまるので、指針にはなりえない(やらないことが決まらない)。

あらためて自身の所属する企業や組織のミッション・ビジョンを上記のような観点で見直してみると、面白い発見があったりするかもしれません。


3. ミッション・ビジョンを身近に体感する


どんなに強いミッションやビジョンをつくっても、それがしっかり伝わらなくては意味がないですよね。各企業でいろいろな工夫をされているかと思いますが、ランサーズの取り組みを紹介したいと思います。

ランサーズでは、年に一度、LOY(Lancer of the Year)というイベントがあります。次世代ワークスタイルのロールモデルとなるような個人、広義のフリーランス(ランサーさん)を表彰するセレモニーとして、2015年からはじめたものになります。

このイベントが、ものすごくわかりやすく、ランサーズのミッションやビジョンを社内外のステークホルダーに伝えてくれるんです。

▼二男一女の父として家族一緒にハワイで働こうと決めたWebデザイナー。
▼全くの未経験から努力を続け今では講演にひっぱりだこのママライター。
▼本業とあわせて、シェアオフィスで論文や書籍の翻訳を行うマジシャン。
▼副業で自分の力試しをしながら結婚式の資金まで稼いだWebデザイナー。
▼1年の半分を自作アプリ、もう半分を受託開発にあてるエンジニア。

表彰される一人ひとりのランサーさんが、映像や受賞コメントを通じて語るストーリーを聞くことで、ランサーズのミッション=「個のエンパワーメント」やビジョン=「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」を心の底から感じることができます。

思えば楽天のときも、ミッションにつながる「エンパワーメント」のコンセプトが何たるかを叩き込んでくれたのは、社内の上司でも同僚でもなく、担当として仲良くさせていただいていた楽天市場のベテラン店舗の方でした。

こういうビジョンはやはり、ユーザーに直接ふれる、サービスを実際に使うことによって、生々しく体にしみこませることができるのだと思います。

ちなみにランサーズは1年ほど前にビジョンを変更したのですが、このビジョン変更を発表したのは、2017年3月末日(奇しくも政府による「働き方改革実行計画」公表の翌日)に行われたLancer of the Year 2017でのことでした。

5年以上にわたって「時間と場所にとらわれない新しい働き方をつくる」というビジョンを掲げてきたのですが、大きな社会の変化を受けて、ビジョンを「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」に変えることを、ランサーさんたちに伝えました。

▼「時間と場所にとらわれない」働き方が、「新しい」から「当たり前」になった。
▼「時間と場所にとらわれない」=受動的表現から「自分らしく」=能動的表現へ。
▼「テクノロジー」の力で「働き方」を起点に「社会」をつくっていくことの宣言。

こうしたビジョンの変更を、まず誰よりも早くユーザーに伝える、というのが何よりもランサーズらしいと思いましたし、首尾一貫していると感じました。

これからミッションやビジョンをつくる、あるいはビジョンを変えようと考えている方にとっては、いま最も大切にしているユーザーの方々とじっくり向き合うことが、一番の近道になるかもしれません。


今回のポイント


というわけで今回のまとめです。

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思えば自分のキャリアにおいて、自分の働く意味とか自分たちのサービスが提供する価値とか自分の属する組織のミッションとかを感じさせてくれたのは、いつでも自分が直接ふれるクライアントやユーザーだったように思います。

それが初めて自分の名前を覚えてもらえたオフィスであれ、仲良くなって朝まで語り明かした飲みの場であれ、司会する立場なのに心うたれて涙流したイベントの会場であれ、強いミッション・ビジョンにふれてその実現にまい進する機会をもてることには、やっぱり大きな価値があります。

次回は、「行動規範・カルチャー」をテーマに書きます。ミッション・ビジョンにならんで、組織の根幹をなすWayやカルチャー。Wayをつくり、カルチャーをつくり、その浸透に悪戦苦闘してきた歴史、あるいはしているその体験を熱く語りたいと思います。

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