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ドミニクの映画考察

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虚像のヴィラン

虚像のヴィラン

『ジョーカー』を見て友人に言った言葉は、「これじゃあまりに虚ろだ」という言葉だった。
 ジョーカーというスーパーヴィランについてそう口から出たが、考えを進めるうちになお《虚ろ》がキーワードになってきたように思う。
 ここで頭にちらつくのは「アナと雪の女王」のハンス王子だ。(彼は作中鏡としての役割を担い、誰に対しても《理想の存在》を演じていた。)

アーサーは仮面をつけない。ピエロとして顔に化粧

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《さらざんまい考察③》不穏な第1話と、『ジェイコブズ・ラダー』《ネタバレあり》

《さらざんまい考察③》不穏な第1話と、『ジェイコブズ・ラダー』《ネタバレあり》

・夢/現実の構成・胡蝶の夢

 考察①を書き上げた後、1話の元ネタを発見したので追記しておく。
 それは『ジェイコブス・ラダー』だ。
https://www.youtube.com/watch?v=lbd48CkJcXs

あのサイレントヒルの元ネタとなった怪作だ。私も長らく見たいと思いながら配信サービスで待っていたが全く気配を見せないため、さらざんまいを見た勢いでレンタルしたのだが、まさしくさ

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死刑と人の罪 《感想》「HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話」

みな罪を背負ってる、その罪をだれがどの立場で裁くのか……

みな複雑な胸中を抱えているが、主人公の心に一番寄り添えって見ることが出来た。
己の目の前で起きた事件にもかかわらず、夫婦の代表としては旦那が裁判に立ち、検察は勝つための証拠だけで満足し、犯人の弁護士も同様だ。
目撃者で恐怖を体験し、娘を亡くしたことを7年経っても諦められない主人公が、だ。
彼女が蚊帳の外の自分に耐えられず、娘の携帯を手放せ

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ホラーをホラー足らしめる『現実の“タブー”』

 2017年、ホラー映画のなかで異彩を放ち、話題を攫った一本の映画がアメリカで封切られた。
そう、『ゲット・アウト』(原題:Get Out)だ。

 黒人大統領がうまれ、もうこの社会に差別という問題はないような建前と、度々起こるヘイトクライムという本音。
さらにオバマ大統領が退けば反動のように差別主義者トランプが座に着いた。
その欺瞞というタブーという膿を切り開いてみせたのがこの『ゲット・アウト』

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