見出し画像

歯医者に行く。アメリカでだ。

海外在住者にとって、病院へ通うというクエストはかなりレベルが高い。今私は2年8ヶ月目。
ドラクエで言えばやっとルーラを覚えたぐらいのレベルである。

さて、コンブチャの飲み過ぎのせいで、1月頃虫歯を発見してから今までに治療に治療を重ね、やっと最後の難関。
親不知の手術となった。

因みに私の親不知は4本とも歯茎の中に真珠の様な形にてぬくぬくと育っており、日本では治療が不要と言われていた。

だがその中の一本が、NY生活にめちゃくちゃ浮かれたようで、アメリカ共通認識に沿って自己主張を始めた。

つまり、約20年も丸かったその歯は、歯茎の中でいきなり横に育ち、横の奥歯にぶち当たった。
泣く泣く切開手術となる。

開始は昨日の19:00。今は痛く無いが、これから数日痛いんだろうと予め予定された痛み。
それが嫌すぎて、大人になってもメソメソする。

その病院は同じアパートの友人が助手を努めてくれているから、有難い。心強い。

日本だってそうだが、アメリカにも当然、医師の善し悪しはある。その点、今回に至っては何の心配も無い。
実際に最初の方の予約では、この医師で予約を取ったほうがいい等と素敵なアドバイスも貰う。

さて、
麻酔を打ち、麻酔の効きを待っている間、彼女は言う。

手術の間に楽しいドラマでも観ようね。
とネットフリックスでフレンズを付けてくれる。
ジェニファー・アニストンが有名になったあのドラマ。

ダニーデビートがストリップをする回だ。それを正面で見ている間に、彼らは歯茎にメスを入れ、私のやんちゃな歯をバリバリと砕き横から引き抜くと言う工事を行い、ちゃっちゃと縫う。

ちょいちょい気を紛らわせてくれるつもりか、
歯科医が定期的にこの2つの日本語を発する。
”アリガトゴザイマス"。 ”オネガイシマス"。

両方とも私サイドから発するべき言葉であるんじゃないかと思えども、気遣いが嬉しい。アメリカ人であろう彼の気遣いに精一杯答えようとするも、私の口は保定されているので、フガフガフガと返すことしか出来ず。

その渾身のフガフガ。言っているのはthank you too.
発音的にはヒャンクューフー。
当然だが、誰も意味がわからず、しばし妙な空気が治療室に流れる。

だから、治療中の患者に話しかけるとこうなるって。
と心から思うが、またアリガトゴザイマス。
は定期的にやって来る。

なんのループだろう。これ。

歯医者でのアメリカ人医師はこれで二人目。
虫歯を治療してくれた医師はこの病院の医師なのだが、
手術の医師は他の大学病院の様なところから来る。

私の歯茎を縫いながら彼が友人に色々と教える。
彼女はベネズエラ出身であり、ベネズエラで歯科大学を卒業し、こちらで結婚した為、現在はアメリカ版歯科医となる為にもう2年の勉強を大学でしつつ、歯医者で働いているのである。

"この縫い方まだ覚えてる?いつ最後にやった?"
"大学で研修の時一回だけだから、久しぶりに見ます。"

"いやぁ、日本の技術って本当に丁寧だよねえ。
ここの処理とか凄いよねえ。"
"はい。凄く勉強になります。"

これ。毎度言われる。
私の仕事じゃ無いが日本を褒められたような気持ちがして、
少し嬉しい。

そんな彼らの会話を目の前で聴きつつ、手術は進む。
12年ほど前に、歯列矯正をした為、すでに4本歯は抜いてある。今日で5本目の歯が外にお嫁に行く。

終わった後に医師が言う。

君はすっごく若く見えるけど、実年齢は全く若く無いから。
骨を取るって言ってもさ、20代の治りとは違うんだから、
意外と治りも遅いし、影響もあるかも知れない。
処方箋に従ってちゃんと薬飲んで、無理は絶対しないように。分かったね。約束だよ。

言い聞かせられる。

彼も知っての通り、言い聞かせられる年齢では無いが、今回は麻酔が効いてて話せない。素直に頷く。

手術も終わり、病院からはCVS(ドラッグストア)にオートで処方箋が届く。こういう仕組みとても便利。ペーパレスだしね。

薬剤師の居る受付に行き、名前と生年月日を伝えると薬をどっさりくれた。全部で9ドル。安い気がする。

さてさてしばしの禁酒、断食を頑張るとするか。
これで歯医者からはやっと解放である! やったー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?