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ポルトにも日本の秋がある<夫婦世界一周紀59日目>

日本はもうすっかり秋の色が濃くなったそうだ。実家の両親が留守中の家の庭を点検に行くと台風の影響でユーカリもレモンも倒れていたらしい。僕たちが出発した時は近年稀に見るほどの猛暑で歩くのもしんどかったけれど、すっかり冷え込んでいるとのこと。

そういえば、ホームシックになっていない。日本が恋しいと思うほど寂しい体験がないからだろうか。大体、心寂しくなるのはフウロがいない時だ。そのフウロがここにいるんだから寂しくなるはずもない。

と思っていたのは強がりだったのだろうか。ポルトの街で遭遇した光景にすっかりやられてしまった。

それは奈良の公園の匂いだった。正倉院展が行われる秋には公園の銀杏の葉は黄色く色づいていて、空気はひんやりからっとしているのに、葉っぱが出す匂いはしっとり湿気を蓄えていた。深く息を吸い込みたくなる秋の気配。ふいにやってきた日本の気配は僕をぐっと締めつけて放さなかった。

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外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。 無料で公開したかったのですが有料マガジンを変更することが出来なかったので、最安値の100円に設定しています。

2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…

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