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時を司るもの

時を司るもの


星の巡りは妙にして 人に綾なす韻律を結ぶ...回りまわりて明滅を歌い  巡り廻りて 淵源を震わす...

降りたインスピレーションは時として謎めいた陰影を帯びて立ち現れ、凍れる槌音となって私のこころを穿つ...遠い記憶が波打ちながら浮かび上がる意識の水面には、天界の意思が星の交差する軌道を思わせるような波紋となって描かれてゆく...

それは乱れることなくひとつの旋律となり、明滅する刻と刻を絡めとってゆく...旋律の中に宿されたものは色を成し、虚と実との理のなかにその姿を移してゆく...目に映る歌はまだ声を持たず...明滅のなかに花は開き、明滅のなかに響きは香りたつ...

響きあう軌道の上で、虚と実は手を取りダンスを踊り...目を閉じれば聴こえてくる歌に己を映し、眠りの中に閉ざされた記憶を解き放つ...

脱ぎ捨てられた衣に沁みついた記憶の残渣を洗うかのように槌音は繰り返されてゆく...それは藁を打つ砧のようでもあり、ときに鋼を打つ槌音にも聴こえてくる。 染み込んだ記憶は火花となって砕け散り、衣は波紋に洗われ天へと還ってゆく...

見たくないもの...思い出したくないものを隠し、押し殺してきたものを引き摺りながら生きてきた私...だがそれは…この私を守ってきたものだった...この世に生まれたときに与えられた、こころの産着だったのかもしれない...

この世の汚れを引き受けてくれた衣を返すとき...囚われたこころを開放するとき...それは今この時...槌音はそう告げる...あるのはこの今だけ...

大地が歌うとき...言葉に象られた時間が舞い踊る...それはいのちの舞踏でもあり、陰と陽とが描くいのちの曼陀羅なのかもしれない...

昨日と今日のあいだに...今日とあしたの間に...今年と来年のあいだに掛かる橋の下に垣間見える淵源...

誰がうたうのか...時の旋律を...

誰が聴くのか...いのちの鼓動を...




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