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掌編小説 魔法使いの弟子

とある村の高い山に、高名な魔法使いが暮らしていました。魔法使いの名声は外国にまで響き渡っていたので、はるばる海を越えて貴族や高官や王様までもが訪れるほどでした。ところが、不思議なことに、山の下に住む村の人は誰も、その魔法使いがどんな魔法を使うのかは知らなかったのです。

そんな魔法使いの元に、ある日一人の少年が訪れました。そして少年は魔法使いに、どうか弟子にしてほしいと頼み込んだのです。

魔法使いは少年の目を見て言いました。

「お前は、どうして魔法使いになりたいのだね?」

「不思議なことをなしとげてみたいのです」

「はて。不思議とは一体なんだろう?」

魔法使いのそんな言葉に、少年は言葉を詰まらせました。不思議は、不思議です。なんだろうと問われても、答えられるはずがありません。

魔法使いはパチンと指を鳴らしました。すると、魔法使いの指に小さな炎が生まれました。

少年がその様子を驚きの表情で見ていると、魔法使いは言いました。

「今のは不思議なことだとお前は思うかね」

少年は頷きました。

「だが、わしにとってこれは、不思議でもなんでもない。なぜなら、わしはどうしてこういうことができるのか、ちゃんと分かっているからね」

「ならば、今のは魔法ではないのですか」

そんな少年の問いかけに、魔法使いは少し考えて、言ったのです。

「今のを魔法と呼ぶ人もいる。それが間違っているわけじゃない。だが、わしにとって今のはもはや魔法ではないってことさ」

少年はそれがなんのことなのか、さっぱり分かりませんでした。

「お前が知っておくべきことを、わしは教えてやることができるだろう。だから、明日からここに住むといい。やってほしいことがたくさんあるからな」

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