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経産省における人材戦略と取組とは? ~霞が関の中途採用・活躍推進に向けた先駆け事例をご紹介!~(前編)

 ソトナカプロジェクトメンバーの北角理麻です。外資系医療機器メーカー、医療系研究開発を支援する独法を経て、現在は経済産業省で日本企業のアジア進出・現地企業との協業支援などを担当しています。4才児を育てるママでもあります。
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私が中途入省した経産省は、霞が関の中でも特に積極的に中途採用(経産省では「キャリア採用」と呼んでいます)の拡大や、中途採用者の活躍推進にむけて取り組んでいると思います。
そんな経産省の秘書課(一般企業でいうところの人事部)が今、どのような方針のもと、どのような取組を行っているのか!?…人事改革をリードする秘書課の茂木さんに突撃インタビューし、リアルな最新情報をお届けしたいと思います。

茂木 高志さん 経済産業省 大臣官房秘書課 人事企画官
2004年経済産業省入省後、日米通商交渉、国連気候変動枠組み条約交渉(ポスト京都議定書)、石油天然ガス資源外交、中小企業政策(個人保証等中小企業金融、コロナ対策)等に従事。2020年より大臣官房秘書課政策企画委員として、若手職員を中心とした人事評価・任用、採用を担当。2021年に同人事企画官(現職)として、管理職人事、人事制度全般の企画、組織風土改革等を担当。

キャリア採用(中途採用)の拡大など柱とする、画期的な人材戦略を省内に展開!

経済産業省では、経済産業政策局をはじめとする各部局の筆頭課長補佐が大臣官房政策企画委員という役職に就き、各人が所属する部局を超えて、経済産業省全体の政策のあり方や組織運営について議論し、方針を決定しています(政策企画委員の会議体は「大臣官房政策企画委員会(旧称 法令審査委員会)」、通産官僚の姿を描いた小説「官僚たちの夏」にも登場する歴史ある会議体です)。
その大臣官房政策企画委員会での一年間の議論を経て、2022年6月、「大臣官房政策企画委員会決定」として「時代変化に適応した人材戦略」と名付けた文書をとりまとめ、事務次官・大臣官房長の了解も得て、省内全職員向けに打ち出しました。この戦略は、主に以下の4つの柱からなります。

①働きがい向上のためのマネジメント改革
②総括(課室内のとりまとめ業務担当)が持続的に活躍できる環境の整備
③高度・多様な人材の確保(キャリア採用抜本拡大)
④行政官として目指すべき人物像やキャリアパスの具体化・言語化

 まず注目すべきは③です。強烈なスピードで日々変化する経済・産業を対象として質の高い政策の企画立案・実施のプロフェッショナル集団であり続けるため、キャリア採用(中途採用)の拡大を、省全体の人事戦略の柱の一つとして取り上げています。経済産業省はこれまでもキャリア採用(中途採用)に取り組んできましたが、これを更に組織の強みとするための方策を考えるということだそうです。これまでは職員のキャリア形成を秘書課が考えるという「一方通行」の側面を私個人的には感じていたところもありましたが、「流動化」や「双方向」を前提とした戦略になっています。(民間の方からすると当たり前だと思われるかもしれませんが)霞が関の中では本当に画期的だと思います。
 戦略の取りまとめの中心となった秘書課の茂木さんは、「経産省は、そこで働く職員が多くの時間を注ぐ場所であり、その時間は有意義で魅力的なものでなければならないという思いがあります。それを実現するために民間の人事担当の皆様から人材活用の取り組みをヒアリングする中で、経産省を省内外の人材に選ばれる職場に本気で変えていかなければならない、官民ともにそうした激しい競争にあることを強く意識しました。表層的な改革ではなく、省内一体での取組が必要だと考えています。」と熱く語ります。
 その背景には、「人生100年時代」と言われ、1つの組織だけでキャリアを終える人だけではなくなってきている中、キャリアチェンジをして経産省を選び挑戦している職員が、「ソト」視点で組織にもたらす新しい風が職場環境への刺激となること、そして新卒で入省した職員にとっても魅力的な職場の実現につながることへの再認識があります。
 日本のために仕事がしたいという意欲と能力のある挑戦者にとって、魅力的で働きがいのある職場を目指す、力強いメッセージだと思います。

<経済産業省 人材戦略の概要>

2030年までにキャリア採用(中途採用)の水準を「3割程度確保」
人材戦略担当管理職など、課室長級の公募も

 
戦略の内容を少し紹介します。

具体的な数値目標(KPI)として、「2030年までに、年間採用者のうち、キャリア採用(中途採用)の水準を3割程度確保する」と掲げています。3割という水準はクリティカルマス(少数者の存在を組織全体で重視せざるを得なくなる分岐点)と言われており、この目標は野心的と言えます。

また、私たちソトナカプロジェクトが5月に公表した中途採用活用に関する提言では、最も重要かつ実現が難しいと考える「ステージ3」の施策に、「組織変革の原動力として中途採用を積極的に位置づける」ことを盛り込みました。経産省の今回の人材戦略はこうした内容も含んでおり、先進的であると言えます。
 同様に、ステージ3に該当する施策として、民間人材の課室長級(管理職)での公募といった取組も挙げられます民間人材の課室長級の公募は11月8日に以下のサイトでリリースされています。その中でも注目は、大臣官房秘書課の人材戦略担当の課室長級の公募です。省庁では初となる人事担当部局での課室長級での民間人材の募集で、民間の人事のプロの参画を得て、組織の中枢から本気で変わろうとする意気込みと受け取れます。

多様性を活かし、質の高い政策実現する組織変革となるか!

 上記のように、経産省の中途採用は労働市場の流動化やキャリアの多様性を前提とし、「民間等での特定分野の知見や職務経験・人脈を生かし行政官として、組織の政策立案機能をアップデートに寄与する組織の起爆剤」としての期待が寄せられているものと感じます。
 この記事を執筆するにあたり、秘書課の茂木さんにインタビューした際、中途採用者が年々増えていくことで、「ソトから来た人」と「新卒からナカにいる人」と、お互いの強みを活かしつつ、より質の高い政策立案・実施ができる組織へとこれから大きく変革していかなければならないという決意を、私自身感じました。

次回後編では、上記戦略の4本柱に示した各項目の具体化をどのように目指すのか、省内有志によるワーキンググループ(WG)の様子を報告します!


 


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