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【経理】年次決算は、単なる「12回目の月次決算」ということ。

こんにちは、きくちきよみと申します。
舞台照明家→経理→税理士です。

今日は、「年次決算は単なる12回目の月次決算なので、特別なイベントにはしないことが大事」ということについて書きます。


つい「年次決算なので」と言ってしまうことがある。

法人の12月決算、3月決算、と繁忙期が続いていますが、顧問先の経理の方とお話していると、どうしても「年次決算なのでこの作業は必要ですね」「年次決算なので仕方ないですね」などと言ってしまうことがあります。

この「年次決算なので」という枕詞は、年次決算を特別なものとして捉えているから発してしまう言葉なので、自分の感覚を修正しなくてはいけないなと思うタイミングでもあります。

年次決算を特別なイベントにしない方が良い理由。

年次決算は本来、特別なイベントではありません。

単なる12回目の月次決算なので、年次決算を特別なイベントにしてしまわないように」というのは、よく経理部で言われることだと思いますし、本当にその通りだと思っています。

特別なイベントにしてしまった場合、いろいろな不具合が起こります。
・年次決算の時期だけ、経理部や関連部署の負担が増える。営業活動に影響が出る。
・年次決算作業のために翌事業年度の月次決算締めが遅れ、結果的に経営判断が遅れる。
・売掛金回収など、キャッシュフロー管理が遅れる。

つまり、「年次決算が遅れる=月次決算のスケジュールが乱れる」ということなので、他の11回の月次決算をどんなにスムースに実施していたとしても、大きな影響になってしまうことになります。

年次決算が特別なイベントになってしまう理由。

①月次決算・四半期決算を実施している場合(記帳は社内)

月次決算や四半期決算を実施しているのに年次決算が特別なイベントになってしまうのは、そもそも月次決算・四半期決算のルールが緩い場合でしょう。

例えば、期中は現金主義(支払い時点で記帳する方針)で会計記帳し、期末だけ発生主義(支払い前の取引が発生した時点で記帳する方針)で会計記帳するような場合、年度末だけ月次決算作業の負担が増加します。

  請求書が届いてから費用計上するルールにしている
     ↓
  請求書をもらう期日を厳密に決定していないために請求書が届かない
     ↓
  年次決算が締まらない

ということになり、年次決算がなかなか締まりません。

また、月次決算・四半期決算をするのは損益の状況を把握するためだけで、売掛金・買掛金・未払金などのBS残高をきちんと押さえる作業をしていない場合にも、年次決算が特別イベントになりがちです。残高を精査するために別途時間を使うことになるからです。

②決算は年次決算のみの場合(記帳は社内)

決算をするのが年次決算のみの場合、どうしても特別なイベントになりやすいでしょう。

1年に1回のことなので留意点なども忘れてしまいますし、何となく苦手意識を持ちがちです。もしくは、大イベントに取り組むような心持ちで楽しく取り組む人もいらっしゃるかもしれません。

ただ、どのような気持ちで取り組むにせよ、1年に1回しかやらない作業ばかりなので、作業時間の増加を避けることは難しいです。

このような場合、決算日の1か月前に、いちど税理士さんと打ち合わせをした方が良いと思います。準備しておく資料や確認事項などを明確にしてくことにより、作業時間をできるだけ削減することができるからです

③記帳を外部委託している場合

会計記帳を外部委託している場合、自社の都合に関わらず、委託先のスケジュールに従うことが多くなりやすいでしょう。そして、「いつ、年次決算の数値は出てくるのかな?」と、受け身になりがちです。

しかも、決算に自主的に取り組む体制になっていないことが多いので、急に税理士さんから「この売掛金って、1年回収されていませんよね?」という質問を受けて慌てて取引先に確認をする、ということも起こります。

そして、てんやわんやの確認があった後、最終的に税理士さんから「この数字で良いですよね?」と確認を受けたとしても、「よく理解できていないが、もう確認する時間がない」「専門家が作った決算書ならもう大丈夫だろう」などと考えてOKを出してしまう経営者や経理の方もいらっしゃるかもしれません。

自分は会社側の立場だったこともあり、今は記帳代行をする立場のこともあり、記帳代行をしない税理士の立場のこともあり、それぞれの立場での配慮と遠慮を感じたことがありますが、「記帳を外部委託している場合の年次決算は時間がかかりすぎることが多い」と思っています。

記帳を外部委託する場合は、少なくとも四半期決算の際などに詳しく説明を聞くなどして、自主的に決算に取り組むように心掛けるのが望ましいでしょう。

是非、月次決算・年次決算の早期化・平準化を。

年次決算を想定した月次決算、ということを考えると、最初はなかなかうまくいかないかもしれません。

それでも、月次決算を早期化・平準化することにより、結果的に円滑な経営判断ができるということは、大きなメリットであると思います。

是非、年次決算も含めた月次決算の早期化・平準化に取り組んでみてはいかがでしょうか。