Suba

20歳男です。エッセイや小説をメインに書いていきます。

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最近の記事

超短編「セールスマン」

 夜の公園で私は酒を飲んでいた。金曜日、会社で一仕事を終え、明日は特に予定もないから外で酒でも飲もうと思ったのである。コンビニで安い缶ビールを買い、自宅近くにある公園のベンチに腰掛けた。今日は空気がよく澄んでいると思った。その証拠に、夜空にはオリオン座が見えていた。上京してから星をみたのは久しぶりである。いい気分だ。自分にお疲れ様、そう頭の中で呟いて私は缶を開けた。そのとき、その男は歩み寄ってきた。その男は短髪でスーツ姿だ。時刻は夜の十時を回っている。 「お疲れ様です、サラ

    • 葛藤

      この頃は葛藤が絶えない。会社に求められる働きをすべきか、自分に従って日々を過ごすか。普通に考えれば対立しないことだが、前者の実現がそうはさせない。それは勤務時間外にまで勉強や仕事を求めることを意味している。だから、自分の時間が奪われるのだ。最も、自分がそれを認めてしまえば協定成立なのだが。私が頑固なため、それを許せないままでいる。  会社とはつまるところ人の集まりに過ぎない。それに貢献しようと考えるには、まず会社の人々が、私が助けたいと思えるような人物であるべきなのだ。もち

      • 財布を忘れたのち

         財布を忘れていたことに気が付いたのは出発してから一時間後、電車の中だった。そして今日という新しい日が始まったのもこの瞬間からだ。  元々、今日は散髪をする気でいた。前回から一カ月ほど経っていたので今日が丁度いいと思い予約していた。いつも財布に会員カードとクレジットカードを入れており、それがあってはじめて私は髪を切ってもらうことができた。しかし今日は財布を忘れてしまった。現金も持ち合わせていない。つまり私はこの日、散髪とともに気分を切り替えることができないこととなった。予約

        • 秋雨と言葉

           この頃は雨が多い。 秋雨はよく言うが、この時期の雨を秋霖やすすき梅雨とか言うらしい。 同じ秋雨を表す言葉なのにどうしてあるのだろう。 そんな疑問はよくあることで、したがって答えもありきたりなものにたどり着くのが大方の流れ。 つまりは言葉の多様性を楽しみたいのだろう。 ただの秋に降る雨でも、秋霖とかすすき梅雨とかで表現するのは、私にとってはちょっと新鮮だ。そしてお洒落。  言葉は世界を彩る絵の具だ。 言葉によって、世界というキャンバスには色が塗られていく。 世

        超短編「セールスマン」

          アイデンティティを保つために

          自分が好きなことは大切に。 それは自らのアイデンティティを確かめるためにも重要なことである。 もっとも、それは自己満足に過ぎないが。 だが、その自己満足も継続を経て、やがて何かしらの足跡を浮かび上がらせるだろう。 それは形になっておらず、精神的で目には見えないことかもしれない。 しかし、それこそが大事なことではないか。 むしろ抽象的であるからこそ、それは半永久的に心に宿る。 精神が衰えない限り、それは確かな自信として在り続ける。 そのような確かな積み重ねが後の

          アイデンティティを保つために

          九月二日(木)雨

           朝、数カ月ぶりにジャケットを羽織った。 肌寒く感じられたのが、雨のせいかはわからない。この頃は気分が落ち込んでいる。 体の抵抗力が剥がれていくような日々。 誰が嫌いだとか、仕事がうまくいかないとかのはっきりした理由はない。 もっと漠然とした、閉塞感に近い重苦しさを感じている。 本当に曖昧でつかみどころがないが、ただ正体不明のストレッサーがあることだけは確かである。 季節の変わり目に伴う低気圧のせいであれば、むしろありがたい。 それが過ぎればこの無気力から解放さ

          九月二日(木)雨

          二つの写真

           去年の夏、祖父は死んだ。死因は敗血症とかなんとか担当医が言っていたが、私には全く分からなかった。「そんな症状があるんだな」としか思えなかった。とにかく頭が真っ白になっていたが、それだけに、変に冷静に祖父が死んだこの病室を俯瞰できた。笑っていたのは頭が弱ってきた祖母一人ぐらいだったか。それと、夏だというのにやたら寒かった。病室はいつも冷房が効きすぎていた。  通夜と告別式を終えて、久しぶりに実家に帰った。自分の部屋には、ある一つの写真があったことに気づいた。それは、数年前の

          二つの写真

          蝉と夢日記

          教室の窓越しに蝉の声が聞こえる。ちょっとうるさいが、夏のBGMだと思って聞けば案外許せなくもない。今は一限の授業が終わり、休み時間に入ったところだ。次は移動教室じゃないからひと眠りしようかと、俺は机に顔をうずめた。 教室の左端、窓際の中央当たりが俺の席だ。その右隣の席に神妙な面持ちで座るそいつは、徐に口を開いた。 「蝉って、オスしか鳴かないらしい。メスにアピールするために鳴くんだとさ。俺も叫んだら女子に好かれたりするのかなあ」 山田はちょっとアレな奴で、こんなことを真剣

          蝉と夢日記

          レポートは苦手だし、ルービックキューブもできない。

          当方は大学生なのだが、大学のテスト期間に伴ってレポート課題も増えてきた。 そこで思うのが、 レポートの執筆はルービックキューブの面を揃えることに近いのではないかということだ。 理屈は次のように整理できる。 1)レポート執筆に用いる資料は各面が揃ったキューブである。 2)自分はそれを読み込む。多くの場合、この時点でそのキューブの面は崩される。理解できれば組み直せる。 3)参考資料としてそれらを自分の文章に落とし込む。残り一面を自分の文章と捉えるべきだろうか。残りの面

          レポートは苦手だし、ルービックキューブもできない。

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          私は今日タンブラーを買った。 水滴が周りにつかない断熱性素材のもの。 これは私にとってありがたいことである。 ボトルの水やコーヒーを毎日のように買う私は、机やノートが水滴で濡れてしまうことに悩まされていた。 このタンブラーならばそのような心配はいらない。 さらに節約を促すこともいい点である。 実のところ、私はこのタンブラーに嫉妬している。 それは、その見た目や機能性以上に、このタンブラーが「タンブラー」という名詞と同等の価値に位置づけられることである。 固有名

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