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集団活動では重要な「体制」

これまでも何件、何十件、何百件とプロジェクト計画書をチェックしてきましたが、体制図というものが作成されていない計画書も案外珍しくありません。

すなわち、

 体制図なんて意味がない

と思っている人がまだまだ多いということなのでしょう。だって意味があって大事だと思っていれば作らないわけがないのですから。

 「いやー、たまたま忘れてました」

そう言う人はたまたま忘れてもいい程度のものだと思っていた、ということです。

たしかに「誰と誰が…」とバイネームで線が引かれているだけの体制図は意味がありません。体制図で最も重要視すべきはそこではないからです。
体制図を作る目的は、

 プロジェクトに参加するメンバーとそれぞれの役割、
 そしてメンバー間の指揮命令系統を定義すること

にあります。そもそもこの目的を理解しないまま、ただ「作れ」と言われたから作りました的なニュアンスで進めると、体制図どころかプロジェクト計画自体が意味のないものとなってしまうでしょう。

 「そんなの教えられなければわかるわけがない」

と言う人も出てきそうですが、物事にはすべてにおいて因果関係や相関関係があることを考えれば、せめて

 「何か必要があるから作れと言われているのだけれども、
  なぜこれが必要となってくるのだろう」

と思いを馳せても良いのではないかと思います。ほとんどの方は普段の仕事の中でのご自身の役割や上司や部下との指揮命令系統が決まっています。

しかし、プロジェクトは課や部と言う組織とは別に、新たなチャレンジ活動を求められているものであり、普段の定常的な仕事とは別に新たなプロジェクト体制を構築する必要があるのです。

従って、プロジェクトの体制がしっかりと明確化されてないと、必要な指示や報告がうっかり伝わらなかったり、意思決定に時間がかかったりして作業ミスや効率低下の原因になってしまいます。

一般的な体制図の書き方

プロジェクト体制だからと言って会社の組織図と書き方は変わりません。それではプロジェクト体制図の例を見てみましょう。

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この例は山田さんがプロジェクトをマネジメントし、そのもとでメンバーが2つのチームに分かれて作業を進めるというプロジェクトの体制図です。

あまり馴染みがないのは“プロジェクトスポンサー”という役割でしょうか。
会社などの組織の中でプロジェクトを進めるような場合には、ほとんどの場合このように“プロジェクトスポンサー”という役割がプロジェクトマネジャーの上に必要となります(“プロジェクトオーナー”や、“プロジェクト統括責任者”などといった呼び方をする場合もあります)。

これは、組織の中でプロジェクトを実行することを承認する(つまり組織に所属するメンバーや組織のお金など、いわゆる経営資源をプロジェクトに投入することを判断する)役割を持ったメンバーのことです。

たとえば、自社の経営資源をコントロールできる役員や部長などの役職に就いている社員がこの役割を担うことになります。簡単に言えば「決裁者」だと考えてください。だいたいどこの会社でも決裁権はその役責の重さによって変わりますよね。

1000万未満であれば課長
3000万未満であれば部長
5000万未満であれば本部長
1億未満であれば担当役員
それ以上ならば社長稟議

みたいな。大抵の場合、係長職以下には勝手に決済して良い権限はありません。そして、この体制図によってチームやメンバー構成の他に、次のような指揮命令系統が表されていることを確認してください。

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このように、プロジェクトの体制図ではメンバーは

 「誰の指示に従えば良いのか」
 「誰に報告すれば良いのか」

というルートも定義されています。

特にプロジェクトの体制図では「箱と箱が線で結ばれていない」、「複数の線が箱から同じ方向に出ている」など、指揮命令系統が曖昧になってしまうことがないように注意しましょう。もしそうなっていた場合、必ずプロジェクトに歪みが生じ、下手をすればトラブルを招くことになります。


役割を明確化する

以前説明した『作業リスト』、そしてその延長線上にあるスケジュール表には何が書かれていたか覚えていますか?

そうです。

 「誰が、どの作業を、いつからいつまで実施するのか」

が書かれていたはずです。これと体制図があれば、プロジェクトの各メンバーの役割は大体決まったことになります…が、すべてではありません。

実はプロジェクトではスケジュール表に書いた作業以外にもやることが色々あるのです。これを明確化しなければ、いずれメンバーのだれか…特に優秀な人に仕事を集め、ボトルネックを作り、結果的に大きなリスクを抱えることになります。

たとえば「作業中に何か問題が起こった場合に対策を立てて実施する」などといった、あらかじめ計画できないような作業を考えてみてください。まず間違いなくスケジュールでは管理していないことでしょう。

そのような誰が責任を持って実施するのかよくわからない役割を残しておくとかならず手痛いしっぺ返しを食らうことになります。特に、自チーム以外(顧客や他ベンダー等)との間で役割の不明瞭な境界線を作ってしまうと、法的な場に立った時に不利益を被ることになりかねません。

これはスケジュール(ガントチャート)では十分に明確化できません。

そこで体制図を作成した後に“役割定義”という表を作り、チームやメンバーの役割をさらにしっかりと明文化することが有効になります。

 「イマイチ誰がどのような立場なのか曖昧だな…」
 「結局、この判断は誰がやるんだろう」
 「このタスクは誰に確認すればいいのかな?」

と感じたら、次のような役割分担表を作成してみてください。個人的にはRACIチャートがオススメです。


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