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【超・短編小説】パワハラ

私の名はK氏。都内会社勤務のOL。
入社して4年目。
仕事に少し慣れてきたところで、上司B氏から業務を丸投げされることが増えた気がする。 

「どうせKさんに業務を丸投げしても、きっと文句を言わずにやってくれる」

「どうせKさんなら、業務を丸投げしたとしてもそこそこの形にしてこなしてくれる。先方に誉められたら、自分の手柄にしてしまえばいい」

きっとそんなことを思って、B氏は業務を丸投げしてきたに違いない。

私に期待している面もあるだろうけど、結局は自分が面倒なことを背負いたくないだけ。
丸投げされた業務について、B氏からのフォローは一切なかった。

B氏に業務のことで相談しても、
「知らん。Kさん、それくらい自分で考えてよ」の一点張りで、相談した私が馬鹿みたいだ。
結局、B氏以外の上司や同僚に少しずつ相談して完成させた。

それなのに、実際の企画や事務作業は私がすべてやったのに、手柄は全部B氏になっていたことが何回かあった。
「こんなんやってられない」
何度となく仕事へのモチベーションを失い、
「もうこんな職場さっさと辞めよう」と何度も思い、頭の中のどこかの糸がプツっと切れることが何度かあった。

日に日に会社に行くのがだるくなる。
朝の出勤中、電車に乗ってぼーっと外を眺めていた時に、スマホがブーッと鳴る。

「ん?」

『あなたの嫌いな人との縁を切ります』

身に覚えのない件名のメールが届いていた。
メールの本文を読んでいると、怪しいリンクが貼られている。
このリンクをクリックしたら危ない。
どうせまた迷惑メールだろうと思って、私はメールをほとんど見ずにゴミ箱に入れて削除した。



それから1ヶ月後。
B氏が、突然職場を去ることになった。
これまでの仕事の姿勢に上層部がしびれをきらしたようだ。
B氏は不機嫌そうだった。
デスクの片付けをしている際には、引き出しをわざと大きな音を出して開けたり閉めたりして、物に当たっていた。

B氏の退職を誰も悲しがっていなかったのが、この人がいかに人望がなかったのか否応なくわかってしまう。
やっぱりこういう人にはなりたくない。
改めて思った。

同期のC男と先輩のD子が、私に話しかけてきた。
「Bさん、ひどかったもんね。仕事を部下に丸投げしたのに、手柄は全部自分のものにして…」
「Kさんも辛かったよね…。今まで大変だったけど、これで安心して仕事できるよね」

本当に安心した。
これで2度とB氏に会わなくて済む。

同僚には、今から社内掃除に行くからと言い、
私はエレベーターに乗り社長室に向かっていた。

私には誰にも言っていない秘密がある。
私の会社は、私の「父」が社長をしている。
私の父と母は、私が小さい頃に離婚しており、私は母と一緒に20年近く暮らしている。
父とは苗字が違うから、誰も私と社長が親子と感づかない。
言っとくがコネ入社ではない。
この会社の入社試験を受けて、無事に内定をもらって入社した。
社長は私を娘と最初は気づいていなかったが、のちに気づいたらしい。

私は、あくまでも直属の上司の更に上の上司に相談したまで。
そうしたらBさんの普段の仕事の様子を上層部が調べてくれたみたい。

親の権力つかって辞めさせたなんて誤解だよ。


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