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中国の存在感後退のなぜ? アヌシーアニメーション映画祭から

 前回に引き続き、6月初旬にフランスで開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭の気になったトピックスを取りあげます。
 2019年は日本特集で盛り上がりましたが、2年前に同じくゲスト国として注目を集めたのが中国です。今回の日本と同様、見本市会場に大きなブースを設け、中国から多くの参加者がありました。

 それから2年経った今年の中国は、どうでしょうか。正直、あまり存在感を感じさせません。映画祭の参加者数をアヌシーの参加者ネットワークで確認すると日本が253人、中国は168人です。日本は特集イヤーで大きく伸びた面があります。それでもマーケットの大きさを考えると、中国は物足らない感じです。
 これは展示会の出展からも伝わりました。昨年まで見られた中国企業の積極的な出展は影を潜め、中国のナショナルブースの元気のよさだけが目立ちました。

 中国のアニメーション市場は依然成長を続けているだけに、これは一体どういった理由でしょうか。それは中国のマーケットの持つ特殊性が反映している気がします。
 中国では海外アニメーション番組の放送、上映、販売には、様々な規制があります。さらに昨今はインターネット配信の規制も強まっています。国内市場の大きさに較べると、海外作品を買える余地は小さく、買い手としてのパワーが大きくありません。
 一方で自国制作のアニメーションはファミリー・キッズ向け、特にCGが多くなっています。ここは世界で最も競争が激しい分野です。あえて中国番組を購入する決め手に欠けます。アニメーションの販売取引は、当初考えていたほど中国にとっても、他国にとっても盛り上がらなかったのかもしれません。

 そうしたなかで可能性があるのは、中国マーケットに向けた国際共同製作です。今回は長編部門のオフィシャルコンペティションに選ばれた『白蛇・縁起』(『White Snake』)は、中国とワーナー ブラザースの国際共同製作です。豊富な資金と技術を投じた本作は、国際共同製作作品の多くが苦戦するなかで、中国国内で興収4億4000万元(約70億円)のヒット作になりました。
 『白蛇・縁起』が海外輸出できるかは、やはり決めて欠ける気がします。それでも中国市場だけで投資回収が可能なら、海外企業にとって共同プロジェクトは魅力が大きいはずです。
 中国とのアニメーションビジネスの肝は、国際共同プロジェクト。ただしそれは巨大で閉じられた独自のビジネスで回る市場です。当面はそうした状況でないかと思います。

 もっとも中長期的には、どう変わるかわかりません。世界でアニメーション映画一本に何十億円も製作費が投じられるのは、アメリカと中国しかありません。巨額の製作資金の強みは、確実に中国のアニメーション産業の技術とクオリティを底上げするはずです。
 クリエイティブでも、今後はさらに成長するでしょう。アヌシー映画祭の短編コンペの選出は、日本の1本に対して、中国は2本。中国は学生コンペでも2本が選出されています。新しいクリエイティブの芽は育っています。アニメーションにおける中国の世界進出は、当初考えられていたよりもだいぶ時間はかかりそうです。ただし確実に成長していることは間違いないのです。

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