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今年読んで面白かった本3選

「あなたにとって今年はどんな年でしたか?」と聞かれれば本をたくさん読んだ年だと間違いなく答えると思う。何せ大学の授業をすっとばしてずっと図書館にこもっていたんだから。おかげさまで一留はほぼ確定になりました。そういう事はさておき、そんなとち狂った様に本を読みまくっていた僕がおすすめする本を紹介したいと思います。本当はもっとあるんですけど、3選に絞りました。

1.どくとるマンボウ青春記(北杜夫)

タイトルの通り著者の青春時代の回想記です。著者の北杜夫が学生だった時代は戦中から戦後という激動の時代でした。そんな中で学生生活を送る高校生達の愉快な日常が綴られています。戦争中の状況について普通の人の視点で書かれているのが良かったです。やはり米をどんぶりで食べるのも厳しいくらい苦労してた様です。因みに北杜夫の父は斎藤茂吉なので知り合いを頼って何とか生活してたそうです。この作品で印象に残っているのは教師と生徒の圧倒的な距離の近さです。著者が物理のテストで頭を悩ました挙句最終的に解答欄に詩を書き始め、それが見事だったため教師が点をあげてしまうという自由っぷり。いい加減でかつ、厳しい時勢だったからこその温かい人間関係がこの本には描かれています。

2.脳科学は宗教を解明できるか(芦名定道)

タイトルからして面白そうな本ですが、この本は神学、医学、宗教、哲学の視点から現在の脳科学を再考するという趣旨の本です。なので、この本は色んな分野の大学教授の文章をオムニバス形式で編集しています。この手の本って文系的な視点と理系的な視点どちらかに偏りがちですがこの本は理系出身の教授もいるのでバランスが良いです(やや文系多めか。因みに第1章の芦名教授は学士は理系で途中から神学に転向している)。少しネタバレするとまだまだ脳科学は脳の働きを世間が思うより理解しているとは言えないという結論が多いです。この本は約10年前に出版された本なので、新版が出たりしたら面白いなと思ったりしました。

3.明治・父・アメリカ(星新一)

星新一と言えば言わずと知れたショートショートの名手であり日本のSF黎明期を切り拓いた人物だと知られていますが、この作品はノンフィクションです。この作品の主人公は星一。星新一の父でありかつて東洋の製薬王と評されていた人物です。そんな星一の出生は田舎の名士の家庭です。そこからアメリカのコロンビア大学に留学し製薬会社を起業するまでのいわゆる立身出世もののストーリーです。この本のキーポイントはタイトルにもある通り「明治」という時代性です。当時世界から見れば弱小だった日本がどこまでも上昇しようとする向上心がこの本から読み取れます。という事でこの本には伊藤博文や野口英世など明治の偉人と星一の絡みが書かれてあるのですがそれがめちゃくちゃ面白いです。アメリカで苦労を重ね、ようやく立派になって地元に凱旋する星一を見る家族の姿は涙ものです。普段はいい意味で淡々と書く星新一の生き生きとした文章がこの本では見られます。個人的には最後のスッとした終わり方が好きすぎるから是非注目して欲しい。



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