見出し画像

お金って何ですか 貨幣の力2

自民党、新型コロナで歳費返納を検討

自民党は13日の役員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、国会議員の給与にあたる歳費の一部返納について、前向きに検討することを決めた。今後、各党に協力を呼びかけ、返納額などを協議する。二階俊博幹事長は同日の記者会見で「新型コロナに対する国民の奮起、戦うということに対して、しっかり支援していくということだ」と述べた。

こういうニュースを読むと本当にがっかりする。「お金とはどれほどありがたい存在で、国が法律で定めて生み出していて、かつ天下の周りものなので、誰かに渡してあげないといけない」という当たり前の真実。それをこれらの政治家は全く知らないのだ。こんなにものごとが分からない人には政治の世界から消えてほしい。

あ~、国がせっかく産み出した貨幣をもう一度国に戻してどうするん?「あんたがいらないお金は私がもらってやる」「いや、違う」これから大変な状況になる病院や医療関係者の医療用具・備品購入や夜食などのお金に使えるよう、日本赤十字などに寄付をするんですよ。

国会議員が率先して寄付をすることで、お金持ちや公務員や様々な人々が寄付を始めるんですよ。それこそ、東日本大震災の時にみんなが寄付をしたように。

そのタイミングで一人当たり10万円をばらまく。そうすると困った人たちのところに国からもらったお金を寄付する人が大勢出てくる。寄付を通じて支援の手が届く。また、困った人はもらったお金をすべて使う。そうやって国が配ったお金が動くようになる。

貨幣を駆動させるために、天平時代の人がどれほど苦労したか説教してやりたい…

シニョレッジ4

政府がお金を産み出すことの大切さ

政府は無から有を産み出すことが出来る。それが貨幣の力である。貨幣で何かを購入する。貨幣をうけとった人は、また、次の人に支払いをする。

今のようにコロナウイルスのせいで、特定の市場、人の移動や集会に関係するイベント・観光・飲食・レジャーなどの産業が完全に止まった場合、一年で50~80兆以上のお金の流れが止まる。お金が回らなくなると、観光や飲食などの特定企業の売上が喪失することを通じて、企業価値が大きく毀損する。これらの企業の仕入れによる支払いも消え、市場全体への波及は極めて深刻な問題だ。

「お肉券」とか「おさかな券」などというのは、これらの企業の仕入れのほんの一部に過ぎない。大元でどれほどひどいことが起きているのか、知ろうとしないのである。

これでもたない会社は潰すから

自民党幹部の「痛い話」はこれにとどまらず、SNSで話題になっている。自民党幹部「これでもたない会社は潰すから」これが自民党上層部の考えのようです。

前回、日本のシンクタンク東京財団の経済学者による提言について解説をした。東京財団の経済学者も自民党幹部と同様のことを言っているのだ。現実の数字を確認せず、地に足が付いた議論をしていないことが共通している。

有識者に読んでいただいたら下記のコメントをいただいた。

東京財団の報告書、驚きました。日本の関係部門の構造改革がかかれているようですが、泥棒が入っているのに縄を作っても仕方がないような話です。時間次元での錯誤を感じます。コロナ問題は、あくまでもナイト的不確実性の問題なので緊急避難としてあくまでも最短時間で達成できることを目標とすべきです。

ナイトの不確実性と公共政策学

リスクと不確実性は違う。リスクは確率的事象として予測可能であり、保険等でリスクヘッジできるものである。例えば、昨年の台風は大きな被害があちらこちらで出たが、火災保険に入っていれば建物の損害に対して保険金がおり、修理・修復が可能である。万が一のリスクに備えること、これは経営の鉄則なので、これが出来ていなければ、確かに経営者として失敗と言われ、市場から退出させられても仕方がない。

しかし、今回のコロナウイルス問題は違う。これは予測不可能な、確率で測れない事態だ。フランク・ナイトはこのような確率で測れないような事態を「不確実性」と呼んでリスクと峻別したのである。1950年代、いまから70年以上も前の理論である。東京財団のようなシンクタンクやこれに賛同する経済学者がナイトの不確実性を知らないのは、あまりに恥ずかしいのではないか。

今回の事態で厳しい状況に置かれた企業は経営に失敗したのではない。コロナウイルスという不確実な出来事に巻き込まれた被害者・被災者なのだ。

コロナウイルスは民間の経営努力だけで解決できる問題ではない。世界中がそう考えて対応を図っている。民間部門だけでは処理・解決・準備できず国民全体に影響のある「公共」的な課題・問題に対処して、国及び地方自治体などの公的政策部門が主導をとって解決にあたることを「公共政策」と呼ぶ。これが本来の国会議員の仕事である。

SNSで批判される自民党議員の病はコロナウイルスよりももっと恐ろしい病だ。カンダタ病だ。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」ではカンダタは下に向かってこう叫ぶ。

「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己おれのものだぞ。お前たちは一体誰に尋きいて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と喚わめきました。

その直後、蜘蛛の糸がカンダタのぶら下っている所から音を立てて断ち切れる。隣人への優しさや社会への暖かさを失った瞬間に、人間は人間でなくなり、餓鬼道に陥る。自民党議員の発言はこのカンダタと同じである。

コロナウイルスは、人の体を激しく傷つけ、人間社会を脅かす恐ろしい存在だ。そして、人の心に救う「餓鬼」という病、人間の内側もあぶりだすのである。怖い、本当に怖い。

政治とは万が一の災害に対して救済することが役割のはずである。本質的な暖かさ、公共政策の基礎的素養を持っていない人間は、政治の世界にいる資格はない。お金の大切さ、個人の財布という意味でなく、未曾有の危機、この緊急事態にこそ市民を救うために、政府が市場にお金を配ることの重要性を与党幹部は殆ど理解できていない。このような国会議員に歳費を返納してもらわなくてよい。その代わり直ちに国会から去ってもらうべきだ。自分には議員の資格はないと発言したのだから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?