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読書感想文 米澤穂信「栞と嘘の季節」

「本と鍵の季節」の続編。今回は長編。

事の発端は堀川が図書室に返却された本から一枚の栞を見つけたことだった。その栞に使われているのが猛毒を持つトリカブトの押し花であることに気付いた堀川と松倉は、栞の取り扱いについて話し合う。

物が物だけに、通常の忘れ物入れに保管するのは躊躇われる。他の図書委員と問題の栞のことを共有すれば、猛毒の花を使った栞の噂が広まるかもしれない。

相談の結果、彼らは栞を図書室に隠し、「花の栞を忘れた人は、図書委員の松倉か堀川まで」と書いた紙を掲示板に貼ることを決める。

数日後、栞の持ち主を名乗る、堀川たちと同じ二年生の瀬野という女子生徒が現れる。しかし、問題の栞の本来の持ち主でないことを、つまり、嘘をついていることを指摘された瀬野は、栞を奪って逃走し、栞を燃やした。

何とも釈然としないながらも、これでこの問題は終わりかと思われた。

しかし、翌日、学校で教師の一人が倒れ、救急搬送される。しかも、その際に発症していた症状は、トリカブトの毒を摂取した際のそれに似ていたという。

教師が毒を盛られたという噂が校内に広まり、異様な雰囲気が蔓延し、緊迫した空気に耐えかねて、体調を崩す生徒が続出する。

そんな中、堀川と松倉は瀬野に頼まれて、栞の配り手探しに協力する。

瀬野によると、あの栞は「切り札」だったという。

「(中略)何があっても、誰にどんなことをされても、お前が生きていられるのはわたしが生かしてやっているからなんだと思うために、わたしたちは切り札を持たなきゃいけなかった」

そうして、瀬野と瀬野の中学時代の友達はトリカブトの栞を作った。「一人一枚だけ」で、「何があっても三枚目は作らない」と約束し、二人しか持っていないはずの「切り札」の栞を配っている人物がいる。

また、栞に関して、堀川、松倉、瀬野はそれぞれ隠し事をしていた。しかし、それは決して悪意からではない。彼らには彼らなりに守りたいものがあり、結果として嘘をつくことになった。

彼らは何を守ろうとしたのか?
誰が何の目的で栞を配っているのか?

また、前作では明かされなかった松倉の選択も明らかになる。

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