【400字小説】休日の定期券【日刊ボンクラ東京3号】
ついに、土曜日がきました。
いつもなら出社している時間に起きて、遅めの朝ごはんを食べます。洗濯機を回して、軽食を包みました。
そのあとは、通勤定期券と小さなリュックで中央線に乗りこみます。
車内は、平日よりもいろんな人で賑わっていました。
たくさんの小さい子、大きな花束を抱える男の人や、ロリータファッションに身を包む女性…。
私はそういう人達が東京のまんなかにぞろぞろと集まるのが、嬉しくて。
仕事とかじゃなくて、みんなが好きなことで、この電車は動いているんだ、と思えるからです。
会社のある神田までは行きません。
休日のおでかけは、高円寺とか、荻窪とか。そんなところでなんとなく降りてみるのが好きです。
今日は阿佐ヶ谷で。
そしたら、適当に町をぶらぶらします。
その町を、知らなければ知らないほど、素敵なことに巡り会える気がするのです。
だから、スマートフォンはお留守番です。
小さな公園があったので、持ってきたサンドウィッチをいただきました。
ムクドリが何匹か、ぽつぽつと地面をついばんでいます。私は彼らの顔が好きで、近くにいるとじっと眺めてしまいます。
そのあとはカフェで本を読み、西日が差してきたら、よさそうな居酒屋に足を移します。
今日は日本酒をいただきました。
ぽけーっと心地よくなってきたら、甘いものでも買って帰りましょう。
♩
ただいま。
さて、缶ビールでもう一杯。
おつまみは作ってあります。きんぴらごぼうとそら豆をゆでたやつです。
好きなエッセイを読みながら、ちびちびと…。
そうしたら、ゆっくらゆっくらと夢の世界に入りそうになるので、できれば布団を敷いて、できれば歯を磨いて、ちゃんと寝てみようとします。
そして、私は夢うつつに思うのです。
休日の定期券はいいなぁ、としみじみ思うのです。
【東京デイリー・スクラップ#3】2024.3/9
橋本そら
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