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女子バレーボール界が変わるかも!?~アメリカ女子バレーボール界について~

パリ五輪開幕まで約4か月、少しずつメディアのスポーツ報道も五輪競技を報道する機会が増え、徐々に盛り上がりつつあります。日本でも様々な競技が注目される中、男女ともにメダルの期待がかかる競技がバレーボールです。以前より、各国のプロリーグの制度や、アジアの盛り上がりについて取り上げてきましたが、今回は世界ランキング2位という強豪で、2024年4月から女子プロリーグが設立され、今後さらなる盛り上がりが予想されるアメリカ女子バレーボール事情についてご紹介したいと思います。


アメリカ女子バレーボール界の現状について

アメリカ女子バレーボール代表は、世界ランキング2位と女子バレーボール界を牽引する存在です。2008年北京五輪での銀メダル以降、4大会連続でメダルを獲得しており、東京五輪では金メダルを獲得しています。

しかしながら、2020年までアメリカ国内にはプロリーグとして確立されたものがなく、代表選手も他国のリーグでプレーすることを余儀なくされていました。
東京五輪で活躍した選手達の中には日本のVリーグでプレーをした選手もおり、FIVBワールドカップバレーボール2019の女子最優秀選手にも選ばれた、アンドレア・ドルーズ選手は日本のJTマーヴェラスに所属していました。(※2022年に退団)

アメリカ代表の選手を見てみると、大学まではアメリカ国内でプレーし、その後は各国のプロリーグで活躍するということが、今までの流れのようです。実際に2021年に開催された東京五輪で金メダルを獲得した12名の選手達の内、アメリカ国内でプレーをしている選手は1名のみでした。

2021年東京五輪アメリカ女子バレーボール代表の一覧 ※筆者作成

今、大注目の大学女子バレーボール

上記のように東京五輪時のアメリカ女子代表選手は全てアメリカの大学出身で、アメリカでの大学スポーツとしてのバレーボール人気は非常に高く、環境も整っています。

以前の記事でもご紹介した通り、ネブラスカ大学の試合ではフットボールスタジアムで試合を行い、92,003名の観客を集めて話題となりました。

また、昨年12月に開催されたNCAA女子バレーボールチャンピオンシップでは、新たな2つの記録が生まれ、その他、平均視聴者数や、女性視聴者数も増加しています。

  • 屋内試合における最高来場者数(19,727人)【新記録】

  • 大学バレーボール史上最高視聴数(平均視聴者数170万人)【新記録】

  • 平均視聴者数は前年の22年から115%増加

  • 視聴者数の最高人数は210万人

  • 女性視聴者は22年から151%増加

上記のNCAA女子バレーボールチャンピオンシップはフロリダ州タンパにあるAmalie Arenaで試合が開催され、テキサス大学が強豪ネブラスカ大学を破り2連覇を達成した試合でした。さらに、準決勝の試合でも19,598人が観戦に訪れており、一過性の盛り上がりではなくなってきています。
また、今回のチャンピオンシップは、大学女子バレーボールとして初めてアメリカのテレビ局ABC(American Broadcasting Company)で放送されました。当日はNFLの試合もありましたが、決勝は平均170万人が視聴、準決勝も平均110万人と、最も視聴された試合となりました。

このように大学スポーツでは、以前より注目度が高まり、女子バレーボールの価値が上昇していることが伺えます。

アメリカの女子プロバレーボールリーグ

アメリカのプロバレーボールリーグの歴史を辿ると、1987年にMajor League Volleyball (MLV) が設立されています。当時のアメリカ代表選手やNCAAで活躍した選手など国内の有望な選手が参加し、6チーム、約50名の選手が参加していました。しかしながら財政的な問題もあり、3シーズン目の途中で解散となります。

MLVが1989年に解散して以降、プロリーグは発足していませんでしたが、ソフトボールやバスケットボールなど様々な競技の女子スポーツリーグを運営するAthletes Unlimitedが、2021年にバレーボールリーグを発足しました。

Athletes Unlimited

Athletes Unlimitedの特徴は、選手が所属するチームが固定されておらず、全5週間の開催期間の中、選手の成績に応じて、毎週チームを切り替えてシーズンを過ごすことです。
シーズンの流れとしては、
・選手の成績に対するポイント、加えてUnlimited club(ゲームMVPや様々なイベントに参加することができるファン向けのメンバーシッププログラム)の会員による投票で週間の個人ポイントを算出。
・ポイント獲得者の上位4名が次週の試合のキャプテンに任命され、ドラフトにより、チームを編成。
・結成されたチームで次の試合に臨み、試合終了後に同様の流れで試合を実施。
最終的にはチームの優勝ではなく、選手個人のポイント獲得により、優勝者が決定する流れになります。チームスポーツながら個人の成績が重要となる、新たなプロスポーツとして注目されています。

Athletes Unlimitedは女性アスリートの活躍の場を提供することや、選手を基点としたコミュニティを形成することを大切にしています。給与については、基本給の10,000ドルに加えてパフォーマンスに応じたボーナスが支給されます。現時点では他競技のプロリーグと比較しても報酬は少ないですが、ESPN等がメディアとして契約を更新し、Nikeをはじめ、多くのパートナーも契約しており、これからの発展が注目されます。
しかしながら、現時点ではこのリーグでプレーすることだけではプロバレーボール選手として活動をしていくことは難しく、44名の在籍している選手も他の期間は他リーグでプレーをしている状況です。

2024年から始まった2つの女子バレーボール新リーグ

このような環境の中、アメリカ女子バレーボール界では2つの新リーグが2024年からシーズンを開始します。前述の通り、大学スポーツで活躍した選手も自国でのプロ選手としての活動ができる可能性が出てきました。
また、大学の女子バレーボールの観客数も増えていることはもちろん、バレーボールをプレーする子供達、特に女子高校生や、女子大学生では最も人気のあるチームスポーツとされており、アメリカバレーボール協会の会員数も22-23シーズンでは前年比9.6%増加し、408,000人まで増えています。

League One Volleyball(LOVB)

LOVBは2019年に創設され、2024年11月からシーズンを開始します。日本のS-V.LEAGUEと同様の開催時期になり、パリ五輪からの熱狂を引き継いでリーグが開幕することが予想されます。
LOVBは参加6チーム、約80名の選手が参加してシーズンをスタートし、各都市を巡業するような形で試合を実施していく予定です。
特徴的なのは、リーグとしても明言している育成理念です。LOVBのホームページではバレーボールの未来を再考することを掲げており、各州のバレーボールクラブとの連携を強化しています。

リーグとしてのコンテンツ力強化はもちろんのこと、将来を見据えたコンセプトや具体的な取り組みは非常に共感できる内容です。プレイヤーだけでなく、保護者やコーチへのプログラムも提供しており、将来のアメリカバレーボールがより強化されていくことが予想されます。資金調達も順調に進んでいるようで、2023年9月のSports Business Journalの記事によると、総額で6,000万ドルの調達を完了しており、選手や未来への投資準備が進められています。

Pro Volleyball Federation (PVF)

もう一つ、既にシーズンを開幕している新リーグがPro Volleyball Federation (PVF)です。PVFは2024年1月に開幕し、5月のチャンピオンシップを経てシーズンを終えるリーグ戦です。現在は7チームで開催されており、2025年からはこの7チームに加えて、ダラス、インディアナポリス、カンザスシティの3チームが参加する予定となっています。また、パートナーもスポルディングなどのスポーツ用品メーカーが参画しており、CBSが中継する体制が組まれています。


LOVBと対照的なのは、リーグとして在籍する選手に対するコミットを明言していることです。選手ファーストが公式サイトでも記載されています。

・選手が商品であること
・選手を正しく活用すること
・選手がプロ選手として生活ができること

Pro Volleyball Federation:IT'S ALL ABOUTTHE PLAYERS

今まではバレーボールのプロ選手として生活できていなかった環境を変えようとするリーグとしての強いメッセージが伺えます。

LOVBと違い資金調達の状況までは確認できていませんが、継続性があれば、プロリーグとしての規模はアメリカ史上でNO.1になる可能性があると思います。

まとめ

これまで女子バレーボール界のリーグとしてはトルコ、イタリア、日本を中心に展開されていました。しかしながら、スポーツ大国であるアメリカでも女子バレーボールのプロ化が進んでいることは、今後より注目度が増していくと思います。特に日本のS-V.LEAGUEが世界最高峰のリーグを作って行く上では、アメリカの選手にも日本に来てもらう必要性があるため、報酬や環境を発展させることが求められます。

実際に東京五輪のアメリカ代表選手の現在の所属チームを確認すると、12名の内、6名がLOVBに所属することが決定しており、2024-25シーズンからの開幕に備えています。


2021年東京五輪アメリカ女子バレーボール代表の現在の活動状況 ※筆者作成

アメリカ国内に3つのリーグが存在することの継続性に対して少し疑問点は残りますが、パリ五輪を経て、今後女子バレーボール界がどのように進んでいくのか、引き続き、注目していきたいと思います!


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