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「かこつけて桜餅」

 おつかいの序に、ふと思い立ち久し振りで和菓子屋へ寄った。街中で綻ぶ花の蕾や気の早い桜を見かけるうち、「春」を思い出したのだ。

「春」といえば。その問いにはきっと、百人寄れば百通りの答えが返ってくるだろう。その時々の気分にも左右されるだろう。私は常から気候を意識してしまう人間だから、この頃は三寒四温の只中に居るな、と、まるで台風の目の中にでもいるかのような気分で日々を暮らしている。そうかと言って何ら不自由はなく、寧ろ風を楽しんでいる。雲の変化を楽しんでいる。

 人対人に煩悶するからこそ、空を見上げるのだ。考える事はやめられない。避けては通れない壁は生きている内には幾らでも立ちはだかる。だがしかし、考えるだけではダメなのだ。「考えない」が必要なのだ。

「考えない」とはおそらく、脳の休息だろう。だから私は空を見上げる。深呼吸してみる。鏡の自分と目が合ったら、顔色が悪いと貶したりせずに、二ッと笑って見せてあげる。

「春」といえば、桜餅。私の脳裏に春を寿ぐとびきりの和菓子が思い浮かんだ。あれを食べねば春とは言えんぞ、私は桜餅を食うんや。という謎の心意気を発揮して私は職場のおつかいにかこつけて堂々和菓子を買って帰った。

 ああおいしかった。食いしん坊の自分へご褒美を与えるなら美味しいものと相場が決まっとる。いつでも絶賛受付中だ。

 食べたら元気が出る。

「春」はこれからまだまだいっぱいやって来る。新しき門を潜らんとする甥よ、姪よ、入学おめでとう。君たちの成長が嬉しくて、心踊る春が来た。うれしいありがとう。

 あなたも素敵な春をお過ごし下さい。
                          文と写真・いち

                  


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