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他人の入学式に行った話

本当に何を言っているのかわからないと思うが、私も何を言っているのかわかっていない。

これから、訳のわからないことが頻発する。
事から数ヶ月経った今の私でも消化不良なくらいだ。

これは、今年の3月4月のこと。

高校進学と同時にこちらへ引っ越してくる後輩さんがいた。
え〜、じゃあ、会うか?いつにしようか。
と、言う話をしていた時のこと。

「じゃあ、先輩の入学式行く。」

となったらしい。
何を言っているのかわからないと思うが、こうなったらしい。
この時点でまだ私は会話の中にいない。

場面は変わってTwitterのスペースにて、その後輩さんと話していた先輩がいた。スペースに入室。
ホストをしていたのはその後輩さんだった。
傍聴している私に気がついた先輩に「お前スピーカー上がってこいよ。」と言われたので人見知り私頑張りました。
「初めまして〜…」

「えっ…!?かわいい…。」

自慢ではないが声を褒めてもらえたようだった。
そしてなぜか発言のたびにかわいいの連呼が始まり、会話が成り立たなくなってきたので、先輩が切り上げて「そういえばこいつ俺の入学式来るって言ってんねん笑」という一連の流れを聞かせてもらった。

そうして道連れを喰らった。

もう一人道連れを喰らった子がいる。
後輩さんの同級生だ。Twitterの投稿にて。

「入学式行く。」と言った後輩さん。
もう一人の後輩さんは自分たちの入学式だと完全に思い込んでいたようで、後から「え?どう言うこと?この高校の卒業生の大学生になる先輩の入学式に行くってこと?」と、混乱していた。
当たり前だ。

しかしなぜかその後輩さんは行く気満々でわくわくしていた。
「ほんまに無理せんでええねんで。知らん人と会うようなもんやし。」と別日の通話中2人で宥めても「大丈夫です!行きます!楽しそうですし!」と言っていた。

ここにまとも枠はいないのだろうか…?と思ったことを覚えている。

迎えた当日、流石に入学式には行けないので、大学前で待ち合わせしてお昼を食べようと言うことになった。

しかし、まさかの言い出しっぺが前日にダウン。
胃腸炎らしい。
引っ越しなどで疲れが溜まっていたのだろう。
ゆっくり休んでほしい。

と言うことは、ほぼなんのつながりもない人間が3人会うんですか…?
怖すぎる。
先輩には一度会ったことがあるけれど、もう半年近く前だ。

駅で待ち合わせした後輩さんは小柄で可愛かった。
前日の夜に「折角なので制服で行きたいんですけど一緒に着ませんか?」と聞かれたのでオーケーしてよかった。
おかげで制服が目印になり、スムーズに合流できた。

可愛かったけれど、頼もしかった。
乗り換えが不安だとのことで、乗り換え前の駅の改札まで迎えに行ったのに、私よりスムーズに乗り換えをする。
私は駅から駅へ行くのは得意だけれど、アプリを何度確認しても「この電車であっているのだろうか?」と考えていると不安で中々乗れない。
毎度駅員さんや車掌さんに聞いてしまう。

「この電車ですね!」と言われたので「そうっぽいね!」とか適当言いながら乗った。

不甲斐ないなぁと思いながら電車に揺られ、「4月とはいえど、もう陽は暑いですね。」なんて話をしながら最寄駅で降りて、大学まで歩き、気持ちばかりで無いも同然の工事現場の柵の日陰で先輩を待った。

「緊張してきた…」
「大丈夫、来たら言うね。ガタイいいからすぐわかると思う。」

そんなこんなで合流。
半年ぶりに会った先輩は前日、オールで遊んでいたらしく目が充血していた。
お前絶対入学式中寝てただろ。何も聞いてなかっただろ。って顔をしてた。

移動中、自転車を押す先輩の後ろを2人でついて歩く。
「2人とも優しそうな人で安心しました、怖い人だったらどうしようかと…」
帰るまで何度か私にだけ小声で伝えてくる後輩さんが可愛かった。

大学近くのファミレスへ行って、「ほら、好きなもん頼み。」と、相変わらずの貫禄で言われた。
入学式へ来て、こちらが祝うのかと思いきや、奢られるのだ。
そう、これも、胃腸炎後輩との約束だった。

しかし私は人前で食事をするのが苦手なので「薬を飲むためにもう昼食を済ませてきてしまった。」と、適当な言い訳をつけて死ぬほどノリの悪い人間になってしまった。
後輩さんには悪かったな、と思うけれど、先輩は気にするような人でもないし、「よっしゃ飛ぶ金減った〜」と喜んでいた。

「ほら、これでもやっとき。」と、料理が来るまで渡された某ファミレス名物の間違いさがしを本気でやった。
こんなの自力で解ける人いんのかよ。と思いながら8個まではノーヒントで見つかって、結構盛り上がった。

胃腸炎後輩さんに通話をかけると即出た。
かけたのは先輩のくせに「お前寝とけよ!」と言う。
胃腸炎後輩は弱々しい声で「会った時は焼肉奢ってもらう。」と、まだ言っていた。

見習いたくなるほどの、粘り強さですね。

「デザートとかいらんの。」と言ってきた先輩。
メニューを眺めながら「半分こしませんか…!」と言う後輩さん。

可愛すぎる泣 します泣

一口も食べていないので気を遣ってくれたのだろうか。
ティラミスを半分こした。

申し訳ないのでドリンクはみんなの分を淹れに行った。

そのあと、今度は4人で集まれたらいいね〜、とか。
お前レポート爆速で進めすぎて寝てないだろ、とか。
大学ってどんくらい人いたの?とか。
他愛のない話をして駐輪場で解散することにした。

これ以上長居したら先輩はママンに早くしろと怒られるらしい。
入学式だったんだから、当たり前かもしれない。

駐輪場で「2人本好きなんやったらここ本屋あるから見て帰りや。話し合うやろ。あとお前は後輩さん乗り換えの駅まで送ったりや。じゃ。」と言われたので、了解した。
またまたここはお前の地元か、実家か、私たちの親か、と言わんばかりの貫禄だ。

後輩さんは本人には言えないようだったけれど、「家族以外の人に奢ってもらうのって初めてで、嬉しいです!なんかわくわくしますね!」とその後もずっとわくわくしていて、「わくわく」が全身から溢れ出ていてかわいかった。
犬が散歩の時に尻尾をブンブン振っているみたいだ。

本屋さんでは普段あまり漫画を読まない私におすすめを教えてくれたり、逆に私が最近読んだ小説を教えたり、これ話題ですよね〜って共有しあったり。
店内にある雑貨の細かいパズルやミニチュアを見て感動したりもした。

私は暇なので、乗り換えの駅でも折角なので降りて外に出た。

後輩さんはこのあとバイトらしい。
時間もまだ結構あるからと、コンビニで悩んだ末にパンではなく腹持ちの良いおにぎりを2つ買い、1つ食べながら路上ベーシストを見物した。

生憎小銭が無かったので40分ほどかっこいい演奏を聞かせてもらったのにも関わらず何も渡すことができなくて申し訳なかったのだが、後輩さんは「どうしよう、え〜、どうしようかな…」と悩んだ末緊張の中ベーシストの目の前にある各種snsが書かれたボードを写真に収めていた。

後輩さんはギターをしているという。
楽器や演奏を「すごい、すごい」と眺めていた。

私は「海外の人って日本人よりも結構投げ銭するんだなぁ…チップの文化があるからか…しかも知らない音楽のはずなのに適度な合いの手まで入れてノリノリやな…」とか考えながら人を眺めていた。

おにぎりを食べ終わった後「歯に海苔ついてないですか?手鏡忘れちゃって。」と、人差し指を両端において口を「い」の形にするどこまでもかわいい後輩さんだった。

バイトに来たのにバイト先がどっちの方向へ進めばあるのか悩んでいるのも心配になったけれど可愛かった。

p.s.
先輩に奢ってもらうだけでは流石に申し訳ないので各自プレゼントを渡した。
人にプレゼントを選ぶのって難しいよね、と帰りの電車で話していると「シャーペン渡したけど、大丈夫かな…」と、書き心地を心配しはじめたのも可愛かった。

後日先輩に誘われた通話で「心配してたから今度使いやすかったとかなんか言っといたってや」と、お節介だけど言った。
「わかった、多分あの子気にしいやからな。」と、察しの早い先輩。

「プレゼントありがとう〜大事に使うね〜」のインスタのストーリーの後日、「もらったシャーペン使いやす。」と、わかりやすすぎるストーリーが上がってて笑った。
不器用だけれど優しい。

別の通話でも先輩は感謝や感想を直接伝えていて、後輩さんは「よかった〜!」と安心していた。
けれど先輩は文具に詳しく無いのでもっと感想を伝えたいのにうまく言えないようだった。

横から「あれ、低重心やからな。」と言うと「そう!低重心!」
「デザインもシンプルで」と言うと「そう!シンプルやからな、気が散らへんねん!」と、私の言ったことをオウムのように繰り返していて面白かった。

今でも月1くらいで「勉強してますよ」感のある参考書やらプリントやらが散らかっているストーリーの片隅に映り込んでいるのが優しくて温かい。そして不器用さが面白い。

「やっぱりリベンジするなら先輩の成人式か卒業式かな〜」と、胃腸炎後輩がしばらくの間言っていたのも面白かった。

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