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まずは終わらせてから、始めよう

いま、山口周さんの『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』を読んでいるのですが、気になったフレーズがあったのでご紹介します。

そのフレーズとは、クルト・レヴィンというアメリカの心理学者が提唱している「解凍=混乱=再凍結」という考え方です。
レヴィンのこの考え方は、個人的および組織的変化を実現する上での三段階を表しています。

第一段階の「解凍」は、今までの思考様式や行動様式を変えなければいけないことを自覚し、変化のための準備を整える段階です。
第二段階の「混乱」では、以前のものの見方や考え方、あるいは制度やプロセスが不要になることで引き起こされる混乱や苦しみが伴います。
第三段階の「再凍結」では、新しいものの見方や考え方が結晶化し、新しいシステムに適応するものとして、より快適なものと感じられるようになり、恒常性の感覚が再び蘇ってきます。

つまり、ある思考様式・行動様式が定着している組織を変えていくためのステップが、この「解凍=混乱=再凍結」ということになるようです。

ここで重要なことは、「解凍」から始まっているという点です。
「解凍」とは、要するに「終わらせる」ということです。

何かを始めようとするとき、まず何を考えるかというと、「どのように始めるか」ということを考える人が多いと思います。
それは当然ですよね。始めることを考える時には、どう始めるかが大事なはずですから。
しかし、クルト・レヴィンは、何か新しいことを始めようとするときにやるべきなのは、まず「終わらせる」ことだと言っています。
「終わらせる」というのは、「今までのやり方を忘れる」とか「ケリをつける」という風に言い換えてもいいと思います。
何かを変えようと思ったときも、どう変えるかを考えるより先に、まず今までのやり方を終わらせることが大事なのです。

変革は「始まり」から始まるのではなく、「何かが終わる」ことで始まるということなのです。

キャリアに関しても同様なことが言えます。
転職するときも、転職先を探す前に、まずは今の仕事にケリをつけることが必要だと思います。
ケリをつけるというのは、つまり、今までの仕事が「自分にとって何だったのか」「何を学んだのか」などを見つめ直すことです。
次の仕事を探すことも当然大事なのですが、過去を見ずに闇雲に先を急いだとしても、きっと途中で道に迷ってしまうでしょう。
今の仕事が嫌で嫌で仕方ない場合は一刻も早く逃げたいと思うこともあると思います。
しかし、ここできちんと終わらせないと、きっとこの先も同じようなことになってしまうでしょう。
何が嫌で辞めるのか。
自分にとって何が大事で、どんな価値観を大切にしたいのか。
今の仕事を通じて何を得て、何を失ったのか。
など、きちんと今を見つめて、今を終わらせることが必要なのだと考えます。

キャリアの転機は、「何かが始まる」ということではなく「何かが終わる」時期なのです。
「何かが終わる」ことで初めて「何かが始まる」とも言えます。
多くの人が「始まり」にばかり注目してしまい、「何が終わったのか」ということにきちんと向き合えていないと思うのです。

世の中が混乱している今だからこそ、何かを変えよう、始めようと考えている人はきっといると思います。
皆さんは、きちんと終わらせていますか?



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