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短編小説 「やりたいことを見つけたら」


新しい趣味でも始めようかな……。

そう思って、自分の好きなこと、やりたかったことをファミレスココスの隅で6人くらい座れる円卓を独り占めしながら、考え始めた。

「漫画も好きだな、アニメも好きだ、ゲームも好き。小説を読むのも好きだ。料理もするし、買い物も好き。なにも考えずに1日中テレビを見ているの好き。運動も好きだな。サッカー、草野球、走るのも好きだ」いろんなことに手をだしているがこれといって続いているものはないな……。それに、どれも趣味とも言えないし、どれもこれも友達に誘われてやったことばかりだな……。

自分からはじめたことはなにがある?

喉が渇くな、コップが空っぽだ。ドリンクバーに行ってジュースを注ごう。ドリンクバーへ向かう途中にも考えた。なにがある?なにがある?なにがあった?自分からこれをやりたい、これが好きだってもの、特にないな。強いて言うならホワイトウォーターかな。それなら、ちょうどドリンクバーにある。ボタンを押せばでてくる。

真っ白だ。

ホワイトウォーターのように、やりたいことも、好きなことも真っ白だ。どうしたらいい?なにをしたらいい?考えても考えてもなにも見つからない。頭が熱くてかゆくなってくる。頭を掻きむしりたい。ドリンクバーから席に戻って頭を思いっきり掻きむしった。フケが舞い上がって太ももにフケがつもった。

やりたいことが見つからない……。

頭を下げ、目の前のフケを見つめることしかできない自分がいる。どうして何か一つに心から熱中できないのだろう?自分には何も情熱を感じることができないのはなぜだろう……

もしかして、自分には核となるものが欠けているのだろうか?常に他人の意見に流され、自分の意見を持たないために?

思い返せば、子供の時から自分の本当に欲しいものを手に入れた記憶がない。ゲームボーイアドバンスをねだったはずが、代わりに手にしたのは全く興味のないレゴセットだった……。少年野球チームに加わりたいと願ったのに、親に書道教室へ通わされた……。そこからだろうか、自分の本当にやりたいこと、好きなことを口に出さなくなったのは……

中学や高校時代、友達に「金魚のフン」と揶揄されたことを思い出す。どこへ行くにも、「どこでもいい」「何でもいい」と答えるばかりで、自分からは何も提案せず、ただ友達の後をついていくだけだった。その結果、意見を持たない自分がつけられたあだ名だった。

そうか、自分には自分の意見がないから、やりたいことを見つけられないのか……。

でも、これを変えるにはどうしたらいいんだろう?

ふと、隣のテーブルで楽しそうに話し合う高校生達の姿が目に入る。高校生4人がガンダムを熱心に語っている。その光景が羨ましい。自分も、あんなふうに熱心に語れる、熱中できるものを見つけたい。

「日常を書くこと……」

自分の日常を伝えるのいいかも。高校生4人のこととそれを羨ましいと思ったこと伝えるのもいいかも。

帰り道、スマホで検索する。初心者でも始められるブログのコツ、情報を集めるうち、心が少しずつ躍動してくるのを感じる。

自宅に戻り、触れていなかったノートパソコンを開く。新しいドキュメントを開き、最初の一文を打ち込む。「見つけた小さな光」変化は一夜にして起こるものではない。しかし、この一歩が、長い間閉ざしていた心の扉を開く鍵になるかもしれない。

自分自身の声を見つけ、それを大切にしていく。その過程で、やりたいこと、好きなことが見えてくる。

自分のペースで、一歩ずつ。





時間を割いてくれてありがとうございました。

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