テキサス<夫婦世界一周紀81日目>
テキサス州に住んでいるという髭面のおじさんは、ポートワインを飲むと顔を赤らめて陽気になった。アメリカ人にもシャイはいる。そんな夫の姿はもう見慣れているのか、そばにいる妻は何も言わずに試飲のポートワインの入ったグラスを揺らしていた。
「実は俺は福岡の大学に通っていたんだよ」
突然テキサスおじさんから日本の名前が出てきた。出会って一時間たってやっと第一声である。きっとずっとフクオカ・フクオカと唱えていたに違いない。口を出した途端に、やれどこ出身だ。コンニチワ・コンバンワ・アリガトウゴザイマス・スミマセン・ムズカシイと言い出した。
これからモロッコに行って、そこからアメリカにいく予定だと言うと、おじさんはさらに喜んだ。どこだ?ニューヨークか・ロスか?カルフォルニアか?まさかテキサスじゃないだろう。わっはっは。
ニューオリンズだよと言うと、おじさんが止まった。
頭に「?」が浮かんだポカン顔を浮かべ、ちょっとしてから僕とフウロに尋ねた。
「どうしてニューオリンズに行くんだ?あんな何もないところに」
「好きなアーティストのゆかりの地なんだよ」
というのは表現が難しかったので、ガンボスープとジャズを体験しに、と答えたが、テキサスはいまだにわからんという顔をしている。
「日本人が行って楽しいところかなあ。ロスとかのほうがいいんじゃない?」
大きなお世話である。ニューオリンズの空港に飛行機の車輪が着いた時、テキサスの顔を思い出した。しっかり楽しんでやる。
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外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。
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2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…
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