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さびついた心の行方 <夫婦世界一周紀67日目>

ヨーロッパは本当の意味でくつろげる場所だった。予測できない危険に晒されることなく、心を落ち着けて観光し、休む時にはしっかり休む。

快適さはしかし、自分たちが旅に出ていたことさえも忘れてしまう。日常でいちいち感動していたら心がもたないと言わんばかりに、感情の歯車が錆つき、ささいなことへの驚きや感謝がなくなっていった。

僕はポルトガルのリスボンにいるのに、なんでこんなに気持ちが凪いでしまうのだろう。深夜バスに乗るまでの5時間あまり。スーパーに併設されたマクドナルドのオープン席で、僕とフウロはひたすらスマホを触っていた。

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あまりの強風で信号機が倒れていたが、そんな異常事態にも心は動かないのだ。今思うと、トゥヴァを訪れたのが序盤で良かったとさえ思う。どんなに感動する光景を目にしても、今の心ではきっとその感動を受けきれないだろう。

準備しないまま深夜バスの乗り場に行ったせいで、バス停の場所が分からず30分ほどうろついて、身も心もすっかり荒んだ気持ちでバスに乗り込んだ。

目が覚めたらマドリードにいる。乗り継いだらアフリカだ。

アフリカならこの荒んだ気持ちを吹き飛ばしてくれるんだろうか。


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外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。 無料で公開したかったのですが有料マガジンを変更することが出来なかったので、最安値の100円に設定しています。

2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…

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