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短編小説 「赤ずきんのお使い」


かつて、遥かなる森の中に小さな家があり、そこには愛らしい少女が暮らしていました。彼女の名前はリリアン。彼女はその明るい赤いマントと頭巾かから、みんなに「赤ずきん」と呼ばれていました。ある日、リリアンの母は彼女に特別なお使いを頼みました。

「リリアン、森の中に住むオオカミにこれを届けてくれるかしら。彼は体調を崩していて、きっとこれを食べれば元気になるわ」母は手作りのチェリーパイをリリアンに渡しました。

リリアンは森を抜ける道をよく知っていましたが、オオカミの家に行くのは初めてでした。だが彼女は勇気を出して、赤いマントをひるがえし、森の中へと足を踏み入れました。木々がささやき、小鳥たちが歌い、森は神秘的で美しい場所でした。

道中、リリアンは色とりどりの花や、珍しい果実に目を奪われながら進んでいきました。すると突然、一匹の大きな青い毛のオオカミが現れました。彼はリリアンをじっと見つめ、ゆっくりと彼女の方へと近づいてきました。

「こんにちは、赤ずきんちゃん。どこへ行くの?」オオカミは優しい声で尋ねました。

「オオカミさんにお母さんのチェリーパイを届けに行くの」とリリアンは答えました。

オオカミは少し驚いたように見えましたが、すぐに嬉しそうに笑いました。「それは私のために?どうもありがとう。体調を崩していて、なかなか外に出られなかったんだ」

リリアンはオオカミにチェリーパイを渡しました。オオカミは彼女に感謝し、自宅へと案内しました。家は暖かく、心地よい匂いが漂っていました。リリアンはオオカミと一緒にパイを食べ、彼の話に耳を傾けました。オオカミは昔話や森の秘密について話し、リリアンはそれを聞きながら、この不思議な友情を楽しみました。

夕暮れ時、リリアンは家に帰ることにしました。オオカミは「また遊びに来てくれるかい?」と尋ねました。リリアンは微笑みながら、「もちろん」と答え、オオカミに別れを告げました。

リリアンが森を抜けると、母が心配そうに待っていました。「リリアン、無事だったのね。どうだった?」

「オオカミさんはとても親切で、楽しい時間を過ごせたわ」とリリアンは答え、母にその日の出来事を話し始めました。

この日から、リリアンは時々オオカミの家を訪れるようになりました。

彼との友情は、森の中でささやかながらも美しい物語となり、長い間語り継がれることになりました。




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