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父の穏やかな表情

母と電話で約束をした週末、父が入院する病院へ会いに行きました。「私はうまく笑えるのだろうか…」そんなことを考えながら病室の中へ。

すると穏やかな表情の父が私に目をやり、名前を呼びました。

「父さん、どうした?」声をかけると、

「参ってるんです」と冗談ぽく微笑みました。

ベッドから起き上がり、立ち上がる際にふらつきがみられたので                                       「足大丈夫なの?気をつけてね。」と、父の体を支えました。

しばらく談笑していると、母がやってきました。

父と別れ、母と話をすると

「主治医の先生と話をしたんだけど、まずは脳の放射線治療をすることになって、この病院には設備がないから市外の病院に来週転院するのよ。」

「あとね、脳の腫瘍の影響で認知症ではないんだけど認知症のような症状がでてしまっているんだって。」

入院した当日、がんであると告知を受けた父。その時はかなりショックを受けていたと聞いていました。しかし、先日お見舞いに来た叔母と母に「俺の病気ってそんなに大変なのか?」と尋ねたそうです。がんであることを忘れている。又、下着があるのにも関わらず、ないから病院の売店に買いに行くと言って看護師さんを困らせたそうです。

あのしっかりものの父が…

だから病室でも穏やかな顔だったのかなぁ。

ただ、今は回復することを信じて放射線治療に挑んでいくしかない…そう思っていました。


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