ランニング練習量の増やし方に関して
フルマラソンの準備としては、ある程度の練習量が必要である事は周知の事実であると言えます。
なぜなら、フルマラソンという競技は42.195kmを如何に速く走るかを競う競技であり、初心者ランナー、市民ランナーにとっては42.195kmを大会が定める制限時間内に走り切らなければならない訳ですから、42.195kmを走りきる練習、いい換えると、42.195kmを走るに際して生じる身体への刺激に適応するために、ある程度の距離を走る練習も必要になるからです。
*フルマラソンの準備と長時間(長距離)走に関しては、こちらの記事も参照下さい。
しかしながら、ただ闇雲に練習量(走行距離)を増やせば良いという訳ではありません。
ランニングは接地衝撃によって身体に大きな負担がかかる運動であり、ただ闇雲に練習量を増やすだけでは、怪我(ランニング障害)のリスクが大きくなるからです。
*接地衝撃とランニング障害に関しては、こちらの記事も参照下さい。
また、ランニングに限ったことではありませんが、練習量が増えることでオーバートレーニング症候群のリスクも増加することになります。
従って、怪我(ランニング障害)やオーバートレーニング症候群を予防しつつ練習量を増やすことが重要になるといえます。
では、どのように練習量を増やしていくことが望ましいのでしょうか?
練習量の増やし方については、確固たる根拠に基づく方法はないといっても過言ではありませんが、今回はランナーやランニング指導者の間で一般的に認知されている2つの方法をご紹介したいと思います。
●ダニエルズ理論
まず、1つ目に紹介する方法は、著名なランニングコーチであり科学者でもあるジャック・ダニエルズPhD.が推奨する方法(ここでは、「ダニエルズ理論」と称します。)です。
このダニエルズ理論では、1週間あたりの練習量の漸増方法として「週間練習回数×1.5km(注:増加分は最大で週間15kmとする。)」を推奨しています。
例えば、週6回(6日)練習しているランナーの場合は
6(回)×1.5(km) = 9km
となり、1週間に9kmづつ練習量を増やしていくということになります。
但し、ここで1つ注意しなければならないのは、おおよその市民ランナーは平日には仕事の都合等により練習時間をあまり確保出来ず、あるいは練習時間が単一になりやすく(例えば、平日は毎回1時間までしか練習出来ない)週末にまとまった練習を行うパターンが多いのではないかと推察されるため、平日の練習で走行距離を増やすならば(同一練習時間で走行距離を増やすならば)単純にランニングスピードを高める必要があり、また、平日の練習は現状通りとし週末の練習で走行距離を増やすならば一気に走行距離を増やさざるを得ないという状況にあることです。
この状況の場合、1週間の走行距離の漸増度合いと体力(持久力、筋力)の向上度合いがマッチしていれば問題ないといえますが、体力の向上が十分ではない、いい換えれば、練習(トレーニング)に対する適応が十分ではない状態であった場合、一気に練習(トレーニング)強度、または、練習(トレーニング)量を増やさざるを得ないことによって怪我(ランニング障害)やオーバートレーニング症候群のリスクが増える可能性があることから十分な注意が必要となります。
但し、ある程度の練習(トレーニング)を重ねて練習(トレーニング)に対する適応がみられる状態であれば、1週間あたりの練習回数を変えない限り1週間あたりの漸増距離は一定となり無理なく練習量を漸増させることが可能であるともいえます。
●10%ルール
2つ目に紹介する方法は、アメリカのランナーやランニング指導者の間でポピュラーになっている漸増方法である「10%ルール」という方法です。
これは「前週より走行距離を10%以上増加させるべきではない」というルールに基づき練習量を増やす方法で「ランニングにおいて最も重要で実績のある原則の1つである」と考えられています。
例えば、1週間の走行距離が60kmのランナーの場合は
60(km)×10% = 6km
となり、1週間の漸増距離は6km以内に留めるということになる訳ですが、1週間の練習量(走行距離)に応じて練習量が漸増することになるので1週間あたりの漸増距離は右肩上がりとなり、練習量の漸増に対して体力(持久力、筋力)の向上が追いつかなくなる状況に陥らないように注意する必要があります。
どちらの方法を用いるしても、常に毎週ごとに練習量を漸増させなければならないという訳ではなく練習に対する適応を見極め体力(持久力、筋力)の向上に合わせて練習量を漸増させる必要があるといえますが、限られた時間の中で練習(トレーニング)を行なっている、すなわち、1週間あたりの練習回数や練習時間に制約があり、ある程度決まったパターン(回数、時間)で練習を行なっている市民ランナーの場合、1週間あたりの漸増距離が一定になるダニエル理論の方が無理なく練習量を増やしていくことが可能ではないかと考えます。
但し、上述の通り練習(トレーニング)内容が単一的、単調になりやすい市民ランナーの場合、ただ単に練習量を漸増させることだけに目を向けるのではなく、練習(トレーニング)強度と練習(トレーニング)量にバリエーションを持たせながら練習量を無理なく漸増していく必要があるといえます。
*単調な練習(トレーニング)がもたらす悪影響に関しては、こちらの記事(有料コンテンツ)も参照下さい。
*また、上記の有料コンテンツに記載されているトレーニング管理手法を用いて練習内容が単調にならないように配慮しつつ練習量を増加させている市民ランナー向け練習プログラム(練習計画)を有料コンテンツとして提供中ですので、ご興味ある市民ランナーがいらっしゃいましたら是非ともご購読下さい。
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