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「人と違うことをしようとする勇気。近代科学の黎明期に生きた女の子の挑戦~『ダーウィンと出会った夏』~」【YA⑲】

『ダーウィンと出会った夏』ジャクリーン・ケリー 著 斎藤 倫子 訳 (ほるぷ出版)
                                                                                                 2016.9.24読了

1899年のうだるような暑い夏のことです。
アメリカ・テキサス州の街で綿花農場を営む家で、祖父・両親・6人の男兄弟の中の真ん中でたったひとりの娘として暮らすキャルパーニア。
 
何不自由ない暮らしで、母はキャルパーニアをいずれは社交界にデビューさせようとしていました。
当時の女性の幸せとして、ピアノ・家事全般・料理・裁縫などを身に着け、申し分ない女性として申し分ない紳士から選んでもらうために自分を磨いていき、そして嫁いで家と主と家族を守る使命を負って生きていくのです…。
 
でもキャルパーニアはある日見つけてしまいました。
そんな生き方より夢中になれることを。
苦手な家事やピアノなんかより、もっと胸がワクワクして打ち込めるものを。
 
ちょっと風変わりな、すでに現役を引退している祖父は、家の裏手の作業場で何やら実験をしているし、祖父の書斎には変な生き物や昆虫標本やたくさんの書物でいっぱい。
でもキャルパーニアは、そんな祖父と出かけて、自然の中で生きる様々な虫や動物や植物と触れ合うことのほうが楽しくて仕方がありません。
 
そんな中で、ふたりはある大発見をするのです…。
 
 
 
「女性は大学に行って、物事を研究したりしてはいけないの?」
「家事より、科学に興味を持ってはだめなの?」
 
学問に生きる女性は、まだ当時としては珍しかった時代です。
南北戦争が終わってまだ間もない頃の、裕福なアメリカの家庭環境や、まだ人種差別が普通のことだった時代がよく描かれています。
そして、ダーウィンが提唱した「種の起源」が定説になる前の、人間は神が作ったということをみんなが信じて疑わなかった時代の物語です。
 
科学に興味をもってしまった女の子が、周りと違うことをするという困難な状況にどう立ち向かっていくでしょう。
キャルバーニアが科学と出会い、どんどんその面白さにのめりこんでいく様が、当時はほとんどいなかった固定観念に囚われない新しい女性の姿として映ります。
現在新しいことにチャレンジしていく女性たちを、応援してくれるだろう本書。
 
続編も出ているのですが、私は未読のまま。そちらも読んでみたいと思います。


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