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読み継がれる物語、ふたたび

一番最初に『源氏物語』を読んだのはいつだっただろう。
確か全文(現代語訳で) 読んだのは27歳のとき。
(長男を出産して、育休を経て復職したときだ)

最初に手に取ったのは、角川文庫(ビギナーズ・クラシックス)からでてる『源氏物語』だった。



育休中に和風ファンタジーを書いていた影響から、当時の私は古典を読みあさっていた。
(『堤中納言物語』も『落窪物語』も『とりかへばや物語』もこのとき読んだ気がする)


『源氏物語』は高校のときに「若紫」を習ったきり、何も知らない状態だったのだ。

ビギナーズ・クラシックスの『源氏物語』はとても分かりやすく「こんなに面白いなんて!」と衝撃を受けたのを覚えてる。
(同じシリーズの『伊勢物語』も読んだ。他の古典も。角川ビギナーズは要所が押さえてあって現代語訳もしっかり載っているのがいいと思う)


そのあと買いそろえたのが、瀬戸内寂聴さんが訳した『源氏物語』



『源氏物語』はいろんな人が訳しているけど、原文に忠実で読みやすいという点では、瀬戸内寂聴さん訳を推したい。

『源氏物語』の世界観が秀麗な筆致で細部まで訳されていると思う。



このあとに読んだのが、荻原規子さんが訳した『紫の結び』シリーズだ。



紫の上が中心になる物語を『紫の結び』
玉鬘や、中の品(と評される)女性たちとの恋愛模様をまとめた『つる花の結び』
源氏死後(匂宮と薫) の話を『宇治の結び』と分けてあって、こんなふうに分けられるのかと驚きだった。
そしてそう分けると、長大な物語がずいぶんすっきりして見えるのだ。

紫の上がメインの『紫の結び』を押さえておけば、玉鬘の物語がスピンオフ的なものだと分かる。


そんな『源氏物語』のあれこれを、まとめたこの本も読んでみた。



荻原規子さんが読みつくした『源氏物語』が、いろんな角度から語られる一冊。

巻末には簡単なあらすじも載ってるから、読んだことのない人も読みやすくなっている。
(物語の詳細を心得てから読んだ方が、より楽しめるとは思うけど)


読み進めるうちに、源氏の君の身勝手さや紫の上の苦悩がより浮き彫りになっていく。
(紫の上の何ひとつ自分で決められない人生は、どれだけ苦しいだろう、とか)
荻原規子さんの語り口も面白くて、最後まで一気に読めてしまう。

出家できずに亡くなった紫の上の苦悩は、瀬戸内寂聴さんのエッセイにもよく出てくる。
源氏に一番愛された紫の上だけど、(他の姫君が次々に出家を遂げていくなか) 最期まで許されず、その点では誰より貧しかったくだりとか。
(そして、その愛も結局は藤壺への想いが投影されたものだったりとか…)


山﨑ナオコーラさんの『ミライの源氏物語』もこれから読むところ。
千年以上、人々を魅了しつづける物語世界に、もうしばらく浸ろうと思う。




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