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詩 〈風 野〉



春が来る前に

もう若い色がついている


陶器の白い肌には

緑の葉脈が透けてみえる


谷をわたる

風の天涯は

真っ青


いやむしろ

眩む群青か


宿命のように

生きてきた途上の

幾つもの

有り様が


暗い頭蓋の

透明な結節の

内部に

点々と灯る


下って行く人と


すれ違いざまに

短い挨拶も交わす


この峠を越えたら


なだらかな

眉間のような


小さな平原(ひらば)に

出られる




終わりそうな


境涯なのに



若い色を追って



愛しいきみと


この風野を


わたる









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