切り裂く風と春へ誘う日差し

冬は寒い。
特に関東の冬は、風が強く、「先」とつく体の部位が早々に冷える。

都内なんて最悪だ。
そうでなくても風が強いのに、ビルが更に事を悪化させている。
空を狭くし、犇めき合う高い建物たち。
そこから吹き降ろしてくるのではと思う風は、鋭利なナイフのような殺傷力を秘めている。

そうでなくても冷たい空気なのに、更に体感温度を下げにくる風。
そんな冬の外へ出たいと思う日もある。

冬の晴れた日は美しい。

空気が肌を刺しても、冷たい風が肌を切りつけてきても、冬の晴れた日は美しい。

春や秋の晴れた日だって美しいのだけれど、わたしは冬の凛とした晴れ間が好きだ。

地面の草花は荒廃し、茶色くみすぼらしい。
見上げれば枝には葉などこれっぽっちもない。
葉が付いていても、色を失ったかのようなくすんだ色味。

そんな生命が立ち枯れている景色の向こう側、冬の空は凛として美しい。
空気が他の季節よりも澄んでいるせいか、青空はどの季節よりも鮮明で柔らかく見える。
切っ先の鋭い風が、空に広がるはずの雲を切り裂き流していったおかげで、快晴となる事が多い。

そんな寒々しい快晴の下、なぜ外に出たくなるのか。

それは、唯一暖かい日差しがあるから。

立ち枯れた生命たちが遮る事のない日差し。
陽は低く移動し、目には眩いばかり。
そんな日差しを浴びながら歩いていると、感じることがある。

生きている。

周りは寒々しい立ち姿なのに、外を歩くと日差しの温もりを僅かに感じる。
それの積み重ねを経て、わたしたちは春へと向かう。

どんなに切り裂かれても、冬の日差しは春へと導いてくれている。
それを感じるから、時折外へ出たくなるのだ。

おしまい

頂いたサポートは、note記事へ反映させます! そしてそのサポートから、誰かとの輪が繋がり広がりますように...