ポスト平成キャリア論

『ポスト平成キャリア論』ーマイノリティ経験と、カオスにおける意思決定を楽しむ


はじめに

平成も残り2ヶ月。平成最後の就活シーズンを迎えて、「#ES公開中」という動きが世の中で広がりはじめていますね。

就活を多様化し、民主化し、分散化させるべく、日本特有の「就活」 の慣習に疑問を投げかけ、学生が自分と本質的に向き合う時間をつくる動きだと思います。

あらためてこれからのキャリアや働き方、ひいては生き方を考えていくうえで、「ポスト平成」の時代に必要になってくることとは?

経営共創基盤のマネージング・ディレクターであり、AIにも詳しい塩野誠さんの『ポスト平成キャリア戦略』から、これからの未来をつくる若手=20代、30代、40代にとって必要なことを読み解きたいと思います。


1. ハングリー&ノーブルな生き方


・今の日本人は、「自由の刑」に処されている。これだけ自由なのに、動こうとしない
・日本人が個としてプロフェッショナルに生きるヒントは、「職人文化」の中にある
・ウーバーのような「SNS的な相互レーティング」があらゆる職種・業界に広がる
・自分のミッションを見つけられるかが勝負。そのためには、探索・孤独・修行が必要
・ハングリーさがないと事を成せないし、何でも貪欲に吸収し、決断する度胸を持てない
・ノーブルさとは高潔な気概。これがなくてハングリーさだけだと悪いことをしてしまう
・「カオスにおける意思決定」。これを快感ととらえられる人間がリーダーとして成長する
・日本と世界のリーダーの大きな差は、教養・国家観・天命感・ミッションにあり
・ほとんどの人は、全能感に食べられてしまって、ハングリー&ノーブルでなくなる
・真のリーダーとオペレーションの優秀さが融合したときの、日本の爆発力はすごい


2. 日本という大天国に、危機が迫っている


・「仕事ができる人」の定義が変わった。「オペレーションがうまい=優秀」ではない
・日本のビジネス界は「まったり期」が終わり、「崩壊期」に入ろうとしている
・必要なのは「新しい事業を創り出せる人」。だが、大企業にそんな人材はいない
・大企業の経営者に求められるのは、「ポートフォリオマネージャー」的なスキル
・事業欲のある人材が集う企業は、これからプライベートエクイティ化していく
・商社では「有事の経営者」は育たない。経営とは、7-8割は資金繰りだから
・「当事者」となるには、自分の富や名声を超えた「他者への思い」が求められる
・東京という「大天国」でハングリーになるためには、「自分の信じる価値観」が必要
・大企業の社員は、幕末の徳川幕府のお役人に似ている。新時代には冷や飯を食う
・グローバルイシューに日本の視点から斬り込む。それが新時代のリーダーの条件


3. AIという黒船。「若者の下克上」が始まる


・AIブームはあと2年で終焉。ネットのように、AIが普通のものになっていく
・AIはフランケンシュタイン。マシーンラーニング(機械学習)と意味はほぼ同じ
・AI効果は地味。主戦場は、エネルギー・医療・創薬・生化学・分子生物学など
・日本にチャンスがあるのはロボットフレンドリー化。コンビニも家も自動化できる
・AI問題は人事問題。優秀な20代のAI技術者に、年収3000万円を払えるか
・AI時代において企業が成功するための条件は、「課題ファースト」の徹底にあり
・現場からのボトムアップの改革は無理。「正しい独裁者」による上からの改革が必要
・IT業界はすでにメジャーリーグ化。ロボティクス以外は日本人が戦うのは厳しい
・今後のマネージャー像は「週刊誌の編集長」。毎日オープンイノベーションが普通に


4. 20代のうちに自分をリセットせよ


・学歴はあてにならない。受験が簡単になり、昔のMARCHレベルで早慶に入れる
・最近の学生は世界観が狭い。キャリアについて頭でっかちになってしまっている
・20代に大切なのは、まずは失敗して「根拠のないプライド」をリセットすること
・成長の必要条件は、「コーチャビリティ」。これがなくて成功した人を見たことがない
・努力が結果に比例する「正比例ワールド」。ここで生きてきた学歴エリートはひ弱
・仕事は「反比例ワールド」。頑張って失敗するときもあれば適当で成功することも
* 5-10年にわたる長期間の仕事に関する評価はフェア。努力は中長期に報われる
* 属するコミュニティがすべてではない。今のコミュニティから逃げることも必要
* 嫉妬マネジメントが重要。嫉妬している自分を恥ずかしいと思う美意識を持てるか
・20代は自分の師匠を見つけて、私淑するのがいい。世界を見渡せば、候補はいる


5. 30代はリーダー経験を必ず積むべし


・30代になると、「自分はここで生きていくんだ」という方向性がいくつか出てくる
・30代は、リーダーとしてマネジメントする経験が必須。部下の数は何人でもいい
・リーダーを経験しないと、リーダーに対してどんな情報を提供すべきかがわからない
・30歳でテーマが絞り込めたら、制限を設ける必要はない。領空侵犯をやってもいい
・部下の最大関心事は何か、何をインセンティブとして働いているのかを見抜くのが重要
・グローバル企業のトップマネジメントは、普遍的な価値観を提示しないといけない
・思想や価値観を語るソートリーダーの領域と、ビジネスのマネジメントは近づいている
・英語学習は「花粉症」みたいなもの。長期間コツコツと努力すれば後退しにくくなる
・価格の変動幅があるリスク資産への投資は、若いうちに始めるのがオススメ
・20代は貯金ばかりするよりも、どんどん自分に投資するほうが明らかにリターンが高い


6. 40代からは教養と人脈の勝負になる


・キャリアの迷いが多いのは、30代後半。組織の中でどれぐらい偉くなれるか見えてくる
・使命感と職業的スキルもある人が捨て身で仕事をしたら、大きなインパクトを出せる
・40代は、精神的に「おじさん」になってしまうかどうかが決まる、分水嶺になる年代
・人間は周りやメディアにあがめられたときから、自我に食べられてしまうケースが多い
・「40代で野心がある人」というポジションはがら空き。野心家にはチャンスが多くある
・40歳を超えると、「ビジネス余命」を意識するようになる。人生の逆算が始まる
・世の中の8割以上の人たちが自分を過大評価している。客観視できない人はつらい
・40歳になったとき、もっとも重要な財産は人脈。「誰に電話できるか」が勝負になる
・決める力があり、部下に嫉妬せず部下のことを考えられる人は、確実に出世していく
・40代には「理念を語れる力」が必須。コミュニケーションをさぼってはいけない


7. 優秀から偉大へ


・現代を生きるには「自己愛マネジメント」が不可欠。SNSはリスクも大きい
・白でも黒でもないグレーゾーンを理解できるのが大人。中庸を大事にすべき
・好奇心を育むためのコツは「親が勝手に制限しないこと」。好例はサカナくん
・AI普及の時代に、人間の上司に残る機能は、「見守って責任を取る」しかない
・マイノリティ経験は必須。弱者の立場を味わうことが、想像力につながっていく
・旅の効能。新しい世界に触れて自分の内面を育んでいく旅は、想像力を高める
・テクノロジーの妄信は危険。テクノロジーがユートピアをもたらすとは限らない
・世界では「ソフトパワーが高く、人が憧れる国」というポジションが空いている
・あと10年はジャパンパワーを使える。まず国内での成功を目指す挑戦もあり
・ルールメイキングやマーケットデザインができない人は偉大なリーダーになれない


今回のまとめ


個人的にもっともささったのは、タイトルにもある「マイノリティ経験」と「カオスにおける意思決定」。

AI×データの時代、これまで知的作業といわれてきた多くのものが機械に置き代わる中で、人間がなすべき仕事とは何か。


これからの時代の人間がもっとも行うべきは、カオスにおける主体的な意思決定であり、それを生み出すのは、圧倒的な強度を持つ体験、つまりマイノリティ経験ではないか、とあらためて思います。

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