見出し画像

ゾウのフンからできている 《夫婦世界一周紀17日目》

手漉き紙の原料となるのは、クワ科の楮という植物だ。楮の皮を蒸して皮を剥ぎ、外側に付いている薄皮を取り除く。その薄皮を木灰で煮詰めると、繊維がホロホロになる。成長の工程で付いた汚れやスジを一つ一つ丁寧に取り除いたら、ミキサーで繊維状になるまでかき混ぜる。

水と繊維が一対一になった物体、通称「ウェット」を漉き舟に入れ、水とネリを混ぜたら紙漉きの準備は完成。あとは木枠を持ってちゃぷちゃぷと一枚ずつ漉いていく。僕たちはその工程を、世界各国でやっている。旅行バッグに入るだけのミニチュアで。ミキサーはないからミートハンマーで、舟は洗濯用のバケツだ。方々捜し求めてこの道具たちに落ち着いた。僕もフウロも我ながらうまくやったと思っている。

紙漉きでなによりも大変なのは、ウェットを作ることかもしれない。作るには一週間以上の時間がかかるし、少量で作れるようなちょうどいい道具もない。だから世界旅行で紙漉きをする時、一番ハードルになると思っていたのはその土台になる部分だった。

ここから先は

680字 / 5画像
外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。 無料で公開したかったのですが有料マガジンを変更することが出来なかったので、最安値の100円に設定しています。

2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?