5/23 キスの日の掌編小説




君の艶やかな唇
僕がどんなに唇を重ねても
僕がどれだけ舌を絡めても
君は淡々と応えるだけ

僕の生を 返すだけ

わかっている

二人の熱が溶け合っているように見えて、本当は
僕の熱を二人で分かち合っているにすぎない

君の
唇から流し込んでいるのは
君を介したぼく自身の呼吸
ぼくは
息をして
息をしていたんだと
ぼくは
はじめて
生きていたことを知るんだ

君と唇を重ねてようやく
僕は僕の輪郭を得られたから

だから今度は

「……君の熱を、くれないか」

『人工呼吸』

5月23日はキスの日だそうです。
合わせるだけだったり、吸ったり、食んだり、かすめるだけだったり……
どれ一つとして同じものはない、その二人の関係性でしか生まれないのがキスシーンの味わい方だと思っています。自分も創作で取り入れていきたいです。


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