見出し画像

新作落語の魅力を番組Pがご紹介【スカパー!新作落語】


今は新作、いつかは古典――。

未来の”古典”を目指して、若手落語家が自ら生み出した”新作・改作落語”を、新作落語レジェンドの前で披露するバラエティ番組、「スカパー!落語 RAKUGO★新作ルーキーズ」

10月1日に第1弾、そして先日11月1日に第2弾の配信が開始された本番組の企画・プロデューサーを務め、プライベートでも大の落語好きでもある杉原さんに、番組の企画に至ったきっかけや収録での裏話、そしてご自身の落語遍歴をたっぷりと伺いました。



落語にハマったきっかけ


―「スカパー!落語 RAKUGO★新作ルーキーズ」の企画・プロデュースを務める杉原さんご自身も落語がお好きと伺いましたが、好きになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
私のまわりに落語がすごく好きな友人たちのグループがあるんですが、その中でも特に落語を聞きにいっているお2方は、もうね、ほとんど毎日落語を聞きに行っているんですよ(笑)

―「ご飯を外に食べに行く」みたいな感覚で落語に行かれている方々なんですね!
そうなんです。毎日どこかしらの落語会や寄席に聞きに行っていて、週末はお目当ての師匠の昼の会を見た後に、移動して夜またその師匠の会に行くとか(笑)

―すごい! 師匠について行ってる(笑)
そうなんです。その落語好きのグループで落語の師匠方を招いて落語会を開くことがあるのですが、 その会のお手伝いをしたり、いろんな落語会に連れていってもらったりするようになって、自分の好きな噺家さんがどんなタイプか、『この落語会の顔付けは面白い!』っていうのがだんだん分かるようになってきて、自分でチケット取って見に行ったりするようになりました。

―そんななかで今回の番組の企画に至った経緯としては…?
落語で何か企画したいなぁとぼんやりかんがえていて、新作落語好きの友人に色々相談していたんですが、ふとしたタイミングで、 “東京だと寄席もあるし、落語会が定期的にあるから新作落語を聞く機会が多いけど、地方だと新作の師匠でも、新作落語をかけず、あえて古典落語をかけることもあるんだよ” って聞いてびっくりしちゃって!

もしかしたら、地方にいる新作落語ファンは、実はあんまり新作落語に触れる機会がなくて寂しいのかもしれないと思って。
新作落語に特化した番組ってスカパー!のプラットフォーム上にもあんまりないし、ほかの配信サービスとかテレビでもそんなに見ないなと思って。
それが新作落語の番組を作りたい!と思ったきっかけです。

新作落語と古典落語の違いは?


―杉原さんが「新作落語」の魅力にハマったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
古典落語っていうのは、江戸時代〜昭和時代にかけて作られた噺で、今もその噺を落語家さんが語り続けているものになります。それに対して新作落語は戦後から現代、そして今も日々新しく作られる噺を指します。
古典落語って、何回も聞いてるんだけどここが前に聞いたときよりもちょっとエピソードが増えてる!とか、この師匠はこういうストーリーの展開なんだ、みたいな、『流れやオチが分かっているからこその面白さ』があるんだけど、新作落語は「どこに連れていかれるか分からないジェットコースターに目隠しして乗ってる」みたいな感覚があって (笑)

―たしかに、どこに面白いポイントがあるか分からない状態ですもんね!
私の場合は、落語ファン歴が浅くて、初めて聞く話がほとんどなので余計にそうですね。
しかも、落語ってお客さんそれぞれの想像力で頭の中にイメージを浮かべてもらう演芸だから、頭の中に絶対に“映像化できない映像”が出来上がるんですよね(笑) 
頭の中って自由だから、そういう映像が平気でできちゃう。その“非日常”とか、“非合理さ”とか、説明のつかない面白さが癖になるんですよね。
ただ、語を聞くのってかなり集中力が必要で、聞き終わったあとは「結構、運動したな」みたいな…

―「頭、汗かいたな」みたいな(笑)
そうそう(笑) 
だから、毎日落語聞ける人って本当に頭がいいし、体力あるなと思います!

―他のこと考えてたり、ぼーっとしてたらついていけなくなっちゃいますもんね!
そう!ついていけなくなっちゃう! 
新作は特に、筋をきちんと追ってかないと「なんでこれこうなったんだっけ」ってところがわからなくなっちゃうから、結構集中力つかうし、想像力もつかうし、なかなかにバテます(笑)

―それぞれ一人一人の想像力にかかっているのは落語ならではですよね。
そうなんです。
だからみんなそれぞれ頭の中に描いてるイメージが違うだろうし、人によって面白いなって思うポイントが違うはずなんだけど、みんなが笑うところが一緒だったりすると一体感が生まれて。
「みんなも、ここ面白いって思ってるんだ!」っていう“ライブ感”がたまらないんですよね。

国立演芸場に赴く杉原さん
国立演芸場で開催される、春風亭一之輔師匠の「真一文字の会」は、月一回のお楽しみです。


―そこは、たしかに新作落語ならではの魅力ですね。
先ほど『この落語会は絶対面白い』が分かるようになってきたと伺いましたが、どんな時に『面白そう!』と思われるんですか?
出演される師匠方の組み合わせですかね。
鈴本演芸場で新作の師匠がトリを取るときに、新作落語の師匠方の間に、古典の師匠が入っていたりすると、何かが起きそうな予感がします(笑)

そして、林家彦いち師匠、三遊亭白鳥師匠(左記2名はルーキーズに出演)、柳家喬太郎師匠(新作古典★オールスターズに出演)、春風亭昇太さんの4人でやっている落語ユニット「SWA」の噺家さんがみんな好きで。
前回とは違うことをやって、とにかくお客さんを楽しませたい!と攻めてる姿がとてもかっこいいし、奇想天外なストーリーが毎回面白いんです。
何気ない日常で事件が起こって、どうなっちゃうんだろうとドキドキしつつ、ゲラゲラ笑って、最後ほっこりしたり、ほろりと泣かされる…みたいな話が好きです。

―落語のオチのじんわりとくる感じ、わかります。
笑って帰るその帰り道が、温泉につかった後みたいに感じるんですよね(笑)

―温泉!わかりやすいです!(笑) 
先ほど富山に行かれたとおっしゃっておりましたが、遠征でも落語を見に行かれているんですね。
そうですね。11月に毎年、円楽師匠がプロデュースする、「博多・天神落語まつり」っていう“フェス”があるんですよ!(笑)

―”フェス”ですか!それはもう一大イベントという感じなんですか?
一大イベント!!博多市内のホールそれぞれで昼も夜も公演が開かれるから、好きな噺家さんが出るところはチケットが争奪戦なんです。

―お目当ての回のチケットはとれましたか?(取材時はイベント開催前)
全部取れました!(笑)
とはいっても、私は3年前に1回行けたきりで、今年はまだ2回目ですけど。

―では前回行けたときと今回では、好きな噺家さんも増えて見方とか回り方も変わっていそうですね!
そうですね。
聴けば聴くほど、いろんな落語家さんにハマってしまって推しがどんどん増えるので、どの回に行くか選ぶのが本当に大変です。
初めての博多天神落語まつりはまだまだわからないことばっかりでした(笑) 噺家さん同士でいじりあったりするときに、出てくる噺家さんの名前がわからなくて「誰の事を言ってるのかな?」と分からないまま、なんとなく笑ってました(笑) 

―そうですよね(笑)
でも、遠征しなくても、落語家さんはご飯屋さんでやっていたりもしていますよ。

―え!演芸場などの会場だけでやっているかと思っていましたが、飲食店などでも開かれてるんですね!
そうなんです。
三遊亭わん丈さんの会に初めて行ったときは、高円寺のクラフトビールの蔵でした。桂宮治さんは、笑点メンバーになった今でも八百屋さんの2階のカフェで落語会をやっているみたいです。

―そうなんですね!たしかに、空間さえあれば落語会は開けますよね。
そうそう。
座布団と、ちょっと目線が高くなる高座さえあれば(笑) だから、意外と近場でもやってたりするんですよね。

―そういうニッチな場所での公演情報って、どこで情報を仕入れられているんですか?
噺家さんたちがTwitterで「ここで今度やります」を発信していたりもするから、そういう情報を追ったりとか、会場においてあるチラシとかですかね。好きな人を1人見つけて、くまなく見ていくとそういう情報にたどり着くんですよね。あとは落語好きな友人におすすめしてもらって行くことが一番多いです。持つべきものは落語ファンの友達!


―なんだか、落語って「沼」ですね!(笑)
本当に沼!!!!(笑) 

―一回ハマるとそこから派生して。
そう。しかも、近くで会えますしね。私は絶対話しかけられないけど(笑)

スカパー!の新作落語


―さて、「RAKUGO★新作ルーキーズ」にお話を戻してしまいますが、今回全3回の収録を終えていかがでしたか?
「RAKUGO★新作ルーキーズ」では、ご意見番の師匠が、3人の若手の落語を客席から見るのですが、普段は噺家さんって別の演者さんの落語を客席から聞くのはご法度なんです。
今回は番組ということで特別に客席から見てもらいました。だから若手の落語家さんたちも緊張していたと思うんだけど…。

―普段は絶対にない構図ですもんね。
そう!絶対ない!だから私も緊張していました。
収録の時、私は三遊亭白鳥師匠(#1は“ご意見番”として三遊亭白鳥師匠がご出演)の後ろにずっといたから、どんな表情で見ていらしたのかわからなかったのですが、
終わった後、昔昔亭昇さんに「すごく緊張しながらチラッと師匠をみたら、笑顔で見てくれてた」って聞いて、これから新作落語の未来を担う人を、師匠方が育てようとしている心意気に触れた気がして私は泣いてしまいました(笑) 
最後に「ベストルーキーズ賞」を白鳥師匠から授与してもらうときも、賞を授与する相手の選び方に師匠の“未来へ託すメッセージ”が込められているのを感じて、白鳥師匠って本当に落語がめちゃくちゃ面白くてプレイヤーとしてもすごいんだけど、若手の落語家を「育てる」っていう一面も垣間見えてジーンときてしまいました。

―「新作落語」という文化を背負っていらっしゃいますね。
そうですね。
よく白鳥師匠が「新作派って肩身が狭い思いをしてきました。」とおっしゃっていて。
昔は寄席で新作落語をかけると、お客さんに「ちゃんと落語やれ!」って怒られたり、厳しい言葉をかけられたりしたそうで。
それでも、自分が好きな落語を信じてやってきた方で。だからこそ、余計に新作落語にチャレンジする若手を育てたいっていう気持ちがあるんじゃないでしょうか。
今、新作落語にフィーチャーする番組が少ないからなのか、師匠方に『いい企画だね』って言ってもらって、手ごたえを感じています。

―たくさんの人に見ていただけたら嬉しいですね。
そして12月には、リアルのイベントも開催されます。
 

はい。新作落語の師匠と古典落語の師匠、昼と夜で総勢7人の花形落語家が豪華勢ぞろいする会です。

―今までの話をお伺いして、私もかなり行きたくなりました(笑)
ぜひぜひ!(笑) 当日どうなるか全然想像つかないんですよね。
(柳家)喬太郎師匠って新作落語も古典落語もどちらもかけるから、喬太郎師匠が昼と夜で新作をかけるのか、古典をかけるのか…いったい何が飛び出すんだろう、ってすごいドキドキしています!
古典落語の師匠、柳家花緑師匠や柳家三三師匠も最近、新作落語をかけてくださる機会があるので、まさか!?とは思いますが、当日の客席の盛り上がり具合や前に出られた師匠との掛け合いなんかで化学反応が起きるかも!?とっても楽しみです!

―そこは完全に師匠にお任せされているんですね。
そうですね。
やっぱり演目って、前の人と似た話はできないしお客さんの雰囲気で「これだったら喜んでもらえるかな」っていう演目をやるから、当日、何をかけるかわからないんですよね。
私が以前見てすごく好きだったのは、古典落語の噺家さんで“正統派”な柳家三三師匠が、桂雀々師匠と三遊亭白鳥師匠に囲まれたときに普段と違う引き出しが開いちゃった瞬間!
今回も、新作の師匠と古典の師匠、双方の掛け合いで、普段と違う化学反応が起きるのをとても楽しみにしています!

―落語の“ライブ感”の良さが出るイベントになりそうですね!
本当に“ライブ”ですからね。
その日の「枕」ってその日にしか聞けないし、お客さんの反応も回によって違うし。落語家さんとお客さんの反応で引き出されていくものはその日にしか生まれないから「超ライブ」だと思います!

友達に「落語行ったことないから連れてって!」って言われると、この一回で落語を好きになるかどうかが決まる!とすごくプレッシャーを感じてしまって、とっても勇気がいるのですが、今回のオールスターズは間違いなく面白いので自信を持って誘えます!(笑)


―では最後に改めて、読んでくださっている皆さんへメッセージをお願いできますでしょうか。
その日その場で、世の中や客席の空気を瞬時に察知して表現して、お客さんを楽しませるぞっていうプロの演芸の格好よさが、番組やイベントによって伝われば良いなと思っています。
そういった落語家さんの側面を知ることで、落語を見るときの楽しみにさらに深みが増すと思うので、少しでも知っていただけるきっかけになったら嬉しいです!
特に、地方にお住まいの落語ファンには見ていただきたいです。

落語好きの仲間たちと幟をプレゼントした杉原さん
2021年2月の桂宮治師匠の真打昇進披露興行で。落語好きの仲間たちと幟をプレゼントしました。



番組配信情報


「スカパー!落語 RAKUGO★新作ルーキーズ #2」

#2は、林家彦いち師匠が、本日のご意見番として登場!
今回レジェンドに挑むのは、桂三四郎、三遊亭わん丈、春風亭昇咲。

<出演者>
若手:桂三四郎、三遊亭わん丈、春風亭昇咲
ご意見番:林家彦いち

【配信期間】
11/1(火)10:00~11/30(水)23:59
【販売期間】
11/1(火)10:00~11/30(水)20:00
【視聴料金】
2,000円(税込)

ご購入はこちら


イベント情報

「新作古典★オールスターズ」

<出演者>
昼公演:柳家花緑/柳家喬太郎/三遊亭白鳥/柳家三三
夜公演:柳家喬太郎/林家彦いち/三遊亭兼好/柳亭小痴楽

【日時】
2022年12月20日(火)
昼公演:14:00開演(13:00開場)
夜公演:18:30開演(17:30開場)

【会場】
ヒューリックホール東京

【チケット】
昼公演:5,500円 ※1ドリンク付き
夜公演:5,500円 ※1ドリンク付き
昼夜通しチケット:10,000円 ※昼夜各1ドリンク付き

#RAKUGO新作ルーキーズ
#落語新作ルーキーズ
#新作古典オールスターズ
#スカパー落語


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!