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水道が来ていない土地で水を確保する (検討編)

購入した土地には水道が来ていない。

とりあえず水が無いと困るので、水を確保する方法を考える。

新しく水道を引いたり、井戸を掘ったりするとお金がかかるので、近くの川から水を汲んできて浄化する。
川にはコイが住んでいるので、その程度の水質なら問題ないでしょう。


・浄水方法について考える

水を浄化して水道水にしているところは浄水場である。
では浄水場ではどのように水を浄化しているのだろうか。
下記が一般的に”緩速ろ過”と呼ばれる浄水方法のろ過池の断面図である。

広島県三原市水道局HPより

砂と砂利とレンガを積んだだけである。
これくらいならその気になれば作ることができるだろう。

・緩速ろ過とは

・緩速ろ過の原理

緩速ろ過で水が浄化されるのは砂による物理ろ過ではなく、
ろ過池に生息する藻類や微生物のはたらきによるものである。

ろ過池には藻類、植物性プランクトン、動物性プランクトン、各種微生物による生態系が形成されている。
人間にとって有害なものでも、ろ過池に住み着く生物にとっては有益な栄養となる。
原水に含まれる細菌、ウイルス、寄生虫類、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、重金属、各種有機物、カビ臭いにおいのもとになる成分などは
ろ過池内の生物群衆による食物連鎖により、捕食、吸収、排泄、分解が繰り返し行われることにより、人間にとって有害な物質は減少していく。

こうしてろ過池の上から入った水が底にたどり着くころには人間が安全に利用できるきれいな水になるのである。
(飲んでも大丈夫だと思う)

湧水や井戸水がきれいなのも基本的には緩速ろ過と同じ原理である。


名古屋市水道局のHPが分かりやすいので、興味がある方はご参照ください。

・緩速ろ過法について
https://www.water.city.nagoya.jp/category/suidotrivia/144854.html

・緩速ろ過による浄水のメカニズム
https://www.water.city.nagoya.jp/category/kansokuseibutu/10732.html

・緩速ろ過の歴史

最初はロンドンで実用化されたようだ。これは産業革命による人口増加に伴うものだろう。

名古屋市上下水道局のHPには下記のように記載されている。

緩速ろ過は1829年に英国で開発された処理方式で、コレラや赤痢など水系伝染病に有効な浄水処理としてヨーロッパで広まり、やがて世界中で導入されていきました。日本でも、明治20年(1887年)に最初の近代的な水道施設として緩速ろ過が横浜市に導入されて以来、戦前の浄水処理はほとんどが緩速ろ過でした。

名古屋市上下水道局のHPより

明治時代に作られた緩速ろ過の浄水施設が全国各地で今でも現役で稼働しているそうだ。

・日本の浄水処理方法別の浄水量

下記のグラフを見ていただきたい。
緩速ろ過は全体の3.2%しかない超マイナーな浄水法である。
消毒のみというのは水源の水に規定量の塩素を添加しただけで水道水として利用しているものである。水源の水が十分に基準を満たしたきれいな水であるため、消毒するだけで良い。それが16.9%もある。
注目すべきは全体の77.3%、実に8割近く占める急速ろ過である。
急速ろ過とはどういったものなのだろうか。

公益社団法人 日本水道協会HPより

・急速ろ過とは

下記、東京都水道局のHPより引用です。

急速ろ過は水中の小さな濁りや細菌類などを薬品で凝集、沈殿させた後の上澄みを、速い速度でろ過池の砂層に通し、水をきれいにする方法です。
 かび臭の原因となる物質などを除去する場合は、急速ろ過に粉末活性炭や高度浄水処理(オゾン+生物活性炭)など様々な処理を組み合わせます。

東京都水道局のHPより

<設備の概略図>

東京都水道局HPより

大掛かりな設備である。
急速ろ過は緩速ろ過に比べ、設置面積が小さく済むこと、立ち上げが早いこと、環境に左右されにくいことなどがメリットとして挙げられる。

しかし、急速ろ過約8割に対して、緩速ろ過が3.2%というのは少なすぎる。
戦前はほとんどの浄水場が緩速ろ過方式だったのだが、戦後、急速ろ過方式が広まった。
これはアメリカの影響が大きい。
また公共事業として、予算と雇用の最大化ということを念頭に置いた時、採用されるのは急速ろ過だったということなのかもしれない。
水源の水質の悪化により、緩速ろ過池が目詰まりを起こし、急速ろ過に切り替えられたという例もあるらしい。
緩速ろ過は流入水が富栄養化すると微生物が増えすぎて目詰まりを起こす。だからと言って急速ろ過にしたろころでアンモニアなどの水溶性の成分は基本的に取り除けないのである。

とりあえず、急速ろ過方式は大変そうなので自家用としては却下となりました。

ろ過池製作編につづく。

・参考文献

・水草水槽のせかい すばらしきインドア大自然 タナカカツキ

水の浄化について最も情熱を注ぎ、日夜研究に励んできたのはアクアリストたちだったのかもしれない。水草水槽とは水槽の中に自然(生態系)を再現し、その美しさを愛でるというものである。この本の中で水槽の水を飲んでみるということがチラッと書かれている。水のろ過・浄化というと、とっつきにくいが、アクアリウムの世界からアプローチしてみるとすんなり入っていけると思う。でかい水槽の掃除をするのはなかなか大変な作業である。そのため、アクアリウム界隈では水を循環し、きれいに保つ方法が日々研究されてきたのだ。

一度アクアリウムの美しさ、奥深さを知れば
その魅力の虜になってしまうかも。
金のかかる趣味だと思う。

タナカカツキさんが作った水槽の写真が載ってるHP
https://www.caj.design/katsukitanaka
タナカカツキさんのインタビュー記事
https://magazine.cainz.com/article/22747

タナカカツキさんは漫画家、映像作家で、他にもコップのふち子の生みの親、サウナ大使としてサウナブームをけん引するなどいろいろな顔を持つ人だ。

・自宅で湿地帯ビオトープ!~生物多様性を守る水辺づくり 中島淳 (著), 大童澄瞳 (イラスト)

ビオトープに関する本である。生態系が出来上がると自然と水はきれいになる、というようなことが書かれていた。実際に水の浄化池を作るにあたり、単なるろ過池だけでは味気ないし、ビオトープだけ作っても腹の足しにならないので、この二つを兼ね備えたものを作りたい。基本的に緩速ろ過池とビオトープというのは同じものだと思う。

・おいしい水の作り方-2 中本信忠

緩速ろ過の第一人者である信州大学名誉教授の中本信忠先生が書いた本である。

”緩速ろ過”という名称は文字面だけだと単にゆっくりろ過する、という意味しか含まれていないので、本質をついておらず誤解を招く恐れがあるため、より実態に合った名称である”生物ろ過”という名称を使うよう中本先生は提唱している。

専門書でもないのだが、専門家が書いているため、誰が何の目的で読むのかいまいちターゲットが定まっておらず、そのため、そこはかとなく分かりにくい本になっている。
一般の出版社ではなく、大学お付きの出版社のようなところから発行されているのもわかりにくさの一因だろう。
ぜひ子供向けの本として、そういう出版社と一緒に本を作って欲しい。

中本先生は安全な水の普及のため、
長年ブラジル、アジア諸国、サモア、フィジーなどの海外で活躍されてきた大変立派な方なのだ。
本を書くにあたっては編集とライターとイラストレーターがついてほしい。

2があるということは1(無印)もある。
1(無印)のほうはなぜかプレミアが付き、Amazonで14,980円になっている。
いったい誰が買うのだろうか。
2は下記のサイトから買えるので、2を買った。
(価格は1,500円+送料)

下記ページから買うことができる。
一般社団法人千曲会
https://chikumakai.org/buy-publication/
1(無印)のほうは公共の図書館にも多数寄贈されているようである。

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