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200年前の一般人を20年前からベンチマークに

菜の花の沖 (著者:司馬 遼太郎)
20年前、祖父が全巻を送ってくれて、初めて読んだ。

江戸時代後期、廻船(=かいせん: 海運による商業)で函館の発展に貢献し、私財で公共事業も行った高田屋嘉兵衛の一生をダイナミックに描く、実話をもとにした歴史小説。

船と海に魅せられた青年が船乗りとして活躍し、自分の船を手に入れ、創意と工夫をもって時代の荒波の中を生き抜いた。

嘉兵衛は、青年期に淡路島の地元を半ば村八分で飛び出し、堺の港の廻船問屋で丁稚奉公から初めて沖船頭になる。(当時でいうとバイトから契約社員だろうか。)

ユニークなターニングポイントは、数本の丸太を縛っただけの筏(いかだ)で紀州から江戸までの冬の太平洋を渡って運んでみせたこと。冬の海は寒いし難破しやすいので、誰もそんな荒業はしない。江戸の人々や船乗りたちを驚かせたという。(=仕事の上での成功体験。)

(仕事としては活躍するも)「自前の船がない」と悩んでいたが、壊れかけの中古の船を手に入れ改修して廻船業を始め、船を増やしながら成長させる。(いわゆる新規事業、独立、起業的なこと)筏で冬の海を渡ったのも、自分の船を手に入れる為だった。

やがて未開発の函館の価値を発見し、自身の資材で函館の港や街の整備もしたという。(いまでいうと民間の社会貢献だろうか。) 晩年は、飛び出した地元の淡路に夫婦で隠居した。(引退、Uターン)

好きな歴史上の人物はと聞かれたら、坂本龍馬や吉田松陰、歴史上の偉人といえば沢山いるけれど、無名の高田屋嘉兵衛を挙げたい。

当然、時代も違うけれど、嘉兵衛をベンチマークに、筏と船と函館をメタファーにして20年間、自分にとっての「筏 / 船」はなにか(そもそも欲しいのか)、「函館」とはなにかを考えてきた。

自身の転機に「この出来事は、嘉兵衞ならどの局面だろうかか?」と自問自答しては、読み返している。いまのところ、少しずつだが船が見えてきた。函館は程遠い。

#推薦図書 #高田屋嘉兵衞 #大人になったものだ

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