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米国アカデミー映画博物館の建設費400億円の出所、「宮崎駿展」も開催

■延べ床面積2万8000㎡、映画の殿堂がハリウッドに

2021年春に米国ロサンゼルスに巨大なカルチャー拠点が出現します。アカデミー賞でお馴染みの米国映画芸術科学アカデミーが建設するアカデミー映画博物館(The Academy Museum of Motion Pictures)です。
ハリウッドにある古い建物を著名な建築家レンゾ・ピアノが大胆にリノベーションしました。メインビルディングはかつての名門百貨店、そこに巨大な球形のシアターと展望施設がつく特徴あるデザインが目を惹きます。
映画史を彩る数々のアイテムが収蔵され、広大な展示室、上映シアター、修復センターやカフェ、ショップ、教育施設も設けられます。博物館の総面積は2万8000㎡にも及びます。

4月30日のオープニングを飾る展覧会は、スタジオジブリも協力する「宮崎駿展」です。日本を代表するアニメーション監督の大規模回顧展は、日本でもまだ実現していません。宮崎駿が、米国映画芸術科学アカデミーで数少ない日本人の名誉賞受賞者であることも理由かもしれません。

■建設費は400億円超、主要施設に命名された個人名

映画の都に相応しい映像文化の巨大施設ですが、あまりに豪華なだけに建設費が気になります。メディアの報道によれば、2017年の段階で総額は3億9000万ドル、日本円で400億円超です。これほどまで巨額の資金は、一体どこから調達したのでしょうか。

実はアカデミー映画博物館の建設資金は、行政からほとんど支援を受けていません。建設費の謎は、博物館の建物自体に隠れています。
メインビルディングの名称は「サバン・ビル」、1000席を持つメインシアターは「デヴィッド・ゲフィン シアター」、宮崎駿展が開催される企画展示室は「マリリン&ジェフリー・カッツェンバーグ ギャラリー」といった具合です。他にもスティーブン・スピルバークやドルビー一族、バーブラ・ストライサンド、ボブ・アイガーなど、ありとあらゆる施設に個別の名前が命名されています。

これらはミュージアム建設の寄付者たちの名前なのです。サバン・ビルの由来は、「スーパー戦隊」シリーズを米国で「パワーレンジャー」として大成功させたサバン夫妻。夫妻は5000万ドル(約50億円)もの寄付をしました。デヴィッド・ゲフィンは音楽業界の重鎮、ジェフリー・カッツェンバーグは映画会社ドリームワークスの創設者のひとりです。
なかにはロレックスやPWC、中国の映画企業ワンダなどの企業もありますが、それでも寄付の中心は個人、もしくは個人が創設した非営利の財団です。
アカデミー映画博物館を生みだしたのは、実は米国の成功した映画人なのです。彼らは自分達を成功に導いた映画コミュニティに報い、映画文化を伝え、残すために資金を提供します。

■米国と日本で文化に対する寄付の考え方は異なるが

日本であれば、寄付金に応じて自身の名前を大きくアピールすることに抵抗があるかもしれません。寄付とはリターンを求めず、人知れずやることだと思われがちです。
しかし米国で寄付をした人の名前を大きくだすのは、むしろ寄付をしない他の裕福な人たちに対するプレッシャーの役割を果たします。「成功した者は社会に還元するのは当然、この人たちは寄付をしています。あなたは?」というわけです。

日本では映画やアニメ、マンガ、ゲームといったカルチャーの博物館施設はまだまだ充分ではありません。そんな時、こうした米国スタイルの成功者に寄付を求めるのは何かの参考になるのでないでしょうか。
もちろん米国と日本では、文化に対する寄付の税制に違いなどがあります。そのため日本では国や地方自治体への資金支援を求めることが多くなっています。
しかし個人による大口寄付を誘導するような、税制や社会の仕組みづくりがあれば、また違った展開もあるかもしれません。

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