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100年の森をつくるような都市デザイン

昨年末に某デベロッパーから関内にある横浜市庁舎跡地の再開発で何か一緒に提案できないかと声をかけてもらった。2020年の新庁舎へ移転にともなう関内の現庁舎に関する公募が出るだろうからというものだ。

(公募前のデベロッパー独自の勝手な構想とはいえ)現庁舎を取り壊す想定で、ピカピカにデザインされた高層ビルのCGパース、平面プランと明日にでも着工できそうな事業企画を見て僕は、どうこれに応えたものかと困惑した。

どうもワクワクしない。デベロッパーへの回答を先送りして、その理由を確かめるためにも現庁舎を視察したり周辺のフィールドワークをしたり、友人の横浜市職員づたいに関係者にヒアリングなどをしてみた。

リサーチを経て出した自分なりの回答は建て替え前提でない計画であれば企画参加したいが、建て替え前提なら参加は辞退。某デベロッパーにもそう伝えた。

現庁舎は特に耐震性も問題なく、充分に用途転用できる建物で経済合理性や利便性などを最優先しなければ、現存建物を利活用しながら新たに導入するプログラムとユニークな事業誘致で地域の活性化に寄与できる。

将来、中長期的には建て替えも必要となってくるかもしれないが、段階的に更新改築していくようなバイオ建築も考えられるだろう。

賃料も知らないので、事業性を担保しながら、いかに持続可能な場にデザインするかは皆目検討ついていなかったが、スクラップ&ビルドで高層ビルを建てるというようなことは、「今後も都市間競争に関内が参戦して、東京や横浜みなとみらいのような高層ビルによる経済刺激策を21世紀も続けます!」という宣言に等しく思える。逆に数年かかる再開発期間に周辺地域の経済地盤沈下を助長するかもしれない。それでいいのだろうか関内という場所は。

一つの高層ビルが、例えば一本の大きな木だとして、土壌や養分が街の営みやリソースだとしたら、大木だけがあるような場所に肥沃な土壌は残るだろうか。大手デベロッパーは大樹を植えてその木の上に多種多様な果実が実ると絵を描くが、それは幻想でしかない。自然界にそんな珍木は存在しないし、豊かな自然環境は多種多様な樹々の下に落ち葉や様々な菌類が混じった土壌があって多様性を生み共存共栄している。これからの都市に必要なのは「寄らば大樹の陰」でなく、100年かけて多様な生命体が育ち共存共栄する明治神宮の森のようなデザインだと思う。この高層ビル案では、それができないと思ったのが辞退の最大の理由だった。(某デベロッパーにこの話はしてないけれど。)

仮に現庁舎が朽ち果てかけた樹木だとしても、その木に寄生する多様な菌を蒔けばいい。菌はスタートアップかもしれないし、アーティストや研究者、エンジニアかもしれない。広義のクリエイターのルツボにしたらいい。その為にはストーリーがいる。歴史がいる。素材や文脈もいる。土壌がいる。(その戯曲づくりがパブリックセクターの役割だと思う。)

さて、デベロッパーの予想通り、横浜市から事業公募が開示された。内容は建て替えでも現存活用でも事業提案次第では、どちらでも良いよというものだ。その割には建て替えを誘発するような情報が優勢だけれど。
公(パブリック)を尊重し過ぎて特別な共(コモン)を失いそうな公募内容だ。自治体の公共は難しい。先月の説明会には沢山のデベロッパーと建築事務所が集まったという。

建て替えありきでない、肥沃な土壌と豊かな森を100年かけてつくる多種多様な植樹と菌や腐葉土を撒くような都市デザインは横浜関内で可能だろうか。(むしろ、これまでやってきたのでないか?)

はたして、そんなチャレンジを一緒にやってみたいという素敵な声がけは近々あるだろうか。

#都市デザイン #横浜 #関内 #建築 #まちづくり #urbanism #layout #loftwork

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