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第0章#14_「スープタウンに向かって」(ソーシャルクリエイト部の活動:後編)

「ぼくたちから地域に飛び出していけばいいじゃん」、とはじまった「ソーシャルクリエイト部」の活動、後半です。第0章もついに最終話。きっとここまでのお話のすべてがスープタウンの温かさや優しさや楽しさのベースとなるはず!! スープタウンがみんなの日常になった未来のいつか、このnoteを微笑みながら振り返る日が来ることを願って。

ソーシャルクリエイト部の二枚看板
プルメリアさん(左)と、ルーさん(右)

ルー
――「地域のドラえもん」として、スマイリングがより地域に踏み込んでいく状況をつくるために、2022年から「まごころサポート」にも加盟しました。シニアのちょっとした困りごとを解決する便利屋さんのようなシニア向けサービスです。草刈りしてほしいとか、蜂の巣を退治してほしいとか。認知症のある利用者さんがチャレンジできそうな依頼内容であれば、いっしょに出かけることもあります。
 
プルメリア
――ルーさんの人生もさらに急展開ですよね。夏は本当に草刈りの依頼が多くて、めっちゃめちゃ日焼けして「ルーさん=お坊っちゃん説」も出てましたからね(笑)。
 
ルー
――ぼくは、隣の地域に暮らしてはいますが、20年以上デスクワークをしてきた身、草刈り機なんて使ったことなかったんです。だけど、依頼者のおばあちゃんからすると「草刈りをさせて申し訳ない」という気持ちもあるようで、終わった後には麦茶を出してくれたりして、いろんな話をするんですよね。1時間以上話し込む場合もありました(笑)。

草刈りをする認知症のある利用者さん。
サポートされる側から
サポートする側になるよろこびが生まれる。

どんな方からの依頼が多いですか?

ルー
――ひとり暮らしの方からの依頼が多いですね。家族と住んでいると、誰かがやってくれますから。そこにある問題って、ホントは「草刈り」ではなくて「話し相手が少ないこと」かもしれません。プライベートな空間にあがりこむわけですから、生活状況も見えてきますし、なにより人と人としての関係が深まっていくことを実感しました。
 
プルメリア
――「まごころサポート」は、「ちょっとした困りごと」のご依頼からスタートすることが多いのですが、実はそこから「ちょっと叶えてみたいこと」のご依頼に変化していくのもオモシロいですよ。「誰かと山登りがしてみたい」「旅をしたい」「回転寿司に行きたい」など。「じゃあ、いっしょに行きましょう!」「やってみましょう」とサポートをします。生きる意欲が湧いてきて、「明日が楽しみ」というところまで持っていけたらいいな。

心に残っているエピソードはありますか?

プルメリア
――「部屋から出ないおばあちゃんを何とかしてほしい」という、ご家族からのご依頼がありました。ただ、お家の方と相談し、おばあちゃんのために来たというと嫌がるだろうから、最初は愛犬の餌やりサポートという形でお邪魔しました。何度も通っていくうちに、次第に心を開いてくださり、「家族にも言えないようなことを話せる人がはじめて出来た」とまで。ある時、「昔の職場に行ってみたい」とおっしゃるんですよね。昔、豊田地域の伝統産業であるガラ紡の女工さんをやってらした方で、「じゃあ、近くだから行きましょう」とお連れしたんです。懐かしい職場の人たちにも逢うことができて、始終、笑顔がこぼれていました。この方のように「困った」を解決するだけではなく、「やりたい」が叶うというのは大きな変化です。いまはもうワンちゃんが天国にいっちゃったんですが、ただ「逢いたいから」「話したいから」というシンプルな理由でいい関係が続いています。

プルメリアさんにだんだん心を開いていった、おばあちゃま。
アルバムを開いて昔話をききます。
スープ会議のメンバーであるののさんのところに出かけ
ガラ紡の機会を見学。「わあ、なつかしい」

す、すごいお話ですね。まさにプルメリアさんの人間力が試されるというか・・・他にも、エピソードはありますか?

ルー
――高齢の男性Nさんが「お酒が飲みたいんだ」とおっしゃったことが、スマイリングの人気イベントに発展したという例があります。「ケアスナックかなかな」といいます。これは、ローリエさんから話してもらえますか?

スナックのママになりきり、
ドレッシーにおめかししてお客さまを迎えます。
回を重ねていくうちに
テーブル席も使うほどの賑わいに。
スナックでありながら、
至福のハンドマッサージのサービスも!

ローリエ
――「ケアスナックかなかな」は、月1回オープンする、看護師や介護福祉士がママを務める、65歳以上限定スナック。10人ぐらいまでの予約制で、送迎付き。お酒やおつまみがあるのはもちろん、血圧測定や手のひらマッサージのサービスも(笑)。もともと地域包括の仕事をしている友人が、「高齢者が安心してお酒が飲めるような場があったらいいね~」と話していて、同じころに「まごころサポート」の依頼者のNさんがお酒を飲みたいといってたことを思い出したんですよね。それで、両者をつなげば面白い場が生まれそう!と思ってやってみたんです。ママ役となる介護福祉士の私と、看護師である相方の名前にどちらも「かな」が付いていたので、「ケアスナックかなかな」と命名!
 
プルメリア
――もう1年ぐらい続いているんですが、最近では自主的にママをやりたいという仲間も増えてきました。実は、スマイリングの社員からホスト(男性)も投入したので(笑)、高齢女性の来店もあって賑やかです。「ケアスナックかなかな」の活動はまさに、お酒の好きな高齢男性の一言からはじまったステキな問題解決事例。単発的ではなく、長く続けていけるように楽しんでいます。
 
ガスパッチョ隊長
――「ケアスナックかなかな」は、ローリエさんがママになって、キッチンLABOのココットさんがお料理を担当。プルメリアちゃんが地域のおじいちゃんやおばあちゃんに声をかけてくれて、お客さんが楽しんでくれて、スマイリング側の売り上げにも貢献してくれている。みんなが「良かったね」と思える関係になっている。こんな場を増やしていきたいですね。

「スープ会議」も、ソーシャルクリエイト部のみなさんが先導されながら、運営されているんですよね?

ルー
――ソーシャルクリエイト部は、スープタウン準備室のような側面もありますので、地域のみなさんや、介護福祉に関心のある方に集まってもらって、月1回のペースで「スープ会議」と分科会を開いています。2021年7月に第1回目を開いたんですが、その時、チラシを豊田市の松平・下山地区に全戸配布(約4,500部)したのに申し込み者が3人だったという苦い思い出も(笑)。そこから2年ぐらい経って開催した全体会に大勢の人が集まってくれたのには感動しましたね。

年2回行われる「スープ会議」の全体会。
人が人を呼び、大勢が関心を持ってくれていることに
感無量のルーさん(奥)。
「スープ会議」で出た意見を未来絵図にしたもの。
ルーさんのグラレコの才能が凝縮。

プルメリア
――スープ会議のなかでルーさんが描いた「スープタウンの未来図」の絵、とっても好きです。原点の想いが凝縮されていますよね。
 
ルー
――あれはスープ会議の第3回までに出た意見をまとめたもの。みんなから出た意見をグラレコ(グラフィック・レコーディング)の手法で1枚の絵にまとめました。
(↓↓↓「スープ会議」のお話はこちらから↓↓↓)

ルー
余談ですが・・・実はぼく、つい最近まで絵が描ける人ではなかったんです。グラレコと出会い、とりあえず毎日描いてみようと自分のnoteをつくってそこに投稿し続けたんです。そうして毎日描いていくうちにだんだん上達していきました。自慢じゃないですが、「毎日グラレコ」は487日続きました(笑)

ルー画伯がグラレコに挑戦する前の絵がこちら。
487日間続けた成果が今のルーさんの
グラレコにつながっているんですね!

ソーシャルクリエイト部は、スープタウンのなかでどのような役割を担っていきたいと考えていますか?

ルー
――スープタウンの特徴って、歳を重ねた人でも、障がいがある人でも、いろんな人が同じ場所に集まって、それぞれができることをやるみたいな感じですよね。これまでは、キッチンLABOとデイサービスが物理的に離れていたんです(車で10~15分)。スープタウンが完成するとそれがひとつに合わさるので、スマイリングが高齢者から子ども、障がいがある人もどんな人でも自分にできることで支え合うという理想的な環境ができあがると思います。松平・下山地区の方にスープタウンに気軽に来てもらったり、スープタウンの住人たちも地域に出ていくなど。ソーシャルクリエイト部がその橋渡し役になっていけたら、と思います。

プルメリア
――私は、福祉で支えきれないところまで手を差しのべ、誰一人とりこぼさないような社会をつくれたらいいなと日ごろから考えています。スマイリングの職員みんなの基本的な思いは共通してるから、コミュニケーションモンスターとして人と関わることを積極的に繰りかえしていきます。
 
隊長
――スープタウンは最終地点ではありません。ここで自分たちの力をもっと高めて、山の方(下山地区のもっと奥地)に出ていくためのベース基地、という位置づけです。スープタウンの建物ができたら、多くの人が集まってくるだろうし、課題も見つけやすくなる。だけど、まだまだぼくらのやるべきことはあるはすで。プルメリアちゃんなんか特に、スープタウンが完成してもあの場所にほとんどいないぐらい動き回ってる人になっていくでしょうね(笑)。

プルメリア
――夢見る夢子ちゃんとしていくらでも動き回ります!

デイサービス スマイリング松平店の目の前の敷地。
ここにスープタウンが立ちあがる。
そこはゴールではなく、未来に向かう大きなスタート。

第0章「スープがスープになるまでのお話」はこれでおしまい。あらゆるご縁を大事にしながら、「できないではなく、やれる方法を探そう」というガスパッチョ隊長と、「やるなら楽しくやろう」ローリエ女史、おふたりの一貫したマインドから、さまざまな物語が生まれてきました。まだまだ書ききれないことばかり。続きはぜひスープタウンで語り合いましょう。



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