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連続ノート小説 「じゃじゃ馬ジャーナリスト」 第4回


「イライラしすぎて今から山行こうと思います。もう限界なんで。」

レナはその言葉をつぶやいた後、手に持ったスマートフォンをソファの上に投げ置きました。彼女の目はツイッターのアイコンを見つめるよりも、窓の外に広がるウラル山脈を見つめる方がずっと落ち着くのです。

レナは生まれ故郷のロシアを思い出していました。レナの住んでいたチェビリンスクはウラル山脈の麓に広がる美しい町で、彼女にとって山は逃避場所であり、またエネルギー源でもありました。

しかし今彼女は、愛する日本の奈良県に住んでいます。
「山に行こう」そう決めた彼女は、しばらく使っていないCanonのカメラとハイキング用のバックパックを持って家を出ました。

レナはいつも通りの道を歩き、吉野の山に向かいます。車の騒音や人々の話声から遠ざかると、自然の音が彼女を包み込みました。風が木々を通り抜ける音、鳥たちのさえずり、遠くで流れる川の音。このような音に囲まれると彼女の心は自然に落ち着きを取り戻し、ツイッターの問題が些細なものに思えてくるのです。

頂上に到着した時、レナは深く息を吸い、目の前に広がる景色に心を奪われました。吉野の山から見下ろす風景はいつ見ても息をのむ美しさで、彼女はこの瞬間を一人占めできる幸せに浸りました。

スマートフォンの画面からは想像もつかないほどの美しい景色に見とれながら、レナは自分の心に問いかけました。「本当に大切なものは何か?」と。その答えは彼女の心の中にすでにあるように感じました。

山から帰る道すがら、レナはある決意を固めました。自分の時間をもっと有意義に使うために、ソーシャルメディアでの時間を減らすこと。彼女は自分の愛する山や自然にもっと時間を捧げ、自分自身と向き合い、そして大切な人々との時間を大切に過ごすことを誓いました。

家に帰った彼女は、ツイッターアプリを開いてアカウントの設定を変更しました。通知を全てオフにし、設定を保存した。これで、彼女は自分の時間を自分自身のために使うことができます。レナの冒険はこれから始まるのです。

「連続ノート小説 じゃじゃ馬ジャーナリスト 第4回」

第5回へ続く

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